見出し画像

愛に気づくとき


まもなく2月。

立春が近いこの時期、いつも思い出すのは、

「おひなさま」


立春過ぎておひなさまを出して、ひなまつりが
終わった3月4日以降早めにしまわないと、
娘がお嫁に行けない、と聞いていつも意識している。


ただ、現在おひなさまは実家にあり、私はおひなさまを
出すことができない。
(娘よ、ごめん)


実はうちにあるおひなさまは、私の祖父が私のために
買ってくれたものだ。


私は祖父にとって初孫。
それはそれは可愛がってくれたらしい。

ただ、私が祖父に抱っこされると泣くので、
寝ている時にそっと抱っこしてくれたらしい。


私には全く記憶にない。


というのも、祖父は私が2歳になる前に亡くなったからだ。


私の祖父の記憶は、写真の顔しかない。


それでも、母が私に娘が生まれた時、この祖父が
買ってくれた、当時はそれなりの値段がしたで
あろう、五段飾のおひなさまを持ってきてくれた。


それ以来毎年、おひなさまを飾り続けてきた。


二代にわたって受け継がれたおひなさまは、
すでに傷や、壊れているものも実はある。


だからこそ、いつも箱から出すときは、そっとそっと
出している。


そこまで気をつけていても、
ぽろっと崩れ落ちることもある。


さらに五段全てを出すことは、マンション暮らしでは
難しく、おひなさまとお内裏様、桃の花と、雛菓子を
置く台くらいしか、出すことはできない。


それでも、毎年おひなさまを出す。

そして、いつも思うのだ。


記憶に全くない祖父が、私のことをどれほど
大事にし、愛してくれていたのか、と。

もし、このおひなさまがなかったら私はここまで
祖父のことを思っただろうか、と。

おひなさまという、お金を払えば手に入るもの、
ただの品物だが、それが人を思い出すことに
一役買っていることに、感慨を覚える。

「物よりも心」


と言うが、


「物は人の記憶を呼び覚ますものでもある」


と思う。

50年以上前に、間違いなく祖父がこのお雛様を選び、

手にし、そして私の成長を思いながら
買ってくれたのだと思うと、毎年涙ぐむ。


人は亡くなっても、物が残る。

そしてその物を通じて、

その思いを感じることができる。

あなたにもそんな物がないだろうか。



 肉親の愛情は、普段私を含めほとんどの人が
意識をしていないと思う。


でも人が亡くなり、ものが残り、そのものを
見るたびにその人を思い出す、と言うのが
なんとも不思議で、そこから愛情を感じ、感謝の
気持ちでいっぱいになる。

普段忘れている、感謝の気持ちを思い出させてくれる
おひなさま。


娘のために毎年出してきたが、実は私の思い入れが
強いものなのだと気づいた。


もし、娘に娘ができたらこのおひなさまを譲り渡そう。
そして私の孫に、祖父のことを、その思いを伝えて
いこう。


 一昨年、そして今年と、伯父たちが祖父母の元へと
旅立った。


残った母と叔母にも、できる限りのことをこれからも
していきたい。


家族がいること。

亡くなった家族に愛されていたこと。


それを実感できれば、さらに前に進んでいける
大きな力になる。

おじいちゃん、
おひなさまを買ってくれて、本当にありがとう。

決して胸を張れるような生き方をしてない私だけど、
毎年おじいちゃんのことを思ってるよ。
このおひなさまのおかげで、と言いたい。


きっとあなたにも、愛してくれる家族がいる、

または、いたはず。


どうぞその愛を感じて、生あるうちに少しでも
一緒に過ごし、思い出を増やそう。
心からの感謝を込めて。


上野 博美

サポートありがとうございます!いただいたサポートは、次の良い記事を書くために使わせていただきます!