見出し画像

発問研究のポイント NO4

本シリーズでは、子どもがイキイキと授業に参加してもらうために欠かせない、道徳の発問作りについて述べて参ります。本号では、前回号に引き続き「思考を『揺さぶる』補助発問(問い返し)」についてです。

思考を「揺さぶる」補助発問(問い返し)

1 前回号のおさらい


 発問研究のポイントNO3で、思考を揺さぶる問い返しには大きく分けて2つのパターンがあることをお伝えしました。
その二つとは・・・
①子どもの発言の妥当性を問い揺さぶる。
②子どもの発言よりも妥当性の高い考えを提示し揺さぶる。
です。
今回は、その②について詳しく説明いたします。

2 教科書の価値は偽善?


道徳の教科書教材には、「大人が教えたい」道徳的価値が描かれています。
例えば・・・
○挨拶するのは気持ちがいい。
○きまりやマナーは守ろう。
などです。
しかし、その価値は本当に正しいのでしょうか。
子どもでも「挨拶をすることは大切」や「きまりやマナーは守らなければならない」などは知識として知っています。
しかし、次のようなことも思っています。
「挨拶はめんどくさい」
「挨拶しても何もメリットはない」
「きまりが自由を奪っている」
「マナーを守らない人の方が楽しそう」

などです。
なぜなら、このような経験を数多くしてきたからです。
少なからず、大人でも同じように考えている人がいるかもしれません。
ということは・・・
教科書に含まれている価値は、偽善なのでしょうか

そうではありません。

3 教科書の価値はやっぱり正しい!

教科書教材に描かれている価値は、これまでの日本の長い歴史の中で、人々がよりよい生き方を模索しながら破壊と構築を繰り返し築き上げられたものなのです。
しかし、いつの間にか本質的な部分が置き去りになり、表面的な部分「挨拶はしよう」「きまりは大切」などだけが継承されてきてしまったのです。
そのため、道徳科では価値の本質に迫る必要があるのです。

4 子どもの発言よりも妥当性の高い考えを提示する
 

では、どのように価値の本質に迫ればいいのでしょうか。
そのためには、子どもの表面的な価値の理解を破壊しなければなりません。
そうすれば自ずと再構築を図り始めるのです。
つまり、表面的に考えていたことを、問い返すことで思考を促し、新しく価値の理解を深めてあげるのです。
破壊する方法とは・・・
子どもの発言よりも妥当性の高い考えを提示することです。
例えば・・・

(友情について考える授業)
*異性との関わりについて理解を深める授業です。
教師:主人公は「いい友達」と言えますか。
子ども:「いい友達」と言えると思います。
子ども:だって、男女の壁を超えて、積極的に異性に話しかけているからです。
子ども:周りのからかいにも負けないで、正しいと思ったことをしているからです。
教師:そうかな。私は「いい友達」ではないと思います。
教師:なぜなら、周りからからかいを受けた場合、相手にも迷惑がかかると思うからです。結局、自分のことしか考えてないのではないですか。

上記のように、子どもの見えていない視点を提示しながら問い返します。
すると、これまで見えていなかった視点も踏まえて新たな価値を創造し始めます。
そして・・・

子ども:確かに、相手に嫌な気持ちを与えてしまうかもしれません。
子ども:それでも、男女の関わりを冷やかすようなクラスだとみんなも楽しくないと思います。
子ども:主人公は、そうなってほしくないから積極的に話しかけていると思います。だから、自分勝手ではない。
教師:なるほど、主人公は自分が嫌な気持ちになってまで、クラスみんなが仲良くなって欲しいと考えているのですね。
教師:そういう人だからこそ「いい友達」なんですね。

このように、教師の問い返しを乗り越えてきたときに、価値の本質に迫ることができるのです。

以上のように、問い返すスキルは、
①子どもの表面的な発言の妥当性に問い返し、主張を崩す。
②子どもの表面的な発言に対して、さらに妥当性の高い主張で問い返し、主張を崩す。
という2つのパターンがあるのです。

そして、授業名人たちは、この二つのパターンを子どもの状況に応じて巧に使い分けているのです。

今回で「発問研究のポイント」は最後となりました。

次回号では、「思考を可視化する板書」について、私の考えを述べていきます。
*私のnoteでは、2週間に一度、「道徳科授業づくり」について書かせて頂いております。興味のある方はフォローをして頂けると幸いです。よろしくお願いします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?