高巻 渦

掌編小説と身の周りの出来事。 好きなギャンブルは人生。

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高巻渦の宗教へようこそ 私の肺を汚すためのコミュニティです。 せっかくなので全体公開で書けない・書きたくない・書いたらマズい記事を投稿出来たらと考えています。 何卒よろしくお願いします。 2023/02/07 高巻渦 @Uzu_Takamaki

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  • 自画自、賛々

    自分でもよく書けてるなと思う小説のまとめです。

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    日記や体験談のまとめ 友人からは「小説より日記の方が面白い」 という言葉をたまにもらいます

  • 病まない二人 サジニセニハラ

    サジニセニハラシリーズのまとめです

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営業マンとドーベルマン

 二十年前。小学生の頃、捨てられていた犬を殺してしまったことがある。  ダンボール箱に入れられて野ざらしにされていた子犬に「ご飯持ってきてあげるから待っててね」と言い、そのまま忘れてしまった。  次の日の下校途中に思い出し、慌てて昨日と同じ空き地の隅へ行くと、忘れられた子犬はダンボールの中で冷たくなっていた。  俺は泣いた。子犬の死を悲しみ、涙を流す権利なんてあるはずなかったのに。あの時「待っててね」なんて言わなければ良かった。  あの子犬が俺の言葉を理解し、俺を信じてずっと

    • 仮死

      私は今、死にそうである。原因はずばり金銭面にある。 何故なら、ろくに金も持っていないのにPCを新調してしまったのだ。 慎重さの欠片もない20万超えの出費に、口座が悲鳴を上げている。 これまで使っていたのはノートPCだったが、今回はデスクトップである。 無謀な奮発だったと自分でも思う。 ノートPCにはモニターもキーボードもマイクもカメラも、全てが最初から備わっている。 しかしデスクトップは、バカデカい本体だけがドンとあり、前述した周辺機器は全て別売りである。 つまり、金がかから

      • 猫かぶり

         ここまで110球を投げている……エースの高橋……対するバッター宮本に……投げた……打ちました……三遊間を抜けた……ランナー三塁を回って帰ってくる……セーフ……セーフ……劇的な幕切れ……サヨナラ勝ち……。  つけっぱなしにしていたテレビから、球児たちの夏が終わったことを告げる、実況アナウンサーの声がする。続けてまどろみの奥から聴こえてきた大歓声は、私の瞼をこじ開けるのに充分なボリュームだった。 「帰省」と書いて「たいくつ」と読む生活は今日で二日目を迎えていた。  上体を起こ

        • 霧のボート

          辺りには濃い霧が広がっていて、それをかき分けるように一艘のボートが進んでいく。 水面の上を滑るように、音もなく、あてもなく、ボートが進んでいく。 ボートに乗っているのは制服姿の二人。 ゆっくりとオールを漕ぐ少年を見つめながら、少女は目を細め、口を開く。 「木田君と二人きりでデートできるなんて、夢みたい」 少女の声に抑揚はなく、無機質で、その無機質が言う。 「ねえ木田君、そっちへ行ってもいい? でもあんまり近寄ると、重心が偏ってボートがひっくり返っちゃうかな」 少女は

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          堪える

          こら・える〔こらへる〕【▽堪える/×怺える】  1 苦しみなどに、耐えてがまんする。しんぼうする。「痛みを―・える」「飢えや寒さを―・える」 2 感情などを、抑えて外にあらわさない。「怒りを―・える」「笑いを―・える」 3 外から加えられた力にたえる。もちこたえる。「強烈な寄りを―・える」 高校時代の私は、盛大に斜に構えていた。 例えるなら「smooth criminal」の間奏中にゼログラビティを披露するマイケルジャクソンばりに傾いていた。 クラスメイトの誰もが聴いたこと

          消えた怪談

          かたや、テレビの特番で芸人崩れが海外ロケをしながら「ゾルタクスなんちゃら」「なんちゃらメイソン」などといった脅威を語り、いかにも俺は人類に対して警鐘を鳴らしてますよと言いたげな話。 かたや「人面犬」「ターボババア」「死体洗いのバイト」などといった、怖くもどこか可笑しい奇怪な噂話。 「都市伝説」と聞いて真っ先に思い浮かぶのはどちらだろうか。私は断然、後者だ。 テレビ越しの芸能人から一方的に聞かされる、台本通りで既に完成された小難しい話よりも「友達の友達から聴いたんだけど…

