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原発の発電コストは安いらしい。これは本当であろうか。

コスト面において原子力発電は優位性があるから原発を再稼働すべきである。
せめて燃料高騰に対して繋ぎとして原発再稼働をするのが現実的。

賢らにそう喧伝する人がいた。
福島の事故を経てまだ終息もしていないのにそう口にできるのだから、彼らは何を見ているのかわからないし、ろくに考えてもいないのだと思う。
それだけならまだいい(よくはない)。
原発反対派を感情的、ヒステリーだと揶揄するような言い振りであった。

その人の主張の問題点を列挙する。

まず原発反対はコスト面だけの問題ではなく、安全面や事故が起こった際のリスクを考慮しているという点。確かにコストは重要であるが、原発に限ればコストだけを価値判断基準にするのは問題の矮小化、単純化であり、愚考であろう。

次に、原発を電灯のスイッチのように、すぐにオンにしてすぐに問題なくオフできるような代物だと考えている点。そんな便利な装置ではない。現実が見えていないとしか言いようがない。

そして、原発についてコストは、おそらく政府発表のものを見て判断だと考えるが、それを全く批判的態度を取らず鵜呑みにしている点である(理解できているかも怪しいが)。自分は優れた現実主義であると思い込んでいる愚かな権威主義者に過ぎない。そもそも原発に限った話ではないが、科学とは批判的態度が重要である。まして原発は、政府が推進した事業であり、福島の事故のように公害問題が大きく絡んでくる。公害では所謂大本営発表と御用学者の主張とそれを盲信する民衆が走狗となり被害者を苦しめたことは忘れてはならない。つまりは原発については特に慎重に批判的にデータは見なくてはならない。

加えて、個人的な問題点となるが、それはその人に対して、割と優しめに質問したのだが、「反対ありき」の主張は受け入れられないと対話を拒否された。その狭量な考え方故、自分が賢いと思い込みコストだけで原発再稼働を求めるような馬鹿になってしまったのだと思う。私をソース読んでない扱いもしていたし、その人の中では2022/3時点で浜岡原発は廃炉済みらしいし、勉強不足も良く目立つ。そもそも

原発は発電コストが安い。

これは本当であろうか。

原発の発電コスト(政府発表)

基本的に下記の記事で説明した莫大なコストの項の詳細を示すだけである。

まず、原発のコストについて政府発表の画像を示す。

2015年、「総合資源エネルギー調査会 発電コスト検証ワーキンググループ」より

左端が原発であるが、一番発電コストが安いように見える。
そりゃあ原発の推進のデータである。少しでも有利なように見せたいのは当たり前だ。だがこのデータには問題がある。そもそも「原発コストを考える」のサイト自体変な喩えを用いたりして読みづらい、わかりづらい問題があるが、ここではそれは置いておく。

現実的不可能な前提条件

試算では更地に発電所を新設したと仮定するモデルプラント方式を採用した。
設備容量120万kWの原子力発電所が、設備利用率60%・70%・80%で、40年あるいは60年稼働した場合という複数のケースを想定して計算した。

とある。だが日本の原発全体の設備利用率は現在20%台であり、そのまま各原発の設備利用率に換算することはできないものの、現実と解離した値を試算の指標に持ってくるのも不適当であろう。

また「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」2013 年7月の改正により、原発の運転期間は使用前検査に合格した日から起算して 40 年もしくは20年を超えない期間延長できるとされる。
現在、原発は新設されていない以上、40年または60年稼働するという仮定自体が現実的ではないのだ。

発電の費用

発電の費用の内訳についても問題がある
原発の発電の費用は、
①発電に直接要する費用(燃料費、減価償却費、保守費用等)
②バックエンド費用(使用済燃料再処理費用、放射性廃棄物処分費用、廃炉費用)
③国家からの資金投入(財政支出:開発費用、立地費用)
④事故に伴う被害と被害補償費用
に大別される。

ここで①の直接の費用について、電源毎の発電単価の実績は
1970-2007年にかけては原発8.64円/kWhであることがわかる。
火力9.80円/kWh、水力7.08円/kWhであり、
特段安いという訳では無いことがわかる。

また指摘したいのが③の政府の資金投入費用である。
原発は周知のとおり、立地に多額の補助金が使われている。
一般会計エネルギー対策費の殆どが原発に関連に用いられている。
電源三法の交付金交付額も約7割が原発向けとなっている。
財政支出単価を考慮すると、開発・立地を含めて
原発の実績は2.05円/kWh(火力は0.1円/kWh、水力は0.18円/KWh)となる。

これらを総合すれば、原発の単価実績は10.68円/kWh、火力9.90円/kWh、水力7.26円/kWhとなり、むしろコストは高くなることがわかる。
原子力政策は優遇措置を受け続け、電力料金を通じて支払われている電源開発促進税をし財源とする財政コストも考慮すれば、最もコストが高く、消費者の負担が大きいことがわかった。

これは事故が起こらないと仮定した場合でもそうなのである。

また2022/3に岸田総理が原発に専従警備隊を設置することを呼びかけたが、勿論原発のコストはこれにより増大することになる。

バックエンド費用推計の問題

さらに問題なのが、②のバックエンド費用、再処理コストの推計が困難なことである。
バックエンド費用推計の問題点として
①バックエンド事業の範囲に対象外が多く含まれること
②費用推計の不確実性(具体的計画がないなど)
③仮定と実績の解離(再処理工場の稼働率を100%と仮定している(実績は60%程度)など)
があげられる。

よく放射性廃棄物の最終処分として、ガラス固化体があげられる。

が、確立した技術ではないし、現に作業中止に予定見直しを余儀なくされている。

そもそも最終処分場も決定している訳では無い。
このように原子力業界は、将来の技術革新や未確定事項をさも当たり前のように予定に組み込んでいる。
無責任に将来に負担を強いる業界
と言える。

事故の負担について

このように、事故が起こらないと仮定しても、原発は高コストの発電方法だとわかる。
だが原発において避けて通れないのが、事故の危険性である。
火力発電、水力発電でも大事故は起こり得るが、福島の事故のように11年以上も終息せず国土が使えない状況になるなどの原発事故の比ではないのは明らかであろう。

原発を管理していた東京電力においても同様だ。
東電の原発の事業報酬は3兆9953億円(1970-2007)とされている。事故費用はこの報酬を上回る可能性もある。わりに合わない電源だと言える。

また被害は全て救済されるわけではない。
賠償能力の限界は勿論。
環境への影響、健康被害、被曝の影響、住み慣れた土地を離れること、日本の信頼の失墜など、貨幣換算できない、しにくい被害も沢山ある。

原発はそうしたリスクを抱えているのである。

まとめ

これらよりコストだけで賢らに原発推進、再稼働を訴える人がいかに無知で愚かで現実を全く知らない馬鹿かということだ。
また原発業界は無責任に将来に負担を丸投げする業界であること。資料を批判的視点で考察する重要性はご理解いただけたかと思う。

よってコストだけでも私は原発反対を訴える。

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