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遺言書を活用した「事業用財産」の承継について

私の経験上、遺言書を遺すべきと考える属性との方の一つに、事業経営者の方がいます。

お勤めされていた方とは違い、押し並べて財産の種類が多く、その大半が分割継承となると大変ややこしくなります。

会社を立ち上げたり、途中増資したりした時の資本金(出資金)。それに加え、会社を経営しているときに資金繰り等の事情があり、役員報酬を未払いにし、社長個人から法人への貸付金勘定となっているもの。はたまた個人の所有である土地を会社の事務所や工場敷地などに使用させているもの。こういった事業資産は後継者である特定の子供などが相続しないと経営が立ち行かなくなるケースが生じます。

特に、会社の所有株式。現在70代くらいの方が、若いころ法人を立ち上げるとき、出資者が7名以上の制限があったため(1990年の商法改正で制限を廃止)、立ち上げたご本人の他、妻や家族、親族、役員、従業員や知人などの名義が残っているケースが結構あります。

後継者と目して、長男や長女、二男等を会社に入社させ、職制上は専務や常務として帝王学を薫陶したとしても、現在の代表者である本人がご逝去された後、その持分が後継者に引き継がれないと、議決権などの経営上の懸念が生じます。最低でも、後継者の持分が全体の過半数になるような出来上がりにならないと、会社経営上の意思決定に大きく影響がでてきます。

事業用資産は、ピザ🍕のように単純に分けるのは難しいのです🥺

また相続税の問題で、本論とはややそれますが、持分継承の部分に懸念がなくても、コツコツと真面目に経営してきたゆえに、内部留保が積み上がり、その株式評価が出資当初の金額の数倍、数十倍にも膨れ上がっているケースがあります。

近年、銀行等取引金融機関が法人へのコンサルティングを強化している影響で「事業承継」課題として、退職金支給を伴う株価引下げ対策や資産管理法人設立などの株式承継対策を提案しているようです。これはこれでとても有益な対策となるケースも多いでしょう。

しかしながらこういった対策は、時間をかけて吟味するため相談中に経営者自身に不慮、不測の事態が生じた場合、遺言書の完成までたどり着いていないと、後継者を含めた相続人による「遺産分割協議」となってしまうのです。その持分や評価額をめぐって会社経営とは直接関係ない相続人との調整が必要になります。

確率は高くないとは言え、近年は予測もしない疫病や大規模災害、はたまた交通事故等に遭遇するケースも見受けられます。

重い腰をあげて、事業承継対策に着手しても結論までに相当の時間がかかりそうな場合、シンプルに考えて事業用資産の部分の遺言書を取り急ぎ、暫定的にでも作成しておいた方が良いと個人的には考えます。

「遺言者Aの有する株式会社Bの株式や出資金、貸付金は長男Cに相続させる」と。
遺言者は意思確認が十分なうちは何度でも修正、変更ができます。まずはある程度の方針が固まったら、自筆証書でもよいので事業用資産を中心とした遺言書を遺しておくべきと考えます。

修正や変更、書き直しに伴う費用などは、その後の遺産分割の「争族」を考えれば安いものです。

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