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読書_聡明な女性は料理がうまい

僕はいい年をした男の中では料理をする方だと思う。
親の方針で料理をやらされたわけでない。
実際、高校生くらいまでは何もできなかった。
なんで料理をするようになったかと言えば2冊の本を読んだからだ。
1冊は村上春樹さんの「村上朝日堂」。
この中で若い頃の村上春樹さんが、一時的に奥さんが稼いで自分が主夫をやるエピソードがある。
どういう訳だか「いずれそういうこともあるかな」と思った(まだ実現していない)。

もう1冊は桐島洋子さんの「聡明な女は料理がうまい」だ。
僕は芸能人の異性に熱をあげるタイプじゃないのですが、今も昔もずっと桐島洋子さんの長女である桐島かれんさんが大好きです。インタビューか何かを読んで桐島かれんさんが表紙を飾った角川文庫の文庫版(1990年)を買いました。
文庫版の前の単行本は1976年。ベストセラーになり、その印税で桐島洋子さんは、まだ幼かった、かれんさんたち3人のお子さんとアメリカで1年間の休暇をアメリカのイースト・ハンプトンで過ごすことができたそうです。

この本はレシピもたくさんありますが、生きてゆく上での気構えみたいなものを学んだ気がします。
気風のいい生き方。自分の人生の主役は自分だという生き方。そのためには生活をちゃんとすること。
ちゃんとした生活をするには料理くらいできなくちゃダメだな。
コンビニ弁当とか惣菜、うまくもない外食で済ますような生き方はごめんだな。と、当時の僕は思いました。

アメリカから来た女性が100g1200円もする松坂牛をみて「It insult someone's intelligence(それは知性を侮辱する)」と、アメリカ人がよく言うフレーズを言うところがあります。必要であれば松阪牛でもなんでも買うと言いつつ、自分の価値観をしっかりと持ち、一般的であっても、自分の価値に反するものに「知性を侮辱するな」と言って背を向けると言います。世の中の常識との折り合いのつけ方を学ぶいい機会になりました。

読み返すと、僕の料理のベースになっている部分をたくさん発見しました。
冷凍することで時間短縮することは良いこと(特にご飯)。インスタントラーメンを作るよりパスタを作る方が簡単。豚の塊肉煮、骨がついている肉は美味しい、イワシ料理あれこれ、ぶり大根。

僕は炊飯器の保温機能が昔から嫌いなので、10年前くらいからは鍋で米を炊いて、100gずつにラップして冷凍保管しています(炊飯器は捨てた)。これも本書がベースになっていたようです。

また、今では信じられないけど高校生までの僕は茄子が苦手でした。この本には旅した世界各国のエピソードと料理を紹介するコーナーがあるのですが、トルコでは茄子を「貧乏人のキャビア」と言い日本では「嫁に食わすな」というエピソードが面白くて食べるようになった覚えがあります。しかし日本の言い回しは貧乏くさい。

桐島洋子さんの時代は今よりもっと良妻賢母になることを社会的に求められた時代でした。結婚や妊娠が理由で退職するのが当たり前という時代。結婚せず、自由に恋愛をして、働き、3人の子供を育てた桐島洋子さんの生き方を快く思わない人も多かったでしょう。
21世紀になり男女雇用機会均等法などが当たり前になり育児休暇なども整備されつつありますが、まだまだ日本は先進国各国に比べると十分に女性が自立して社会に活躍できている社会とは言えないと思います。
仕事、家事、個人のことのバランスを見直すためにも本書は読む価値があると思います。
女性だけではなく、男性が読んでもタメになる本です。男性が家事ができれば女性はもっと働きやすくなるはずです。

桐島かれんさんと、ご主人で写真家である上田義彦さんにも大きな影響を受けています。

ホームスイートホームという本は文章:桐島かれんさん、写真:上田義彦さん。とても美しい本です。

また、公式YouTubeも素敵です。



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