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ECサイトのアクセス解析 ~仮説と検証~

 ECサイトというのも、製品がカテゴリ分けされて一覧掲載されていて、詳細ページがありショッピングカートに入れた後、決済手続きを行うという独自の基本構造をもったWebサイトですが、そのようなECサイトでのサイト設計においてよくある仮説・狙いをまず確認した上で、仮説の検証としてのアクセス解析として、ECサイトのアクセス解析でどのような分析をよく行うか解説していきます。

1. ECサイトにおけるサイト設計の仮説

 もちろんECサイトといっても、Amazonや楽天、ZOZOTOWNのような巨大なサイトから、携帯キャリアのECサイトやネットスーパーサイトやサービス業のECサイト、本屋・工場などで必要な工具・消耗品のECサイトであるモノタロウなどさまざまな形態のECサイトがあります。

しかし、一般的なECサイトの構造としては、サイトで販売している商品の一覧がカテゴリ分けされていて、一覧ページ・詳細ページがあり、ショッピングカートがあって、その後の決済フローや会員登録ページなどをもっています。ある程度の数の商品が掲載されていて、それぞれの商品の特徴やスペック・価格などの情報が提示されていて購入することができるのがECサイトです。

ECサイト構造

 したがって、ECサイトの基本的な目的は商品を購入してもらうことになります。そしてECサイトでの商品購入プロセスは、大きく下記の3ステップに分類できます。

1.     商品探索 (商品詳細ページ到達まで)
       ↓
2.     商品選択 (商品詳細ページでカートに投入するまで)
       ↓
3.     決済プロセス

1.は、特定の商品についてすでに購入を検討・決定している場合であれば、その商品の商品詳細ページを探して到達するまでのプロセスですし、もうすこし漠然とした興味でサイトを訪問してきている場合には、購入したくなるような商品がないか物色して、なんらかの商品に目をつけてその商品詳細ページまで到達するプロセスです。

1.のプロセスのためには、探している商品は簡単に見つけることができるようにUI・デザインを工夫し、商品検索機能などを用意することが一般的です。また、もともと探していた商品以外にも興味をもってもらうための機能として、サイト側からのおすすめ商品を掲載するプロモーション欄や「ランキング」表示を用意することもよく行われるものです。

ECサイト例 (コジマネット)

2.は、商品詳細ページまで到達してくれたユーザに購入しようと思わせて「カートに入れる」ボタンをクリックしてもらうまでのプロセスです。もともと購入するつもりでサイトにきている人であれば、自分が購入しようと思っていた商品であることを確認できればよいのですが、気になった商品ではあるもののまだ購入すると決めていない場合には、商品のいろいろな特徴を確認したり、スペックやカラーバリエーションを確認したり、いろいろな情報を調べて考えるプロセスです。

2.のプロセスのためには、商品を購入するためにユーザが確認したいと考える、商品の外観写真からスペック、特長の説明などを見やすく、しかも十分な情報量を掲載するとともに、ほかのユーザのコメントなども掲載することがよくあります。また、商品詳細ページの画面レイアウト、デザイン、掲載内容によって、コンバージョン率は変わってきますので、ECサイト設計のひとつのポイントとなります。

また、商品詳細ページまで到達したということは、その商品についてある程度の興味はもっているわけなので、その商品に興味をもっているのであれば、合わせて購入する可能性のある商品を紹介したり、より気に入りそうな商品を紹介したりするための、「関連商品」の掲載はほとんどのECサイトの商品詳細ページで用意されているものです。

ユニクロ 商品詳細ページ

 3のプロセスは、ショッピングカート機能から、購入にあたり、購入者の情報・住所などの入力とともに、決済方法の選択・クレジットカード情報の入力・配達先の指定などのプロセスです。会員登録しておけば毎回購入者の情報を再入力する必要がなくなりますので、会員登録機能を用意しておき、ログインした状態でないと決済できないようにしているECサイトも多いかと思います。ECサイト側としては、このプロセスはできるだけ簡単にできるようにして、その段階での購入脱落を減らしたいと考えるプロセスです。

 また、決済手段としてはカード決済が代表的ですが、より多くの決済手段を用意すると売上が増える面があるので、どこまでの決済手段を用意するのかはECサイトとしてのひとつの判断のポイントですし、決済代行会社を利用するかどうか、決済代行会社を利用する場合には決済代行会社側のページに遷移させるかどうかなど、機能面・運用面・セキュリティ面となどの判断が必要となるプロセスです。

2. ECサイトのアクセス解析

ECサイトの基本的な目的が商品を購入してもらうことにありますので、ECサイトのアクセス解析も基本的はコンバージョンを確認することにあります。広告などの流入元ごとのコンバージョン分析、商品/商品カテゴリごとのコンバージョン分析などはよくなされる分析です。

コンバージョン分析

 流入元ごと/商品ごとのコンバージョンをみていったときに、期待より高い/低いものがあった場合に、その理由を深堀してみていくわけですが、大きくは後半部分の決済フローと前半部分に分けて考えることができ、決済フローは商品や流入元ごとに違いがありませんので、決済フローでの離脱/脱落が大きい場合には、決済フローのUI/画面レイアウト/デザインあるいは決済手段の追加などの検討を行うことになります。