          消えた怪談

          私の塔

          他人に対して心を開くスピードが非常に遅い。 学生時代の私はそれが特に顕著だった。 交流を図ろうとしてくる他者と自分との間に設けた立て付けの悪い錆びついた扉は鍵を差し込んでもなかなか回らず、時々自分でも開け方がわからなくなり、他人から全力で押したり引いたりしてもらってようやく気兼ねなく会話ができるようになる、そんな塩梅だった。 更にタチの悪いことに、私はそれを改善しようとはせず「自分本意に作り上げた受け身の立ち位置」に甘んじていた。 「自分から話しかけるなんてカッコ悪いし、仮に

          問題の多いフォロワー展2

          ~~~~~~ 類は友を呼ぶ。 そんな諺があるように、人格に問題を抱えている私を好きこのんでフォローしている連中も、必然的に問題を抱えているのではないか? そんな疑問の下 「皆さん珠玉のゴミクズエピソード・黒歴史を教えてください」 と募集をかけてみたところ、地獄の如き体験談が集まり 完成したのが2019年7月12日に公開された下記リンク 「問題の多いフォロワー展」である そして今回、ひょんなことからその第二弾を開くことになった。 「流石に前回は超えられないだろう」 という

          問題の多いフォロワー展2

          Welcome to underground!

          Welcome to underground!

          問題の多いフォロワー展

           類は友を呼ぶ。 そんな諺があるように、人格に問題を抱えている私を好きこのんでフォローしている連中も必然的に問題を抱えているのではないか? という疑問を覚え 「noteのネタにするから皆さんの珠玉のヤバい体験談を教えてください」  と、募集をかけてみた。悲しきかな案の定めちゃくちゃ面白い話が聞けた。問題の多いフォロワー展、予告もなしにひっそり開催。

          問題の多いフォロワー展

        記事

          レア

          この際、本名なんてどうでもいい。 奴は「レア」と呼ばれていた。 九州の片田舎、まだ自分の家の半径数キロが世界の全てだった中学一年の頃。 俺と同じ教室に「レア」は確かに存在していた。 あだ名の由来は、奴が滅多に登校してこなかったから。 週に一度来れば良い方で、ひどいときには月イチの登校もザラだった。 当然成績も最下位で、いつも一桁の点数が書かれた用紙を持ってヘラヘラしていた。 けれど担任の女は、そんなレアを咎めたりしなかった。 当時はそれを不思議に思ってたが、今考えれば家庭

          夢で逢えたら

           夏の昼下がり。コンビニへ向かう途中の舗道に、少女が倒れていた。  近寄ると、かすかな寝息が聴こえてくる。汗ばむ細い首筋と、規則的なリズムで上下する胸を見ながら、僕は彼女の肩の辺りに手をかけ、軽く揺さぶった。  はっと開いた彼女の瞳は、真上で照りつく太陽の眩しさで、再び細くなった。 「大丈夫?」  僕が声をかけると、彼女は困ったような、申し訳なさそうな表情で上体を起こし、立ち上がって言った。 「ごめん。私、ナルコレプシーなんだ」  ナルコレプシー。夜間に充分な睡眠を

          夢で逢えたら

          「オキニー」は絶対にやめろ

          「オキニー」 オキニーとは、私の造語だ。 何もすることがなく、ただ性欲だけが有り余っているそんな夜。 なんとなく股間に手を伸ばし、オカズを探し始めて小一時間が過ぎ 「もうアレでいいか……」 と考えた瞬間に、件の「オキニー」は発生する。 オカズ探しに難航し、以前見たお気に入りの動画か何かで手短に自慰を済ませる、人類史上最も愚かな行為。 そんな置きに行ったオナニーのことを私は「お気に入り」と「置きに行く」を掛けて「オキニー」と、そう呼んでいる。 ここから先は、自慰行為を愛し

          「オキニー」は絶対にやめろ

          回りくどい椅子

          同棲を始めてから別れるカップルなんて、伝説上の存在だと思ってた。 百歩譲ってそういう末路を辿った恋人たちがいたとして、自分だけはそうならないと思ってた。そうならない相手だと思ってた。 一緒に暮らし始めてから相手の嫌なところばかり目につくようになって、互いに一人暮らししてたときよりも話す回数が減って……。 そのまま二人は伝説の存在となった。 もう数日もすれば引っ越し業者が来て、一生付き合ってくには到底相容れなかった相手の家具を一式、どこか知らない場所へ運んでいく。 読みかけ

          回りくどい椅子

          挑戦、長編、超変。

          せっかくだから太字を使って、でかでかと書こうと思う。 たったいま私は、12万文字の小説を書いた。 自分の好きな物をこれでもかと詰め込み、やっとのことで書き上げた12万文字。 思い残すことはもうありません。燃え尽きたぜ、真っ白にな。 2022年に7つの話を書いたまま放置していた作品を今月に入ってから再び書き始め、合計13話を書きあげました。 死ぬ。今月に入ってからざっと6万文字は書いた。 友人たちからは 「ちゃんと寝ろ」「書くペースが躁すぎる」 などと言われました。

