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糖質制限ダイエットの落とし穴

皆さん、こんにちは。
スポーツ栄養を専門に活動している管理栄養士の吉村俊亮です。

今回から全2回で糖質制限を用いたダイエットについて書いていきたいと思います。
ご興味のある方は是非読み進めていただけると幸いです。


日本人の食事と人の体を構成する栄養素

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現在、糖質制限ダイエットは一時期よりも過剰な報道が減り、過度に行う方は少なくなってきた印象ではありますが、まだまだ過度な糖質制限をする人を見かけます。
糖質制限についてのメリットやデメリットを正しく理解した上で、正しく行っていただけると幸いです。

糖質制限ダイエットについて考えていく前に、まずは日本人の食事と体の構成成分について書いています。
厚生労働省が策定している『日本人の食事摂取基準2015年版』では、日本人の食事の理想的な栄養素のバランスは摂取エネルギーに対して、たんぱく質が13%以上、脂質が20~30%、糖質が50~65%内に収まることが望ましいとされています。

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この『日本人の食事摂取基準』は、国民の健康の維持・増進を図る上で摂取することが望ましいエネルギー及び栄養素の量の基準を示すものになります。
つまり、上記の栄養バランスで摂取することが健康を維持・増進するためには良いですよと国が言っています。
それでは、人の体を構成している栄養素を見てみましょう。
人の体を構成している栄養素(水分を除く)は、たんぱく質が45%程度、脂質が40%程度、糖質が約1%程度、残りがビタミンやミネラルと言われています。

食事と体を構成する栄養素を比べたときに、本来なら一番多く摂取している糖質は、体の中には一番蓄積慣れない栄養素だということが分かります。これは、摂りすぎた糖質が脂質に変わるため、糖質として体に残ることがほとんどないからということもあるのですが、糖質は適正量摂っていれば体には蓄積されずにエネルギーとして利用されます。


糖質制限の最大のメリット

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糖質制限の最大のメリットは何といっても短期間で痩せられることではないでしょうか。
では、なぜ糖質を制限することで体重は減りやすくなるのでしょうか?
それは単純に摂取エネルギー量が極端に減るからです。上記でも少し書きましたが、日本人の食事は1日の摂取エネルギー量における糖質からのエネルギー量が50%以上はあります。1日に2,000kcal摂取している人であれば、1,000kcal以上を糖質から摂取していることになります。この糖質のほとんどをカットすれば単純に摂取エネルギー量が減るため、体重も減りやすくなります。
また、糖質をカットする代わりにたんぱく質食品を多く摂ると言われたりもしますが、たんぱく質は食事誘発性熱産生(摂取した栄養素が体内で代謝される過程でエネルギーの燃焼がおこること)が約20%と非常に高く、糖質と比べても約4倍程度の消費量があるため、体に蓄えようとするエネルギー量は実際に摂取しているエネルギー量よりも低くなります。


糖質制限を長期間続ける人の経時的変化

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このように糖質制限は短期的なダイエットとしては、効果も期待できるため、時と場合によっては1つの方法として良いかと思います。
しかし、糖質制限をおこなう人の中には、長期間おこなう人もいます。そういった人がよく言われるのは、『食事も全然食べていなくて、運動も毎日しっかりしているのに痩せない。』ということです。ひどい人は痩せないどころか徐々に体重が増えていっているという方もいます。
これはダイエットがエネルギー収支の問題以外から大きな影響を受けているからです。
食事からの摂取エネルギーが少なくなると、相対的にすべての栄養素の摂取量が少なくなります。
エネルギー代謝に関係している栄養素で言えば、糖質、アミノ酸(アミノ酸に関しては足りている方は多いです)、水溶性ビタミン(B₁、B₂、B₆、B₁₂、ナイアシン、葉酸、ビオチン、パントテン酸)になります。これらの栄養素は身体を動かすためのエネルギーであるATPの生合成に大きく関わるものです。
こういった栄養素の不足が、いわゆる「身体の省エネモード」を起こし、うまくダイエットが進まない要因になります。
糖質制限を行う際は、アミノ酸と水溶性ビタミンの不足が起こらないように食事の内容を考えることも重要な要素です

次回は、糖質制限ダイエットのデメリットと正しい方法について、書いていきたいと思います。