4/3,詩/散,散分の詩,散文詩
夏。コンビニで買ってきたタバコと飲み物が、その日のうちになくなる。
アスファルトの上に這い出たミミズが、その日のうちに亡くなる。
壁に掛けられた手持ち花火の、パッケージに書かれていた言葉。
「煙が出にくく、スマホで撮りやすい」
誰かが何かを選択するその連続で、世界は回っている。
つまらない売り文句を考えた奴と、それを採用した人間がいる。土の中から出てみようと考えたミミズがいる。子供を車内に残した親がいる。甘い球を投げて泣いた球児がいる。
我慢できず最後の一本に火を付けた俺もいる。
それら全てが間違っているが、それでも世界は回っている。
脳内に、誰しも神を飼っていて、死んだミミズに神が言う。
「お前が生前選ばなかった、別の未来を見せてやる」
後悔と安堵を繰り返し、最後に見たのは道端で、乾いて固まった自分の死骸。それを見てミミズは。
「ま、魚のエサにされなかっただけマシか」
と呟き、海の底のような深い眠りにつく。
どんなに最悪な選択を選び続けていたとしても、世界を回し続けなければならない。
君の死後、神が現れてこう言うかもしれない。
「お前の生前の選択はひどいもんだ」
それでも、自ら死を選んだミミズ未満の奴らよりマシだと、胸を張って言ってくれ。
どんなに辛く、無謀で、笑えない、退屈な日々を送っていたとしても、選択することを止めず、世界を回し続けてくれ。車内に置き去りにされ、物心もつかぬまま強制的に死を選ばされた子供が、そう言っている。
夏。空になったタバコを補充するため、もう一度コンビニへ向かう選択をし、今日も世界を回す。どれだけ煙が出たって良いから、燃え尽きるまで生きていたい。