          挑戦、長編、超変。

          クソ心霊スポット

          登場人物 私・・・筆者、運転手、心霊スポットがやや楽しみ フォロワーA・・・今回の首謀者、非常に怖がり、大男 フォロワーB・・・ムードメーカー、巻き込まれた被害者、大食い フォロワーC・・・非常に怖がり、心霊スポットが楽しみ 「何か夏らしいことがしたい」 八月上旬、退屈極まる人間が集うディスコード上でAはそう言った。 「夏らしいことって例えば?夏祭りとか、海とか?」 私の質問に、彼はため息をついた。 「そんな、ねぇ?カップルとか陽キャが楽しむもんを俺らは楽しめないでしょ」

          クソ心霊スポット

          4/3,詩/散,散分の詩,散文詩

          夏。コンビニで買ってきたタバコと飲み物が、その日のうちになくなる。 アスファルトの上に這い出たミミズが、その日のうちに亡くなる。 壁に掛けられた手持ち花火の、パッケージに書かれていた言葉。 「煙が出にくく、スマホで撮りやすい」 誰かが何かを選択するその連続で、世界は回っている。 つまらない売り文句を考えた奴と、それを採用した人間がいる。土の中から出てみようと考えたミミズがいる。子供を車内に残した親がいる。甘い球を投げて泣いた球児がいる。 我慢できず最後の一本に火を付けた俺もい

          4/3,詩/散,散分の詩,散文詩

          ちぎれ飛ぶ腰巾着

           得体の知れないウイルスが蔓延し、インフラも秩序も崩壊したこの世界で、桜庭紗弥と自分が「非感染者」として生き残っていることを、平山玲は必然と捉えていた。  玲は常に紗弥の後をついてまわる存在として、他の生徒から一目置かれた高校生活を送っていた。  二年前、県で有名な女子高に入学した玲は、紗弥の凛とした横顔を一目見て、彼女について行こうと決めた。  その目に狂いはなく、入学式からものの一ヶ月で、紗弥はクラスのカーストの頂点に君臨した。彼女が誰かの陰口や不満を漏らせば、例えその

          ちぎれ飛ぶ腰巾着

          台風とピンサロ嬢

           小笠原諸島の南方で発生した台風14号は丸一日かけて本土に上陸し、東京を直撃した。  出張からの帰り道は案の定どしゃ降りで、持っていたビニール傘は突風に煽られて何の効果もなさない棒切れと化したあと、続けざまに吹きつけてきた二陣目の風にもぎ取られてどこかへ転がっていった。  気が滅入っていた。長い出張を終え、一刻も早く疲れを癒したい状況にも拘らず、この暴風雨だ。雨宿りがてら、どこか店へ入りたくなった。  半ば自暴自棄な言い訳を頭の中に並べながら、雑居ビルの三階へ向かい「シャ

          台風とピンサロ嬢

          「恐怖ショー」読んで頂いた方、スキを押してくれた方、本当に感謝です。 ありがとうございました。

          「恐怖ショー」読んで頂いた方、スキを押してくれた方、本当に感謝です。 ありがとうございました。

          「恐怖ショー」 三話

           満身創痍の身体を引き摺りながらメインテントへと歩を進める。延々と悲鳴を上げ続けている左半身と頭は、俺の動きを一層鈍くする。それでも演目のために向かう時と比べれば、数段気分は良かった。  向かったのはいつもの裏口ではなく、客が出入りする表口の方だった。初めて見る観客たちの背中は、やけに小さく見えた。ステージでは暗所恐怖症の少年が、ダグラスの鞭に打たれて泣いている。俺はビルの置き土産であるスピリタスの栓を抜き、一滴残らずテントに振りかけた。濡れたピエロの顔が、忌々しいダグラス

          「恐怖ショー」 三話

          「恐怖ショー」 二話

           ボクンという嫌な音と共に、地面に叩きつけられた。全身を襲う激痛にのたうち回りたいが、背中を打って呼吸が出来ず、身体も動かない。かろうじて首を曲げると、軟体動物の死骸のようになっている自分の左腕が見えた。ひどい耳鳴りの中、微かに客席から上がる歓声が聴こえる。ペンの尻拭いは無事に果たせただろうか。そんな考えを巡らせていると、霞んだ視界にダグラスの足が映った。 「しぶてぇ野郎だ、お前の母親はこれでくたばったのによ」 頭上から吐き捨てられた奴の言葉に、俺は怒りを覚える間もなく、意識

          「恐怖ショー」 二話