近所の桜めぐり

外を歩けば、これでもかと咲き誇る桜を目にする。自分のお部屋から見える桜、お隣さんのお庭に佇む桜、裏のおばあちゃん家にある立派な桜、山を彩る少し白っぽい桜。桜は、春の始まりを告げるファンファーレのように華やかに、今日という一日を彩っている。

こんなに桜に囲まれていると、他の桜たちの様子も気になってくる。天気も良いし、近所のお菓子屋さんで桜餅の張り紙が出ていたような。これは出かけるしかないだろう。私はスマホと桜餅代だけをポケットにしまい、歩いて行ける範囲の桜を見に行くことにした。

まずは川の桜並木。大学の入学式の帰り、母と写真を撮った思い出のある場所だ。小さい子を二人連れた家族や、お仕事帰りに見えるお兄さん、老夫婦など、私の他にも何人か見に来ていた。記念の写真を撮って、舞い落ちる花びらキャッチゲームを楽しむと、ちょうど一往復し終え、私は次の目的地に進んだ。

次に目指したのは、山と山を繋ぐ橋だ。ここには桜の木はないが、町の様子が一望できるため、一度にたくさんの桜の木を見ることができる。冬の間はモノクロだった世界が、今は緑とピンクに染まり、足元にはたんぽぽやスミレが咲いて、生き生きとした雰囲気をまとっている。花粉症の人には申し訳ないが、私は春が大好きだ。

橋を渡り終えた私が向かったのは、お寺と神社だ。この組み合わせがむず痒いと感じる人もいるかもしれないが、今回の目的は桜めぐりなので許してほしい。お寺には立派な桜の木が二本並んでおり、それらは仏様がちょうど桜を楽しめる位置に生えている。神社の方は、鳥居を囲うように桜の大木が二本、その後ろに小さな木が二本生えている。お参りに来た人達が歓迎されているかのような配置は、入口に相応しい雰囲気だ。

最後に向かったのは、小学校だ。私も通ったこの学校は、グラウンドと校舎を囲うように桜が植えられ、そよ風に誘われた花びらたちがひらひらとダンスを踊っていた。中に入って鑑賞することは出来なかったが、外からでも十分美しい桜を見ることができた。赤いランドセルを背負い、緊張と期待に満たされていたことを思い出す眺めだった。

思いつく限りの桜スポットを周り終え、家路に着くと、体いっぱいに春を感じた満足感で猛烈に眠くなってしまった。本当は桜餅を買って、公園でお花見するか、お家で写真を見返しながらいただく予定だったが、お菓子屋さんに行くことは断念し、暖かい春の午後をお昼寝に費やしたのだった。

圧倒的な春の美しさを見せてくれた桜は、数日後には儚く散ってしまうことだろう。移り変わる季節は名残惜しいものだが、今を楽しむ心を教えてくれる先生は、これからもきっと素晴らしい景色を見せてくれるに違いない。私はそれを見落とさないよう、日々を大切にしていきたい。

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