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夏合宿に意識したい3つのこと

皆さん、こんにちは。
スポーツ栄養を専門に活動している管理栄養士の吉村俊亮です。

気温も高くなり、多くの選手が競技スキルや基礎体力の向上、チークワークの強化のために「夏合宿」をする時期となってきました。
今年は新型コロナウイルスの影響で合宿ができるチームは少ないかもしれませんが、、、

合宿中は監督やコーチが選手と一緒に過ごせるため、食事の際に選手がどれだけ食べられるのかをチェックすることもしばしばです。
それゆえ監督やコーチが昔取り入れたことがそのまま選手に当てはめられることもあります。

そこで今回は、夏合宿にありがちな食事や練習の決まり、慣習のなかで特に注意してほしいものを解説していきます。

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➀** 練習後にご飯を3合??**

合宿の際、「練習後にご飯をたくさん食べる!」と決めているチームもあるかと思います。
実はこれは、多くの選手にとってあまり意味がないものなのです。

スポーツ選手にとっての食事は、身体を大きくすることや疲労を回復することが主な目的ですが、夏の練習後の選手の身体は、強い日差しや高い気温による体力の消耗や体内水分量の不足が起っている状態です。
また、練習後に食欲を感じないときは、胃腸の機能が低下していることが多いです。

こんな状態のときに、無理にたくさんのご飯を食べさせても効率良く消化吸収ができず、栄養補給をすることができないのでたくさん食べてもあまり意味がありません。

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練習直後の食べ物と通常の食事を使い分けよう**

練習後の食事のタイミングによる疲労回復の違いについては、練習後30分以上経過してからの栄養補給では数時間後に摂取した場合と比べてあまり大差がないという研究データもあり、練習直後に摂取ができない場合、素早い疲労回復効果を期待できません。

いくら合宿とはいえ、練習直後に食事が摂れるということはほぼないと思いますので、練習後は無理に食事を摂らせずに、スポーツドリンクや果物ジュースなどの糖質を含むドリンクやエネルギーゼリーなどの消化吸収が少しでも楽なものを活用し、練習後1~2時間後に適度な量の食事を摂るようにすると良いです。

また、選手が食べられる食事量の上限以上に食べさせようとすることもあるようですが、これは選手にとってマイナスになることばかりです。
嫌な思いをしながら食事を摂ることで、食事に対する抵抗感が増し、食に対する興味が無くなってしまいます。
合宿から帰ってきて、数日間食事量を減らす選手すらでてきますので注意が必要です。

もちろん、練習直後に食事をしっかり食べられるという選手であれば、摂るに越したことはありませんので、わざわざ時間を置いたり、食事量を減らしたりする必要はありません。

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➁** 水分を摂らせない??**

最近では、練習中に水分を摂らせないという指導者の方々は少なくなり、水分補給についての正しい理解が広まりつつあるように感じます。
あとは、もう少し踏み込んだ知識が広まっていくとより良いかと思います。

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たった4%の水を失うだけで命の危険も**

人は身体の60%が水分から構成されています。
汗をかくということは、身体の構成成分を失っていっているということです。
体重の2%の水分を失うと脱水が始まっている状態を差し、パフォーマンスの低下が起こります。
体重の4%の水分を失うと、命の危険にも繋がりかねません。

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夏は15〜20分の間隔で水分補給**

パフォーマンスを低下させずに、効率よく練習ができるようにするためには、汗をかく量にもよりますが、基本的には練習15~20分ぐらいの間隔で水分補給をする時間を作り、1回の水分補給量を200~250cc程度を目安に摂ると理想的です。

練習メニューの組み立て上、水分補給の時間を摂るのが難しいという場合は、選手たちがいつでも自由に水分補給ができるように、練習場の各所に水分補給ができるようにボトル等にドリンクを入れて置いておくとよいです。
※コロナウイルスの感染予防として、回し飲みをしないような工夫は必要です。

最適なパフォーマンスを出せる状態で練習ができなければ、最高のトレーニング成果をあげることはできませんので、是非お試しください。

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➂** スポーツドリンクはダメ??**

たまに耳にするのが、練習中に水分補給はしているけれど、水分補給は水かお茶というチームです。
しっかり水分補給をしているのだから良いじゃないかと思われがちですが、汗をかくことで失われるものは水分だけではありません。
汗にはナトリウムやカリウム、マグネシウム、鉄など身体を正常に動かすためのミネラルも含まれています。

汗をかくということは、水分と同時にこのようなミネラルも失っています。
このときに水やお茶といったものだけで水分補給をしていると、正常よりも血液の濃度が薄まってしまい、身体がもとの血液濃度に戻すために、汗として身体の外に水分を出してしまいます。

水分補給をしても、これを繰り返すことでいつまでたっても正常に戻らず脱水状態が続くことを自発的脱水と言います。

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甘いもの=マイナスではない**

甘いもの=スポーツ選手にとってマイナスになるといった印象をお持ちの方はまだまだいます。

しかし、甘いものが必要なときもあります。

練習中の水分補給などは水やお茶を飲むよりも、スポーツドリンクを飲んだ方が効率的です。
汗で失われるミネラルの補給だけではなく、動くために必要なエネルギーの補給になります。

ただし、スポーツドリンクを日常的に水の代わりとして飲むということはオススメしません。
余分なエネルギーの摂取に繋がり、体脂肪の増加に繋がります。

同じ飲み物や食べ物でも、時と場合によりプラスの効果をもたらしたり、マイナスの効果をもたらしたりします。

この場合は良くて、この場合はダメといった食教育をしっかりとおこなうことが必要です。

食習慣の基礎は幼児期にでき、学童期には完成します。
なるべく早い段階でのアスリートのための食教育をオススメします。

基礎体力や競技スキルの向上という目的のために正しいアプローチをしていきましょう。