身近なエスカレーター、速度が違うその理由とは
皆さんはエスカレーターに乗った時、速度の違いを感じたことはあるでしょうか。
普段何気なく乗っているエスカレーターですが、その速度にはどんな工夫がなされているのでしょうか?
実際に乗降してみることで見えてきたことや、その速度について今回はお話させていただければと思います。
早速実際に乗ってみました!
2022年4月現在、日本では約7万3000基のエスカレーターが稼働しており、皆さんの生活インフラになっていることは言うまでもないですよね!
(日本エレベーター協会「2020年度昇降機設置台数等調査結果報告」より引用)
駅や商業施設など設置場所は様々で、階層の移動手段としてとても便利な乗り物です。
ところで、皆さんはエスカレーターに乗ってから降りるまで、だいたい何秒くらい乗っていると思いますか?
弊社最寄り駅の東京メトロ新宿御苑駅には、新宿門方面改札側にある出口1に長さの異なるエスカレーターが2台(下記写真2枚)あります。
階段の横に、ひとり分ほどの幅で上り下り両方設置されており大変便利なエスカレーターです。(筆者もいつもお世話になっています。)
実際に乗降し、秒数を測ってみました。
長いエスカレーターは約20秒で、短いエスカレーターは約10秒でした。
乗ってから地上に上がるまで約35秒ほどでしたが、もっと短く感じました。
測ってみると、エスカレーターに乗っている体感時間と実際の時間が違うことに驚きました。
その際ふと、エスカレーターの速度は一体どれくらいなのか気になってきました。
皆さまも普段の利用の中で特に意識されるかたは少ないと思いますが、調べてみるとエスカレーターも「乗り物」なので、当然のように運転速度が設定されているのです。
では車やバイクは、その道の法定速度にしたがって運転をしなくてはいけませんが、エスカレーターの速度はどのように決まっているのでしょうか。
定められたルールとは
国土交通省告示により定められている速度は以下図の通りです。
(平成12年5月31日建設省告示第1417号建築基準法施工例より引用)
(建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第百二十九条の十二第一項より引用)
エスカレーターの速度は傾斜角度によって制限が決められております。
一般的には分速30mが標準速度と言われており、傾斜角度は30度が主流です。そうしますと、平均的なエスカレーターは時速換算すると1.8㎞/時になります。
ちなみに余談ですが、日本で最も急な坂はどこでしょうか。
それは大阪府と奈良県をまたぐ暗峠(国道308号線)と、東京都東大和市にある狭山丘陵付近の坂です。
下記の写真をご覧ください。
見てください、この急勾配を!
もはやどちらも絶壁のように見えますよね。
その角度は「約20度(最大勾配37%:10m進むと角度が37mあがるという意味)」で、写真を見て分かるように、上り下りするのに一苦労しそうですよね。
そのためか暗峠は道路に自動車のスリップ防止加工がされていたり、東大和市ではそもそも自動車の通行が不可能にしてありますね。
しかし、エスカレーターの角度は30度が主流なので勾配がなんと58%ということです!
上記でご紹介した日本一の急勾配の坂たちよりも、さらに急なのです。
以上のことを踏まえると日々急な角度で私たちを輸送するエスカレーターの技術力は大変素晴らしいですよね。
なぜエスカレーターの速度は施設によって違うのか
では、なぜエスカレーターによって速度を調整する必要があるのでしょうか。
ただ上記にあげた基準は、この速度制限内であればエスカレーターによって速度を変えることに問題はないということです。
エスカレーターはその基によって、決まった速度でしか稼働できないものもありますが、速度調整をできるものがあり、エスカレーター所有者の判断で速度を決められます。
例えば、通勤通学の時間帯にとても混雑する駅であれば、エスカレーターの運転速度を上げて輸送効率を高めます。逆に病院など高齢者の利用が多い場所では運転速度を下げて、移動速度よりも安全に利用してもらえることを優先するのです。
もし皆さんがエスカレーターを利用した時に速度の違いを感じたならば、そのような配慮がされているということでしょう。エスカレーター速度の違いは誰もがより安全に、より便利にエスカレーターを利用できるように工夫された証なのです。
しかし、この工夫も乗降者が速度の違いに気づかず乗り込んでしまえば、危険な状況に陥ることも考えられます。エスカレーターの速度が問題なのではなく、乗降前に想定していた速度と違うことで身体のバランスを崩しやすくなる可能性があります。
エスカレーターの速度を調整する場合は、乗降者が事前にスピード感を把握できる工夫や、乗降時にタイミングが取りやすくなる仕組みを施すことで、事故を防げると弊社は考えます。
エスカレーターは様々な人が乗降するものです。
誰もが安全に利用するために、エスカレーターの安全対策に対する取り組みが増え、人々が安全への意識を強くしていくことが、バリアフリーな社会が広がるひとつのきっかけになるのではと弊社は考えております。
最後までお読みいただきありがとうございました。
紹介した写真の引用元
にほんいち.com WEBサイトより
ねとらぼ WEBサイトより
TRIP’s WEBサイトより