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社長。それって「利用契約」じゃないですか?~失策のオフィス選び~


貴兄のみなさま、こんにちは。ベンチャープロパティの宇田川(@vp_udagawa)です。withコロナの時代を満喫しておりますでしょうか。

このコロナの影響で数多くの企業が縮小移転に走ったことは様々なメディアでとりあがったので知っている方も多いと思いますが、その移転先の選定によって経営危機に陥ってしまう企業があることをご存知でしょうか?
今回はクライアントから聞いた失敗談をもとにお話をしていきたいと思います。

今回その失敗のキーワードはタイトルにある「利用契約」にあるのです!

コストダウンは正義?

さて、みなさん。オフィスって何なんでしょうかね(哲学)
もちろん会社によってその定義は違うでしょう

生産活動を行う場?

採用活動を有利にするための環境?

社内文化を創り出すコミュニティ?

社員のための第2にふるさと?

企業によってその在り方は様々です。
しかし共通して言えることは企業のなんらかの目的を叶えるために毎月安くない費用をオフィスに対してコストにかけている事実があります。

その中でwithコロナの時代ではテレワークの導入が本格的に進んだことによってオフィスの在り方に変化がみられてきました。

特段目立つようになったのは、「オフィスはコストであり、削減できる対象である」という考え方です。

コワーキングやシェアオフィス

その「オフィスはコストだ」という考え方をもとに移転先を選ぶ企業が増えてきたのですが、必然的にコワーキングスペースやシェアオフィス、またはサービスオフィスなどの比較的費用が掛からずフレキシブルにオフィス移転ができる場所に注目が集まりだしてきました。(坪単価は高い)

この厳しい時代ですから、これ、決して間違っているわけではないのですが、デメリットにまったく気づかず移転してしまう企業が多く、それによってつまづいている企業が増えてきました。

賃貸借契約と利用契約

さてやっとこさ、ここで利用契約とはなんぞやをお話ししていこうと思います。

賃貸借契約はみなさんも聞いたことがあると思います。不動産の貸し手と借り手の間で結ぶ賃貸の契約です。
賃貸借契約は日本の「借地借家法」というれっきとした法律のもとに定められているものになります。
何が言いたいかというと、入居者の所在地としてとても「しっかり」した法律の下の契約になります(笑)。
一般的に企業がオフィスとして契約する際に結ばれる契約です。


では、利用契約とはどうでしょうか。
利用契約(規約)とは賃貸借契約のようにバックボーンに専用の法律がありません。この利用契約というのは文字通り利用の契約、すわち利用にあたっての条件、規則、約束事が記載されたものです。 法律的には民法上の契約となります。
これ実は借り手はとても弱い契約になります。基本的には貸し手のための契約であり、借り手は入居者としての地位の保護を受けにくい状態になります。

コワーキングスペースやシェアオフィスは利用契約に基づく契約が一般的です。

4つの障害

利用契約でありコワーキングスペースやシェアオフィスであると会社経営の上でどんなデメリットがあるでしょうか。大きく4つの障害をあげることができます。

①セキュリティ面を強化できない
②銀行融資やエクイティ調達などの障害になる
③上場企業との取引がしにくくなる
④事務所要件のある業種では要件が通らない

①セキュリティ面を強化できない

非常にシンプルな話で、共有した部分の多いスペースではハード、ソフトといった点でもセキュリティ面の強化が難しいです。物理的なセキュリティもそうですが、共有回線などのインターネットのセキュリティも含め手を加えることが難しいのです。

備え付けのセキュリティだけで問題なければよいのですがIT系、金融系などの業種はセキュリティ関係で気を付ける必要があります。

②銀行融資やエクイティ調達などの障害になる

今回クライアントから聞いた失敗談はこちらです。資金調達です。
オフィスの固定費を減らすためにコワーキングスペースに移転をしたところ、進めていた銀行融資が「所在地が不適格」という理由で頓挫してしまったというのです。一部のVCでも賃貸借契約のないオフィスには出資をしないと決めているところもあるとのことです。

特に銀行に関しては、所在がコワーキングスペースやシェアオフィスであると融資実行を拒むケースが多いです。これはマネーロンダリング、検犯罪収益移転の観点で悪用されやすいためだからと言われています。

③上場企業との取引がしにくくなる

資金調達だけではなく、取引にも影響がでてきます。

たとえば上場企業との取引になると、取引先として問題がないかデューデリジェンス(DD)が入ることがあります。このDDの際に不信感を持たれることで取引そのものが出来なくなる可能性があるのです。

④事務所要件のある業種では要件が通らない

こちらは業種によりますが、例えば不動産の宅建業者や人材紹介・派遣、または旅行業などの許可が必要な業種には「事務所要件」というものが存在します。この要件を満たすにはコワーキングスペースやシェアオフィスでは通らないケースが多いです。

上記の4つの観点か見てもわかるように、日本社会から見る企業のオフィスとは”信用”そのものであるともいえるわけなのです。

メリットデメリットを知ったうえで選択する

最後に、僕はコワーキングスペースやシェアオフィス、サービスオフィスなどの利用契約物件を決して否定しているわけではありません。
またそれらの種別だとしても賃貸借契約で締結出来たり、信用性を損なわないオフィスが存在するのも事実です。当然経済的なメリットは圧倒的ですので、一時的な避難場所として使う企業もいるでしょう。
しかしながら日本社会において所在地というのはとても大切にされてきた文化があります。
その文化があるということを考慮して、メリットデメリットを理解して、オフィス選定は慎重にして行う必要があるのです。

「所在地とは信用の証である。」ということを本記事で伝えることが出来たらなと思っています。

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