【読書メモ】『WHO YOU ARE』ベン・ホロウィッツ著
▶今回の書評本:『WHO YOU ARE』
・『WHO YOU ARE 君の真の言葉と行動こそが困難を生き抜くチームをつくる』
・ベン・ホロウィッツ著
・日経BP社
▶書籍の内容メモ
心に残った、今後に役に立てたいフレーズ集を以下にメモしておきます。
○序文・イントロダクション
●本質的で最重要なメッセージは「あなたは何者なのか」である。
●会社の文化は、リーダーはもちろん、そこに所属する人たちの「自分は何者なのか」「どんな人になりたいか」という思いに沿っていなければうまく回らない。
●最も強固で長続きする企業文化は、言葉ではなく行動に基づく。
●企業文化はリーダーの人柄と戦略に合ったものでなければならない。
●「正しい答えのない質問にどう答えるか」、「トップがいないところで人々がどんな判断をするか」、「社員が日々の問題解決に使う一連の前提」がその企業の文化である。
●文化は社是のようなものではない。一度つくれば終わりというものではない。文化に沿わない行いを見聞きしても対処しなければ、それが自分たちの新しい文化になる。ビジネス環境が変化し、戦略も変わっていく中で、企業文化も環境に合わせて変わり続けなければならない。目標は動くものなのだ。
●強力な文化があっても、そのプロダクトを誰も欲しがらなければ、会社はうまくいかない。しかし長い時間軸では、組織文化のおかげで一見乗り越えられそうもない構造的な障害を打ち破ることができたり、社会制度や業界全体の行動を一変させたりすることもできる。だから、俯瞰してみれば、文化は社会全体の大きな推進力になる。
●既成概念を打ち破るようなアイデアの実現がとても難しい理由は2つ。
(1) 革新的なアイデアは成功よりも失敗の確率がはるかに高い。
(2) 革新的なアイデアは必ず反発を招くので、成功まで行きつかない。
⇒みんながいいと思うアイデアは真に革新的ではあり得ない。
●文化とは「こうすればみんなが自分の望み通りに行動する」といった魔法の法則ではない。「あなたが大多数の人たちにほぼいつも従ってほしいと望む行動の体系」である。
●すべての理念に100%あった行動をとれている大組織は存在しない。私たちの目標は「完璧を目指すこと」ではなくて「うまくやること」である。
●偉大な文化があっても偉大な企業が構築できるとは限らない。プロダクトが大したものでなかったり、人の欲しがらないプロダクトを作っていたりする場合には、どれほど文化が優れていても企業は失敗する。
●企業にとっての「文化」とは、有望なプロスポーツ選手にとっての「栄養とトレーニング」のようなもの。
⇒生まれつき能力の高いアスリートなら、多少栄養が足りていなくてもトレーニング環境が劣っていても成功できてしまう。しかし、才能がなければオリンピック選手にはなれない。それでも、最高の栄養とトレーニングはすべてのアスリートを強くする。
●優れた文化が成功を確約しないとすれば、どうして文化を気にする必要があるのか?
⇒社員の記憶にいつまでも残るのは、プレスリリースでもなければ、賞をもらったことでも、業績が上がった下がったということでもなく、自社のプロダクトのこともあやふやになってしまうかもしれない。
⇒社員の心から離れないことがひとつあるとしたら、それはその会社特有の「気質と気風」。物事がうまくいかないとき、その気質や気風が「人々をつなぐ拠り所」になる。それが日々の「小さな判断の道しるべ」になり、それが積み重なってある種の「純粋な目的意識」が生まれる。
●「人の真の姿は、どんな行動をしているか」に表れる。「あなたの行いが、あなたという人間」なのだ。
○第2章 ルーベルチュールのテクニックを使う
●ショッキングなルールをつくる
□ 記憶に残るもの。 ルールを忘れると文化も忘れる。
□ 「なぜ?」と問いたくなるもの。 誰もが「マジで?」と聞き返したくなるような、奇妙なショッキングなルールでなければならない。
□ 文化に直接影響するもの。 「なぜ?」への答えがその文化の概念を明快に説明するものでなければならない。
□ ほぼ毎日使うもの。 どれほど記憶に残るルールであっても年に一度しか使わなければ意味はない。
○第3章 武士道
●武士道は一見、一連の哲学のように見えるが、むしろ実践の積み重ね。侍にとって、文化は行動規範。つまり価値観ではなく徳(善い行い)の体系が文化だった。価値観は単なる信条だが、徳とは人間が努力し体現する行動。
●いわゆる「企業理念」に意味がないのは、それが行動ではなく信条しか表していないから。文化を築くにあたって、あなたが何を信じているかはどうでもいい。あなたが何をするかに意味がある。
●武士の心得
武士の規範は8つの徳(義、勇、仁、礼、克己、誠、名誉、忠義)に基づいている。
□ 名誉
侍は名誉を、切っても切り離せない人格の一部と考えていた。名誉がなければ他の特に価値はなく、けだものと同じになってしまう。
あなたはこの取引を誇りに思えるか? チームの仕事ぶりは立派か? 胸を張って自分の仕事と言えるか? もしユーザーやライバルがあなたの行いを疑ったら、自信を持って名誉ある行動を取ったと語れるか?
