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うちの場合は。 ⑧新幹線の食堂車

こうも家に居ろ居ろ言われると、インドアでも外に出たくなるし、普段寄り付かない実家に帰りたくなるし、ネットショッピングばっかりしてたのに春物見に行きたい!となってしまう。実際は社会に従順なのでしてないですが。

新幹線が好きなので出張も苦じゃないほう。でもその出張も禁止中。久しく乗っていないと恋しくなってくる。

出張に行き始めるずいぶん前に新幹線の食堂車がなくなってしまった。子供の頃はあの車両に乗るのが楽しみだった。母の実家がある広島に帰省するのが春休みと夏休みのわくわくイベント。行きはよいよい、お菓子ひとつと漫画一冊を買ってもらえるのがお決まりで、新幹線で静かに過ごさせる母の作戦だった。けれど帰りはいつも号泣していた。数日一緒に過ごした祖母と離れるのが悲し過ぎて泣いた。新幹線のホームまで見送ってくれたのがまたせつなくて泣いてしまうのだ。でもホームを出発してちょっと時間が経ったらころっと忘れるのが定番だった。なんだったんだあの涙は?と幼心に自分で思うくらい薄情だった。そして食堂車をぶらついたり、贅沢するときはカレーを食べたりなんかして、そんな風景がずっと心に残っている。

祖母がいなくなってからは滅多に広島に行くこともなくなってしまった。食堂車も効率化でなくなってしまったが、サラリーマンとして出張してたらわかったことだが、あんな贅沢な空間の使い方と手厚いサービスじゃそりゃ回転が悪く利益が取れない。今となっては記憶があるうちに食堂車を経験できたことに感謝である。

昔のあの移動しながらのんびりできる贅沢な感覚を、各鉄道会社が力を入れているお泊まりできる豪華列車でいつかのんびり味わいたい。


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