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不器用者の名残


私はずっと不器用だった。
ただそれに本気で気づいたのは、客室乗務員の訓練時代のことだった。
教官が見せてくれる実技を見ていて、すぐに再現できる同期が何人もいた。
私は、一度では全くできない。
何度やってもできないので、しっかりメモをとり、(今のように動画がないので)覚えて帰り、自宅の椅子に向かってお客様に話すように何度も何度も練習をして、
ようやく翌日にできるようになっていたほど、不器用だったのだ。

ただ小学生の頃から、やたらと母が「人の3倍努力をすれば、なんだってできるようになる」とか「人にできて自分にできないはずはない」と、今なら若者が引いてしまうようなことを、妹にはあまり言わず、私にばかり言っていたのは、母が私が不器用だと気づいていたからなのかもしれない。

客室乗務員としてできなかった新人時代を経て、努力してなんとか仕事が一人前にできるようになり、その後も「自分は不器用だから」と自分で言い聞かせ、努力しないと怖い、という変な癖がついてしまったことから、ずいぶん不器用さは無くなっていったように思う。
特に周りの人には、陰で努力しているところを見せていないので、周りの人は私が「できる人」だと思っていて、不器用だなんて全く思ってない。
生徒さんにも「私不器用だったから」というと、100%驚かれるし、なかなか信じてもらえない。

別にこれは自慢ではなく、「本当の姿というのは、なかなかわかってもらえない」ということを言いたいだけなのだ。

さすがに最近は、私もずいぶん器用になったなーと思ったりもすることもあるのだけど、やっぱり「不器用の名残」を感じることがある。

それは、出張の前と後には、必ず一日余裕を持たせたスケジュールを組んでいることだ。
前日までバタバタとしているのが嫌だし、戻ってきてすぐに何かをギリギリでやるのは本当に嫌なのだ。

やろうと思えばできるのかもしれないが、そうはしない。
もちろんこれも、個人自営業者としてやっているので「自分でスケジュールを組める」からできることだ、と気づいた。

こんな自分勝手なスケジュールを好む人間は、絶対に組織には向かない。
そしてさらに考えてみると、私は組織にいたのはわずか10年ちょっとだけだと
いう事実に気づいた。

組織を離れて正解だったのだな、とつくづく思う。

一度身についた習慣は、そんなに簡単には去ってくれない。
多分不器用者の名残は、ずっと続くのだろう。


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