□ 礼
さまざまな状況において侍がとるべき振る舞いを細かく定めた、一連のややこしい作法。その根っこには礼儀が他者への深い愛と尊敬を表す最良の手段だという心情がある。ただ決まりごとに従えばいいというものではなく、より親密な関係への入り口が礼儀。
侍は「礼」という徳に「誠」を組み合わせ、正直さや誠実さのない礼儀は、中身のない振る舞いだと定義づけた。
□ 誠(誠実さ、または正直さ)
武士の「誠」という考え方は、孔子に由来。「すべては誠実さにはじまり、誠実さに終わる。誠実でなければ、何もないに等しい。」
○第9章 境界事例と見せしめ
●意思決定の文化
リーダーの意思決定には3つのスタイルがある。
(1) 敵か味方か?=お前の意見はどうでもいい。俺は俺の道を行く。
(2) 全員参加。=正式な投票ですべてを決めていいならそうしたがる。
(3) みんなの意見を聞いて私が決める。=正しい情報を集めてすべての知恵を使いながら、プロセスの効率化を図ろうとする。
⇒ビジネスでは(3)が一番うまくいく。
○第10章 まとめ
●信頼
・「信頼」は「正直さ」から生まれ、社員がリーダーを信頼しなければ会社は崩壊する。そのカギになるのは、真実を話すこと、それによって会社を破壊しないこと。
・「現実は変えられない」ことを受け入れた上で、「現実に新しい意味」を持たせなければならない。
⇒問題事象(例:レイオフ)に対する解釈は人(マスコミ、クビになった社員、会社に残った社員)によって違う。しかし、誰よりも先にあなたが問題事象に意味を持たせ、正直に説得力を持ってその意味を伝えれば、あなたの解釈がみんなの記憶に残るものとなる可能性は高い。
・「現実に新しい意味」を持たせるカギは3つある。
(1) 事実をはっきりと述べる。
事実をありのままに伝える。言い訳をしてはいけない。事実は事実であって、あなたが事実を認識していることをみんなが理解していることが重要。
(2) あなたの失敗が問題事象につながる状況を招いてしまったとしたら、それを認める。
なぜそのようなことをしたのか?
同じ過ちを繰り返さないためにどんな教訓を学んだのか?
(3) 今回の行動がより大きなミッションになぜ必要なのか、そのミッションがどれほど大切なのかを説明する。
問題解決が適切に行われれば、この会社に新しい命を与えられる。厳しいことだが当初の木益を達成するため、ここにいるみんあが賛同したミッションを果たすため、つまり最終的に成功するために今回の行動は避けて通れない。
・悪い知らせに心を開く。
いつもどこかで何かしら悪いことが起きている。悪い知らせをわざわざ伝えながらない理由は、
(1) 無責任に感じられる。
「解決策を持たずに問題を持ち寄るな。」は単に「そもそも問題を持ち寄るるな。」と聞こえてしまう。
(2) 会社の長期目標が社員の短期インセンティブに合わない。
(3) 怒られたくない。
・悪い知らせを歓迎する。
問題について聞かされたら、なるべく嬉しそうにする。
「手遅れになる前に分かって良かったじゃないか。」とか「これを解決すれば、この会社もまた一段と成長するぞ。」という。
部下はリーダーの様子を見て、リーダーが悪いニュースを受け入れるなら、自分たちも何とかできそうだと思うようになる。
優れたリーダーはこうした痛みと暗闇に自分から駆け寄っていく。そしてそのうちに痛みを楽しむようにすらなる。
経営会議への参加に入場料=「今、炎上中の問題を少なくともひとつは白状する」を設定する。
・人ではなく課題に焦点を当てる
問題を見つけたら、根っこにある原因を解析し、何が問題を引き起こしているかを突き止める。
大抵の場合、背景にはコミュニケーションや優先順位の付け方やその他の解決可能な問題がある。
怠惰な社員や間抜けな社員が原因ではない。
社員に責任をなすりつけるのではなく、根本原因を探り当てそれに対応することで、風通しが良く保身のない文化、つまり悪い知らせを歓迎する文化が築かれる。
・普段の仕事の中で悪い知らせを探す
ミーティングでも偶然でも、社内で誰かにあったとき、悪い知らせがこちらに伝わるような質問をしてみる。例えば「仕事をやり遂げるのに障害になっているものはあるだろうか?」「もし君が私だったら、会社のどこを変えるか?」など。
熱心に悪い知らせを聞きたいという気持ちを示し、悪い知らせを知った後に真摯に支えてあげれば、社員はより心を開いて問題を打ち明けてくれるようになる。
