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野菜の規格の正体 〜農家も勘違いする規格ってなんなの?規格外って何?〜

規格とは何か

始めに規格とは何かの結論を
これはもうわかりやすく、青果売買契約における条件の1つです。それ以上でもそれ以下でもないです。支払サイトや納品場所の指定と何も変わりません。
ではなぜただの売買契約の条件が事更に取り上げられてしまい様々な誤解を作り出すのでしょうか?今回は生産、小売との直販営業、JA出荷での市場出しや加工業者取引、飲食取引など数々やってきた経験から紐解きます。

規格に対する誤解

①規格はJAがきめている
②規格は市場規格ただ1つである
③規格外という言葉
④規格外は安い

これらについて個別に誤解を説明していきます

①規格はJAが決めている?

これは良くある勘違いで規格はJAが決めるわけではありません。まず市場とは何か、市場とはどういった人が使うのかを考えてみましょう。
市場は全国から農産物が集まります。そしてそこへ買いに来るのは様々な職業の人です。スーパーなどの小売り、小売りに卸す仲卸、飲食店の方、飲食店に卸す仲卸の方、加工メーカーへ卸す仲卸の方等々上げればきりがないです。そんな市場で様々な人が安心して買えるシステムが
規格です
基本的に市場もJAもそもそも農家の野菜を買うわけではありません。(一部例外はある)
あくまでも農家と購入者の仲立ちをしています。そのため本来的に市場とJAは規格なんか究極的にはどうでもいいのです(笑)

JAは事務営業を生産部会から委託されてるだけです

しかしJAは農家の商品をより高く売れるようにしていく事が仕事です。
同様に市場は来た荷を売り切り10日以内にお金を農家(JA口座を使いますが)入金しなければなりません。そのためどうすれば多様な購入者に買ってもらえるか?というところで生産者の代表である生産部会、間を取り持つJA、販売仲介する市場が実需者との話し合いを長い年月積み重ねたうえで規格が決まっていきます。
決してJAがこうせい!というような話ではなく

より高く売るための手段、農家所得向上の手段
ただそれだけです

キャベツで言えば満杯詰め(左右にゆすってキャベツが動かない事)、1箱10kg以上で Lなら玉数8玉、2Lなら6玉みたいな感じです。病気や虫食いが無ければ秀品(A品という地域もあります)、何かしら問題があるけど可食問題なければ優品(B品という地域もあります)

L玉8玉で10kg以上、左右にゆすってもキャベツが動かない事が条件です

買い手としてはこういった規格があると非常に安心感ありますよね。
安心感があるからお金を計算できるわけです。そして安心感が信頼を呼び信頼があるから高く買えるわけです。
市場のキャベツでひどい話があります。
なんと上記の写真のようなキャベツ8玉のうち4玉が腐ってるキャベツを入れてくる生産者も居ます。
例えば8玉を1200円で買うと、1玉は150円が仕入になりますね。
198円~238円で売ろうというのが小売りの考えになるかと思いますが、半分腐ってたら実質仕入れ値は300円になってしまい赤字になりますね。
こういう規格を守れないダメな生産者は買う側も覚えていますので、買い手が着かず、市場が仲卸にお願いして捨て値で買ってもらった上で廃棄処理にしたりします。流通コストがかかっているのに、農家の意識が低いために廃棄コストがかかる最悪の事例です。
こういうことが無いように規格を厳密に守らせる生産部会はどんどん信用が増し、ロスがあるかもしれないキャベツを1200円で買うぐらいなら
絶対ロスが無い産地のキャベツを1400円で買ったほうがトータルで徳
みたいに買い手が考えます。

②規格は市場規格ただ1つである

これはむしろ農家側の認識不足で拡散されている感じはありますが、一般的に農家が言う規格というのは市場規格であることが多いです。しかし規格とは先に述べたように売買契約における条件の1つです。
そのため、売り先の数だけ規格があります。
とはいえ最大流通量である市場規格が全ての基本になっているということは否定できませんが、決して規格外=市場規格外ではないです。

