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【ショートショート】カーネル・サンダースの呪い
〈先日投稿した、短編小説『少年たちの秘密基地』でカットしたシーンを編集して、ショートショートに仕上げたものです〉
僕らの秘密基地は小さな森の中にあって、白い布に囲まれた円筒の形をしている。
使わなくったシーツを利用して、木々の間を輪の形に覆っているのだ。
控えめな蝉の鳴き声が、至る所から聞こえていた。
放課後、僕ら-僕とマナブとシゲチーとよっちゃんと掛布の5人-は秘密基地内で、次にどんな悪戯を学校でやるべきか意見を出し合った。
そして話し合いの結果、次の悪戯は『学校の音楽室にカーネル・サンダースの写真を貼ること』に決定した。
歴代の音楽家の肖像画の隣に、ケンタッキーの創業者、カーネル・サンダースの写真を貼ってやるのだ。
自ら思いついたアイデアだけど、カーネル・サンダースを選んだことは我ながら秀逸だったと思う。
「なあお前ら、『カーネル・サンダースの呪い』って知ってるか?」不意にマナブが訊いた。
「知らん、聞いたことないわ」よっちゃんは言った。「なんや呪いって」
「ちょっと、ウチ怖い話苦手やで」掛布は言った。
「俺も。テレビでやってる夏の心霊特集とか、絶対観いひんもん」シゲチーは言った。
「まあ、ええから聞けって。1985年のことや。その年は阪神がリーグ優勝して、日本一にもなった年やねんけどな」
「今からすれば考えられん話やな」僕は言った。
「せやろ? ある意味伝説の年やねん。
でな、阪神のリーグ優勝が決まった日にな、歓喜した阪神ファンによって、ケンタッキーのカーネル・サンダース人形が道頓堀の川に投げ込まれたんや。
ほんでそれ以降、阪神は不調に陥って、17年連続リーグ優勝を逃してんねん。これが『カーネル・サンダースの呪い』や」
僕らは互いに顔を見合わせ、基地内は数秒間沈黙に包まれた。
僕はカーネル・サンダースと阪神タイガースにそんな関係性があったなんて、今の今まで知らなかった。
「なんやそれ、初めて聞いたわ。ちょっとヤバない、それ?」
「まあ、ただの都市伝説やけどな。カーネル・サンダースで、ふと思い出したんたよ」
「え、ちょっと待ってや」僕は言った。「ほな僕のカーネルの案は、あんま縁起が良くないんかな」
「ちゃうちゃう」マナブは首を振った。「俺らは今年の阪神のリーグ優勝を祈願して、カーネル・サンダースの写真を音楽室に貼ったんねん」
「なるほどな」よっちゃんは頷いた。「おもろいやん、その考え。気に入ったわ」
よっちゃんと同じく、僕とシゲチーと掛布も満足げに頷いた。
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