●忠誠心
・忠誠心は、相手が自分に忠誠心を持っている、つまり同僚や会社が自分の味方になってくれると思うからこそ生まれる。
・忠誠心の促し方はリーダーによって異なる。
(例)うちでは終身雇用は約束できない。ただ15年後に振り返ったときに人生で一番意義のある仕事がここでできたと思える職場にしたい。その代わりに、僕は2つのことを社員に期待するまず「倫理的な誠実さ」だ。次に「自分より会社のために一番いいことを行う」ということだ。この2つに期待に応えてくれたら、わが社はその社員に感謝し、尊敬し、忠誠を尽くす。
・忠誠心は人間関係の質に左右される。
社員は会社を辞めるのではなく、上司から離れる。
上司と部下の間に何の人間関係もないか、関係が悪ければ、企業文化がどうであれ忠誠心は望めない。
組織のリーダーは、直属の部下をはるかに超えて、社内の人たちと意義ある関係を気づくことができる。リーダーが出会う人たちに純粋な興味を持ち、約束を守り、みんなが支えたいと思う人物になれば、最も動きの激しい業界においても深い絆と忠誠心を気づくことができる。
●文化のチェックリスト
□ 文化のデザイン
企業文化はリーダーの性格と戦略に確実に合ったものでなければなならない。文化が盾にされるケースをあらかじめ想定し、あいまいなところがないように定義づけるべき。
□ 文化への刷り込み
企業への入社初日の印象は長く頭に残る。入社初日に、その会社で成功するには何が必要かを学ぶ。間違った第一印象を植え付けてはならない。また偶然に任せて印象を刷り込んではならない。
□ ショッキングなルール
「なぜこんなルールがあるんですか?」と聞かれるような意外なルールは、文化の要素を強化する。組織にショックを与えて文化を守らせるにはどうしたいかを考える。
□ 外部のリーダーシップを取り込む
自分たちに必要な文化が、既存の文化とあまりにかけ離れている場合には、外の助けを借りる必要がある。なじみのない文化を自力で目指すより、理想の文化を熟知した経験者を連れてきた方がいい。
□ 見せしめ
リーダーの行動は言葉よりはるかに意味がある。教訓を強く植え付けたいなら見せしめを使うといい。劇的なことをしなければならない。
□ 倫理規範を明確にする
リーダーがよくやる悲惨な間違いの一つは、ほかの目的と矛盾しても「人々は正しいことをする」と思い込むこと。倫理規範を暗黙のままにしてはならない。
□ 文化規範にインパクトのある定義を与える
普通とは違った、意外な定義で規範を目立たせる。
武士が「礼儀正しさ」を今と同じように定義していたら、文化に何のインパクトもなかった。「愛と尊敬」を表すのに最高の手段として「礼儀正しさ」を定義付けたらこそ、それが未だに日本文化を形づくる要素であり続けている。行動規範が本当に意味するところは何かを考える。
□ 言行一致
「私の行動ではなく言葉を見習え」では通用しない。
自分が実践しない文化規範を選んではいけない。
□ 何が一番大切かを行動で示す。
言うだけでは不十分。行動で示すことが必要。
結び
文化は、リーダーが何に一番価値を見出すかを知ることから始まる。
その価値観を反映する行動を組織の全員が実践できるように、リーダーは努力し続けなければならない。
行動規範があやふやだったり、煩雑で邪魔にしかならないものなら、それを変えなければならない。文化に重要な要素が欠けていれば、それを付け加えなければならない。
そしてなにより社員の行動に最新の注意を払い、自分の行動には一層注意しなければならない。
あなたの行動は企業文化にどう影響しているか?
あなたは自分のなりたい人間になっているか?
それが素晴らしい文化をつくるということだ。それがリーダーになるということなのだ。
▶感想
・「企業文化」という、モヤモヤしたよく分からないものを解説し、腑に落としてくれる実践書。役立つものだけメモしようと思ったら、メモだらけになりました。これまで、企業文化に関する書籍を色々と読んだが、この本が一番腑に落ちた気がします。
・組織のリーダーとは何なのか、どうあるべきなのか、企業文化とは何なのか、どうつくったら良いのか。それらの道筋が見えてきた気がします。あとは「行動」するのみ。
以上です。
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