A.    商品検索プロセスにおけるプロモーション欄などの効果検証
プロモーション欄やランキングコーナなどの、ピックアップした商品を目立つエリアに掲載したことの効果検証は、下記の2段階に分けて考えることができます。
 ・商品に興味をもってもらって参照してもらった程度
 ・商品購入につながった程度

 プロモーション欄などを設けても興味をもってもらってみてもらえもしなければ、もちろん商品購入も増えませんので、まずは興味をもってみてもらう必要があります。このようなプロモーション欄/プロモーション欄に商品を掲載したことがどの程度アクセスにつながったかの計測は「経路分析」によって行います。

 前述のコジマネットの「決算セール」欄を例としますと、トップページへのアクセスのうち、まず「決算セール」欄に遷移した割合を経路分析によって確認します。それによって、決算セールについてどの程度の興味をもってもらったかを確認することができます。

経路分析

 また、「決算セール」の商品購入への効果を計測するためには、下記のような数値を計測します。Xは、当該商品の商品購入に対して決算セールがどの程度の寄与をしたかをみている数字であり、yは、決算セールの興味をもってそこに含まれている商品の詳細ページまで参照した人はどの程度の割合で購入してくれているかをみている数字です。
x. 当該商品の商品購入のうち、決算セールページを経由したものの割合
y. 決済セール&当該商品の商品詳細ページをアクセスしたセッションの中
   で、当該商品を購入した割合

b. 商品選択プロセスにおける商品詳細ページの機能・導線の効果検証
 ECサイトの商品詳細ページには、商品の特徴や魅力、他社との差別性を伝えるとともに、その商品について十分に確認できたという感覚をユーザにもってもらえるようなさまざまな機能やエリアが用意されています。

 前述のユニクロサイトの商品詳細ページであれば、モデルが商品を着ている正面から見たところのメインの画像のほかに、横や背後からの画像なども選択してみていくことができるようになっています。
 
 このような機能はユーザ心理を考えると、もちろんないよりはあったほうがよいということは間違いがない場合がほとんどではありますが、限られた商品詳細画面のエリアをその機能のかわりにほかの機能を掲載したほうが商品の売上が上がるかどうかはデータをみてみないことには簡単に判断ができないことが多いかと思います。
 
 このような対象機能の効果を検証する方法としては、A/Bテストという方法があります。ある画面Aの状態と別の画面Bの状態でのユーザ動向を比較する検証方法です。A/Bテストを行う代表的な例は、ボタンの色/デザインの比較テストやキャッチコピーの比較テストなどがありますが、テスト対象とするページをそれぞれ用意することができるのであれば、上述のようなある機能Aと機能Bの効果を比較検証することも可能です。

Google Analytics 経路データ分析

 一方でアクセス解析ツールを用いた経路データ探索により、当該機能がどの程度使われているか、当該機能を使ったことがその商品購入にどの程度寄与したか確認する方法もよく行われる方法です。
 
 たとえば、当該商品詳細ページへの期間内アクセスが100あり、そのうち20については、検証対象機能を利用しているとします。当該商品詳細ページへのアクセス100の中で、カートに入れたのは15で、そのうち5については検証対象機能を利用していたとすると、下記のように検証対象機能を評価することができます。
 
 [当該商品のカートに入れてくれた全体割合] : 15/100
 [当該商品詳細ページで検証対象機能を利用した人がカートに入れてくれた割合] : 5/20
[当該商品詳細ページをアクセスした人の中で検証対象機能を利用した割合] : 20/100
 
まとめると、当該商品詳細ページをアクセスした人の20%はその機能を利用したということは、それなりに利用ニーズがあると判断できます。また、商品詳細ページをみた人の中でカートに商品を入れてくれた割合が全体で15%なのに対して、検証対象機能を利用した人のカートに入れてくれた割合が25%とより高い数字であることからも、検証対象機能は有効に機能しているといえると思います。
 
C. 決済プロセスの効果検証
決済プロセスの効果検証においてもA/Bテストは有効な検証方法ですが、アクセス解析の手法で検証していく場合には、基本的にはコンバージョン分析や経路分析によって分析していくことになります。

コンバージョンファネル

 いろいろな広告出稿などの流入施策を行っているECサイトの場合であれば、流入元ごとにユーザ特定もかなり異なる場合がありますので、決済フローについても、流入元ごとのコンバージョンファネルをまずは確認するのも有効です。
 
 たとえば、まだクレジットカードも保有していないような10代の若い人たちを多く含む流入元の決済フローからの離脱が決済手段の選択画面で大きな値となっているのであれば、決済手段としてコンビニ決済などの10代の若い人たちでも利用できる決済手段を増やすことも検討するとよいと思います。
 
 一方で、ログインしていない状態で決済フローに入ってきている場合にログイン/会員登録を求めるようなECサイトにおいて、特定の流入元からの決済フローの入口での離脱率が高い場合には、会員登録しないでも購入できるようにするか、あるいはその流入元への広告出稿は今後やめるなどの判断が必要となる可能性があります。
 
 このように、ECサイトにおいても、ある仮説を設けてサイト設計・画面設計を行っている面はあり、その仮説の検証をアクセス解析にて行うことにより、ECサイトを改善してより売上を増やしていくことが可能です。
 
 

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