例えばうちで出荷しているホウレンソウを例に出します
島根県ではホウレンソウと言えば市場規格は重量規格200gが最低ラインで松江の産地の方ですと300g1束を規格にするような場合もあります。

200gで入れているホウレンソウ 松江市のスーパーより

しかし東京のお店や全国的な大手量販店へ出荷するときにはgがわりと小さくなります。1袋で150gや120g、100gを指定されたこともあります。
これは島根県の場合1世帯に10人ぐらいいるような大家族がまだまだ多いのに比べ、都市部は核家族化、さらにいうと1人世帯が増えているのでそもそも200gのホウレンソウは多すぎていらないと判断されてしまうので、一食で食べきれる量を販売店が提案するためにこういった松江の市場規格とは大きく違う規格が形成されます。

また加工メーカーの場合はスライサーに入る大きさを求めてきます。食品加工の場合特に何回包丁を入れないといけないかで人件費が大きく変わってきますし、とにかく均一性を第一にします。
スライサーに入る大きさとはキャベツで箱に5玉(3Lで1玉2kg程度)、6玉(2Lで1玉1.8kg程度)サイズになります。加工用キャベツのお金の計算はだいたい重量計算なので農家としてはとにかく1株をでかく作りたいです。
kg単価63円を契約金額とすると
1.8kgなら113円ですが2kgなら126円になります
これを5000玉収穫すると65000円分売り上げが変わってきます。
しかしふふふ・・・それなら箱に4玉(4Lで1玉2.5kg程度)にすれば!
2.5kg×63円で157円!
5000玉収穫したら2Lよりも220000円も違う!バラ色!
みたいな計算をしますが、スライサーに入らないとちょっと・・・と言われ4Lはいらないみたいなことになったりします。
このように販売先との交渉で多種多様な規格があるので、自分の経営力や生産力にあった売り先を農家がきちんと行うことが大事です

ちゃんとしてる農家はだいたい捨てなくて良いように複数売り先を持ってます

③規格外という言葉

さて、ここまで説明してくるとじゃあ規格外って言葉は何を指しているのでしょうか?という疑問がわきます。

これはほとんどの場合
市場規格の規格外を指してることが多いです。

農家の側でも規格外=市場規格の規格外のことを言っていて、売れないみたいな愚痴が多いです。しかし販売先は無数にあります。そのため規格外という言葉を農家の側が簡単に使ってしまうのはどうかと思います。
やはり言葉には定義があります。規格外という言葉一つとっても様々な人で定義が違います。

そのため規格外という言葉の定義をもっときちんと表現したほうがいいのではないかという気がします。
少なくとも私は

規格外=売買契約が成立しなかった物

という認識です。②でも述べたように売り先により欲しいものは多種多様です。市場規格をはじかれた物=規格外という認識はJAを使った流通しかなかった時代の話しなので、いい加減農家の側もアップデートして話す必要があるし、農業外の人と話すときに特に気を付けて話す必要を感じています。そうしないとやれ

加工にして六次産業化すればいい!
飲食店に売れば買い取ってくれる!

みたいな話になりますが、そんなことはもうだいたいやってるわけです。やってやって売り切って、それでも業者がもう無理、これは無理買い取れないよ!となったから規格外品になるわけです。

④規格外品は安い

これは以前こちらできちんと経費計算していますのでこちらを参考にしてください。

かなり長文で青果規格について書きましたが青果規格を決めるにあたり本当に様々なことをみんなで考えています。

そして農家もJAも市場も仲卸も流通業者も小売などの販売者も

最高の野菜を、最高の品質で日本全国津々浦々まで届けたい
その思いで日々淡々と業務を行っております!

規格とはそういった我々生産からお客様まで届ける全ての働く人たちが考えに考え抜いたシステムの1つです。規格が悪かのような物言いをSNSで見かけましたが、そういった多くの人の気持ちや努力を踏みにじることになりますので、今回の記事をきっかけに青果規格というものをみんなで考える機会になりましたら幸いです。

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