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LPのアクセス解析 ~仮説と検証~

 ネット広告あるいは検索エンジンから流入してもらい、当該サービスに興味をもってもらって、問い合わせあるいは会員登録・購入などに誘導するためのランディングページ (LP) のアクセス解析の特徴・典型的な分析手法や注意すべき点などを解説していきます。

1. LPにおけるサイト設計の仮説

  LPは通常、縦に長い一ページで、ユーザに訴求するポイントに絞ってそのページに掲載して、登録しようと思ったタイミングですぐに登録できるように登録フォームへ遷移するボタンがページ内に何か所も設定されている画面構成が多いかと思います。ユーザをできるだけ離脱させず、登録まで一直線で誘導しようとするページです。

ユーザに訴求するポイントは三個程度 (2個~5個) 程度で、コンパクト/キャッチな言葉とビジュアル面での訴求を重視したページ構成が多いかと思います。

たとえば、求人広告サイトのLPであれば、なんらか転職などに興味をもっているユーザが検索エンジンなどの広告をクリックしてくれてLPにきてくれているので、広告メッセージをもうすこし詳しく/ビジュアル面でも補強したポイント提示がまず画面上部に掲載しておくことにより、広告から流入したユーザに自然に読み始めてもらう構成なども多いと思います。

ランディングページ

エンジニア向けの転職サイトのLPであれば、広告でもエンジニア向けの転職ということをうたっておいた上で、LPではまずはエンジニアの転職をサポートするIT専門アドバイザがいること、エンジニアが興味をもちそうな、上流工程の仕事や運用ではなく開発の仕事をみつけることができる等から提示して、その先も読み進めてもらおうとするなどです。

そして、その次に、ある程度興味をもってもらうとよく頭にうかぶ、不安要素を打ち消すような、具体的な実績の提示を行ったりします。代表的な求人企業として有名/人気の大企業のロゴを並べたり、逆に求人者としてこれだけのユーザが登録しているという数を提示して、みながこのサイトを利用しているので安心してもらい、登録への心理的な障壁を自然とさげるような内容を提示したりすることが多いと思います。

 さらに、エンジニアの転職サイトのLPであれば、具体的に月額いくら程度の求人なども多数あることを例示したり、転職活動をサポートしてくれる頼もしさを感じさせるIT専門アドバイザの顔写真や生の声としてのコメントを掲載したり、よくある質問への回答をLP上で掲載してさらに不安要素を打ち消して登録してもらうような内容がひとつのよくあるイメージではないでしょうか。

ユーザ体験の設計 (UxD)

 もちろん、もともと当該サイトを知っていて、LP訪問時にはもう登録すると決めているユーザもいます。登録しようと迷っていて、あるひとつのポイントが確認できれば登録しようと考えてLPに訪問してくれているユーザなどもいますので、LPには登録ボタンが画面上部から画面途中、画面末尾と何か所にも配置されることが多いです。

 このように、LPは会社HPなどと比較すると、ユーザペルソナ/ユーザニーズは絞り込まれていて、それでもその中でもいろいろな興味/ニーズをもっているユーザは想定していて、それぞれのニーズに対応して提供するエクスペリエンスとしてのコンテンツや登録ボタンなどをレイアウト/デザインしたものがLPですので、その設計時の仮説を検証するという観点でのLPのアクセス解析方法についてみていきたいと思います。

2. LPのアクセス解析としての基本的な分析

前述のようなLPであれば、基本的な分析手法/分析観点は、LPに訪問してくれた人の数あるいはLPアクセス数およびその中のどれだけの人が登録フォームに遷移してくれたか、また最終的に登録してくれたかという数 (割合) をみていくというもので、下記のようなコンバージョンファネルで示すことも多く、ファネル分析という言い方もします。Google analyticsであれば有料版の360であればカスタムレポートのひとつとしてカスタムファネルを作成して表示させることができます。

コンバージョンファネル

 また、LPであれば多くの場合に広告出稿して流入施策を行っていますので、自然流入および各広告ごとの流入数を確認するとともに、各流入元ごとのファネル分析も普通行うかと思います。アクセス解析ツールの操作としては、各流入元ごとのセグメントを作成して、それぞれのセグメントでのファネル分析を行うという手順となります。

 ただし、LPの場合にはサイトの設計としての仮説が縦に長い1PのLPの内部に作りこまれているので、サイトの設計時に想定した通りかどうかを検証するためには、LPというひとつのページ内でのユーザ動向を分析する必要があります。Google Analyticsをはじめ、多くのアクセス解析ツールではスクロール率の計測ができるようになっていますので、以後はLPのスクロール率をどのように計測して、ほかのファネル分析などと組み合わせてどのようにLPのアクセス解析を行っていくかみていきたいと思います。

3. スクロール率の計測

LPは縦に長いページでもあり、どこまでスクロールされて読まれているか、計測したいというニーズはよくあり、Google Analyticsでもスクロール率の計測ができます。GA4になりGTMを使用せずともスクロールしたことを計測できるようにはなりましたが、ページの90%以上スクロールされないとイベントとして記録されないので、LPのどのあたりまで読まれたかを計測するためには、これまで通りにタグマネージャー (GTM) を使って計測することが必要です。

まずはGTMにて新規のタグとしてGA4タグを作成してGA4の測定IDを指定して、トリガーとしてはすべてのページを設定します。続いてGTMにて変数としてscroll depth thresholdにチェックを入れることによりスクロール距離/スクロール率を参照できるようになります。続いて、GTMにてトリガー設定、タグ設定を行い公開することによりスクロール量の計測を開始します。

GA4でスクロール率をページごとにモニタできるようにするには、GA4の探索機能でディメンションとしてページタイトルとスクロール率を設定、指標としてイベント数を設定した上で、行としてページタイトル、列としてスクロール率を設定して値にイベント数を選択指定すると、該当のLPについても、スクロール率が10%,20%,30%,・・・のアクセス数を表示させることができます。

GAでのスクロール計測の有効化


GAでスクロール率をデータ探索に表示する設定例

4. スクロール率等も考慮したLPアクセス解析

LPのスクロール率も計測できるようになると、縦に長い複数のコンテンツ/訴求ポイントを含んだLPのどのコンテンツ、どのデザインが効果があるか(=コンバージョンに寄与しているか)について、アクセス解析結果のデータからいろいろみてとれるようになります。

 もし、登録フォームに遷移して登録しているユーザのほとんどが、LPの画面上部の登録ボタンをクリックしていて、それ以上スクロールしてみている人の登録割合が少ないのであれば、LPの下部のコンテンツの訴求力がなく、あまり効果がないと判断できます。

 また、一番上の登録ボタンをクリックしている数とともに、上から二番目の登録ボタンをクリックしている数も同等に多く、三番目以降の登録ボタンをクリックしている数がガタンと少なくなっているのであれば、二番目の登録ボタンまでのコンテンツ内容はよいものの、それ以降はあまり効果がないと判断できます。

ランディングページ

 もちろん、LPの流入元によって、ユーザ属性 / ユーザの興味の観点は異なってきますので、流入元ごとにスクロール率やコンバージョンはみていくことにより、いくつかのタイプ向けの効果的なコンテンツ内容/コンテンツ並び方のLPがどのようなものか、わかってきたりもします。
 
 また、アクセス解析データにより、LPについてのいくつかの改善案がでてきた場合、ABテストを行って、どの案が一番登録につながる (コンバージョン率がよい) か判断するのもよい方法です。特に、訴求力をあげるためにデザイン面の変更を加えた場合など、どのデザインが一番効果があるか判断するには、ABテストを実施してみるのは有効な方法です。
 
 

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