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文字と美術(読書記録①)

今日は、玉蟲敏子さん『日本美術のことばと絵』(角川選書.2016年) を読んだので感想を書きたいと思う。

本作は、日本美術において、言葉と絵が融合した作品について多岐にわたる例を挙げながら、紹介している。例えば、和歌が配された屏風絵、あるいは平安〜鎌倉期などに見られる、葦手絵と呼ばれる文字絵の一種、また着物や焼き物など工芸に応用されたグラフィックデザインなど、実に様々な方法で文字と美術の融合がなされている。

これらの作品群は、言葉と絵の関係に注目するとおよそ以下の2つに大別することができるだろう。

一つは言葉が独立して存在しており、それに対応する絵を同画面に配するものである。色紙形に和歌を書き付けて、屏風絵に貼るものがその代表例であろう。しかし、詞書のある絵巻や、広く絵付きの物語というものもこのような例に含めることができるかもしれない。

もう一つは文字の持つ造形美を直接生かしたものである。例えば寛文小袖などにみられる大胆に崩されて意匠化された文字模様を挙げることができる。あるいは、書は文字の持つ造形美に着目した最たる例と言えるかもしれない。

このようなことばと絵、言い換えるならば意味と造形の織りなす表現は様々な所に見出す事ができる。いわゆる美術品に限らずとも、文字が取り入れられたデザイン全てについてこのような表現の範疇に含めることができるだろう。

とはいえ、普段目にするデザインにおいてはことばと絵の役割が明確に分かれていると指摘することができる。比べて、本作で紹介された様々な作品群はことばと絵が融合したような例と言えるのではないだろうか。

本書を通じて、ことばと絵の可能性、それらが融合したときのおもしろさを改めて実感したのであった。

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