指を切っても金曜日は楽しみたい。

指を切ってしまった。
金曜日の晩酌用にと豚バラブロックを切っていたところ
爪ごとスパッとやってしまった。
半解凍だったので力を入れすぎて変な方向に包丁が進んでしまった。

豚バラブロックとセセリを焼いて、ほりにしとレモン汁をかけて
金曜の夜を楽しもうと思っていたのに。

包丁で指を切ったことなんてたくさんがあるが、
爪ごと切ってしまったことにかなりびっくり。
急いで水を流して手を洗う。

怖くて傷口をしっかり見られなかったが、
ぱっと見た感じ、かなりぱっくりいっている気がする。

こわい…
金曜日というのになんでこんな目に…
ショックを受けながらも、
しっかり定期的に研いでいる包丁の切れ味に感心もした。

妻が私の悲鳴を聞いて駆けつけてくれた。

かなり心配して、応急の手当をしてくれた。

ああ、なんて安心するのだろう。
この出来事、きっと一人だったら泣いていた。
そして、何をどうしたらいいか分からず、その場でしばらく
立ち尽くしていたんだろうな。
こんな情けない姿にさえ、心配して駆け寄って、
寄り添ってくれる存在が暖かすぎてそれはそれで泣きそうになる。
結婚してよかったと、しみじみ思う瞬間だった。

傷が深そうだったので、夜間診療を探していくことに。
調べると割と近いではないか。
片手を負傷したひどい状態でも、人間はスマホで調べ物ができる。
なんでも情報が得られるなんて、なんか、やりすぎじゃないか?

すっかり寒くなった夜の空気が、傷口をズキズキ圧迫していく。
めっちゃくちゃ痛い。怪我をすると冷やすのは鉄則だが、冷たすぎると逆に痛い。むしろ悪化させてんじゃないのと思うくらい。

ようやく診療所につくと、「外科」の二文字がない。

「どうされました?」と受付のメガネの若いお兄さんが声をかけてくれたが、指を押さえている自分を見て、すでに察したようだった。
「指を切っちゃって…」

「あ、ここでは診れないんですよ。外科ならここですね」
渡された紙には、交通機関の乗り継ぎが必要な地域。
今のメンタルでは、とてもじゃないが行く気になれない。

「わかりました。ありがとうございます」とだけ振り絞り、
その場を後にした。

その頃には、もう何もする気力がなくなり、
「今日一日我慢して、明日の朝行ったら?」という妻の提案を飲むことにした。
薬局で消毒液とデカ目の絆創膏、包帯を買って帰宅。

絆創膏と包帯を巻いたら、かなり痛みが落ち着いて、少し気を持ち直した。
妻からも「なんか、顔が元気になったね」と笑われた。

元気になったついでに、晩酌準備の再開。
調理は妻に頼み、夫婦でお酒を飲んだ(たぶん、ほんとはダメだけど。)

金曜の夜は、なんとしてでも楽しみたいのだ。

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