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アクセス解析=サイト設計での仮設の検証作業


1. Webサイトのアクセス分析とは

 テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などの他のメディアとは異なり、Webだけが唯一持つ特徴があります。それは、ユーザーの閲覧記録をメディアの運営者が具体的なデータとして確認できるということです。

Webサイトを閲覧する際には、WebブラウザとWebサイトの間でたくさんのデータのやり取りが発生し、そのやり取りは全てデータとして記録に残ります。そのデータを調べ、集計したり分析したりする行為をアクセス分析・アクセス解析といいます。

 アクセス分析を行う前提として重要なことは、対象となるWebサイトの果たすべき役割・目的が明確となっていることです。サイト設計時の当該Webサイトの役割・目的が明確であるからこそ、その設計に従って構築・運用されているWebサイトが期待通りに機能しているかを検証する行為としてのアクセス分析も有益な情報を抽出する分析が可能となります。また、アクセス分析結果をもとにしたWebサイトの改善も行うことができ、WebサイトのPDCAサイクルをまわしていくことが可能となります。

アクセス分析はWebサイトのPDCAサイクルの検証フェーズ

2. サイト設計は検証の対象となる仮説

 1.にて明確にすべきとしたWebサイトの役割・目的とは、Webサイトの設計にて規定するものです。ただし、多くの場合にこの前提としてのWebサイト設計において当該サイトの役割・目的が十分に明確に規定されていないために、検証フェーズとしてのアクセス分析も十分に有益な情報を抽出できないということが起きています。

a.     ターゲットユーザ像の設定
b.     UxD (User eXperience Design) の設計
c.      KPIの設定

Webサイトの役割・目的として設定すべき内容・レベルは、サイトのコンセプトだけでなく、上記のa, b, c まで規定することが望ましいです。当該Webサイトを利用してもらうユーザがどのような人なのかがイメージできないと、Webサイトにどのようなコンテンツや機能を用意して、どのようにサイトを利用してもらい所定の役割・目的を実現すればよいかも検討するのが難しいので、出発点はaのターゲットユーザ像の設定となります。ターゲットユーザは複数グループある場合もあります。

よくあるWebサイトの役割・目的というのは、下記のような内容ですが、
  [Landing Page (LP)]
    新規のユーザ登録を獲得する
  [EC]
    ECサイト上の製品を購入してもらう
  [会社HP]
    製品の情報を伝えて興味をもってもらい、問い合わせ等につなげる
    会社所在地・役員構成・企業理念等の会社に関する情報を提供する
    求職者 (新卒/中途) に職場環境・社員の紹介などの情報を提供する
    新商品発表などの会社としての広報・情報発信を行う
  [製品サイト]
    製品のスペック・特徴・魅力・競合製品との違いなどを伝える
    製品を購入することができる店舗などを紹介する

上記のレベルの役割・目的だけだとKPIの設計もアクセス分析での検証も難しい面がありますが、上述のa, b, c まで規定されていれば、そのサイト設計時の「仮説」に対する検証作業としての、アクセス分析で何を確認すればよいかは明確になります。

a. ターゲットユーザ像の設定

ターゲットユーザ像としては、Webサイトの設計手法でもよく言われますが、下記のようなできるだけ明確なターゲットペルソナを描いてみるのが、後工程でのサイト設計でのイメージしやすくなるという意味で有効です。

 当該Webサイトのターゲットとするユーザとして20代だけでなく30代であってもある心理的なこだわり・好みがあればマッチするようなことは多いですが、ターゲットペルソナとしては、ターゲットとするユーザタイプの中の一例であっても、できるだけ具体的に描くことにより、そのような人であれば、どのようなコンテンツ・機能に対してどのように反応するのかを想像するのがやさしくなります。

ターゲットペルソナ

b. ユーザ体験 (UxD : User eXperience Design)の設計

 次にWebサイト設計としては、サイトを訪問してくれたユーザに対して、サイトの役割・目的を達成するまでに、どのようなコンテンツや機能を提供することにより、どのような心理的な変化を起こさせ、サイト内遷移などの行動をとってもらうかというユーザ体験の設計を行いますが、そこには下記のようなさまざまな仮説・設計を行うことになります。

・LP (Landing Page) であれば、当該ページを訪問してくれたユーザに対して、わかりやすく興味をもってもらえる内容をまずは提示/訴求することによって多少なりとも興味をもってもらって、ページを読み進んでもらおうとする

