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出前一丁は金の成る木である in 香港

おじさんが店先に座っている。右手には数箱、段ボールが積み重なっている。左手には空の段ボールと少し大きめのビニール袋がある。

おじさんは右手でひょいと段ボールから何かを取り出す。

取り出したものに包装を破って中身を取り出す12、3センチ四方のものを空の段ボールの隅に縦にしゅたっと置く。返す刀で小さな2つの袋をビニール袋の方にぽいっと入れる。

しゅたっと。ぽいっと。しゅたっと。ぽいっと。しゅたっと。

目にも止まらぬ早業とはこの事か。あっと言う間に空き箱には乾麺がしきつめられたていき、ビニール袋はスープの素とラー油の袋でぱんぱんになっていく。

出前一丁は数多い香港のローカルレストラン( 茶餐廳=ちゃーちゃんてん)に取っては 金の成る木だ。

スーパーでカゴいっぱいに出前一丁とお菓子がつまっているのを目にするのも日常の事だけれども、外食シーンにあっても堂々たるエースプレーヤーだから、全香港茶餐廳協会は毎年、日清食品関係者を表彰し世界一周旅行に招待すべきだと思う。

朝食、ランチ、アフタヌーンティー。セットには必ずと言っていいほど出前一丁がついている。例えば、目玉焼き、ソーセージ、トースト半分、出前一丁、コーヒーや紅茶のようなセット。40ドル。約650円。

出前一丁の具にはいろいろなオプションがある。目玉焼きとハムなどはもちろん、ザーサイをのせたもの、ランチョンミートをのせたもの、高菜をのせたもの。更には、ゆでたあと辛く炒めたものなど写真で見るようにバリエーションはめちゃくちゃ多い。

仕入れ一袋せいぜい30円くらいだろうから、もうかると思う。作るのにも時間もかからない。

そして真面目な話、disりたいわけでもないが、多くの場合どうやったらこんなに不味く作れるんだという仕上がりになっている。麺は固まっていてほぐすのに苦労する。にもかかわらずスープはぬるい。(そのほうがすぐ食べれるからかな。こちらではスープは飲まないし)たまには厨房代わってあげてもいいとさえ思う。

と、狐につままれた気持ちのまま20年以上も、いただいている。仕入れが安い、手間がかからない、それでいて絶大な支持がある。出前一丁を使った商売は錬金術だと思う。商売とはかくあるべし。ですよね。

うちの会社で茶餐廳を舞台に作ったWEBCMがあります。雰囲気を知りたい方はぜひご覧ください。

香港大塚製薬 / 賢者之食卓


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