・ECサイトであれば、ある製品とともに合わせて別の製品も購入してもらおうという狙いから関連製品の紹介エリアを設ける

・会社HPや製品サイトであれば、当該製品の一番の訴求ポイントをひとめで興味をもってもらえる観点からのコンテンツをまず提示することにより興味をもってもらい、その後に製品の機能やスペックなどの詳細もきちんと説明することにより、問い合わせに誘導する

ユーザ体験の設計 (UxD)

 このようなユーザ体験 (UxD) の設計が具体的にできれば、その過程ですでに用意できているコンテンツをどの順番で提示するとよいか、どのようなコンテンツを追加で作成したほうがよいか、どのコンテンツからどのコンテンツへの導線があったほうがよいかなど、Webサイト設計の基本ができあがりますし、アクセス解析で検証すべき「仮説」が具体的にできあがることになります。

c. KPIの設定

 上述のようなシナリオ/ユーザ体験の設計をもとに、ゴール (目的) を達成するまでのポイントとなる箇所での計測できる期待値を設定したものがKPI (Key Performance Index) といえます。

 Webサイトのトップページに流入してきたユーザが当該製品ページトップまで遷移する割合がどの程度で、その製品ページトップをみてもらった後に、サイトから離脱せずに製品詳細やスペックのページをみてもらえる割合がいくらで、そこまで読んでもらって問い合わせをしようと判断して問い合わせページに遷移する割合がいくら、問い合わせページまできてくれても思い直して問い合わせしない人もいますので、実際に問い合わせしてくれる人の割合がいくらという期待値をターゲットユーザ像やユーザ体験の設計および過去の実績値などをもとに設定するのがKPIです。アクセス分析はKPIの値のチェックだけではないので、検証するもととしてのシナリオ/ユーザ体験は重要ですが、検証のポイントとしてのKPIは仮説の中での数値設定としてキーとなるものです。

Webサイトストラクチャ

 LPなどでは、縦に長い一ページのほかは申し込みフォームとなりますが、ECサイトや製品サイト・会社HPなどでは多数のWebページから構成されるので、最終的なゴールとなるページの申し込み/購入/問い合わせなどのアクションに到達する途中経過として、ポイントとなるページのアクセス数/訪問数 (そのページまで到達した割合) などをKPIとして設定することはよく行われます。

ワイヤフレーム

 また、ECサイトの製品詳細ページや各サイトのトップページなどの、重要なページでほかのページへのいろいろな導線も設定されているページの場合には、そのページからのほかのページへの遷移の割合もKPIとして設定されることがあります。当該Webページの設計の検証としてのアクセス分析において、設計時の期待値よりよいかわるいか判定することを可能とする仮説となります。

3. サイト種別によるアクセス分析

 アクセス分析とは、Webサイトをどのようにユーザが利用しているか、その利用状況・傾向を分析するものです。基本的には、設計時の仮説を基準として、その仮説通りに利用してもらっているか、想定とは異なる利用/動きをしているのかをデータを確認しながら検証していくプロセスとなります。
 
もちろん、設計時には想定していないようなユーザ利用/動向はよくあることですので、アクセス分析では設計時の期待通りかどうかという判定だけでなく、想定されなかったユーザ利用/動向について、どのようなユーザがどのような理由から、そのようなサイト利用をしているのかについて分析していきます。
 
 そのために、Google Analyticsのようなアクセス分析ツールにはさまざまな機能がそなわっていて、アクセス分析として下記のようなさまざまな分析手法が存在しますので、想定外のユーザ動向についてもどのような動向をしているのかをある程度まではどのような理由からそのようなユーザ動向となっているのかを推定することも可能です。
 
  ・流入分析 (1) - 参照元の分析
  ・流入分析 (2) - 検索エンジンからの流入の分析
  ・流入分析 (3) - プロモーション流入分析
  ・サイト内分析 (1) - 入口ページのシェアを見る
  ・サイト内分析 (2) - 直帰率を改善する
  ・サイト内分析 (3) - 検索キーワード別直帰率
  ・サイト内分析 (4) - 人気ページランキング
  ・サイト内分析 (5) - 経路分析・シナリオ分析
  ・サイト内分析 (6) - サイト内検索の活用
  ・コンバージョン分析
  ・セッション (訪問) をまたぐ分析
 
 本マガジンの以後の記事では、アクセス分析の代表的な分析手法についての解説をした上で、LP/ECサイト/会社HPそれぞれについて、どのようにアクセス分析していくのか、サイト種別ごとのアクセス分析を詳細に解説していきたいと思います。
 

アクセス解析の代表的な分析手法

会社HPのアクセス解析 ~仮説と検証~

LPのアクセス解析 ~仮説と検証~

ECサイトのアクセス解析 ~仮説と検証~