本当に大事な本当の国語
【はじめに】
日本語教育では日本語の文法の初歩は教えますが、文章の組み立て方はせいぜい起承転結くらいで終わってしまいます。
あとは、ひたすら物語の心情に対する感受性に関するものが多いです。
どうやったら自分の考えを相手に誤解なく伝えることが出来るのか?という点においては全くと言って良いほど教えません。
しかし生きて行く上でこれだけ重要な能力は他には無いと思います。
起承転結よりもよほど大事です。
【誤解のない文章の重要性】
例えば仕事をしているとしましょう。
誤解のない文章が書けない場合、
相手が部下であれば、指示した(つもりになっている)仕事は失敗します。
(そして成果が出ない)
相手が上司であれば、上司に指示された内容と違うことをしでかします。
(そして怒られる)
人との関わり合いにおいてだけではありません。
人は基本的に脳で考え事をする際に、自分の言語を使って考えます。
論理性の高さには言語の論理性が影響します。
【誤解のない文章の書き方】
誤解のないコミュニケーションを成功させるには誤解のない文章を組み立てる必要があります。
しかし、いきなり文章に飛躍して考えても上手くいきません。
物事には順序があるのです。
誤解のない単語を使う。
誤解のない文を組み立てる。
誤解のない文章を組み立てる。
この順序で積み上げます。
しかし何も特殊なことはありません。
【誤解のない単語を使う】
簡単です。
説明したい事柄にふさわしいベストな単語を選ぶだけです。
しかし、単語の正しい意味や、誤解されやすい単語があるので気をつけて選ぶ必要があります。
例えば「対策」
よく使いますよね。
災害対策とか、少子化対策とか。
対策という言葉を調べると
① 相手の出方、事件の様子などに応じて立てる処理の手段。 「 -を講ずる」 「 -をたてる」
② 〔策問に対こたえる意〕 律令制下の官吏登用試験。出題に漢文で答える試験、またその答案。
出典:大辞林より
https://kotobank.jp/word/対策-557057
②の方は普段使わないので置いといて、〜に対応するための策(手段)を略したもののような感じです。
誤った使われ方1「防災対策」
使っている人にとっては防災に関するあらゆる対策という意味で言っていると思います。
しかし防災そのものが災害に事前に対応するための方策なので、対策に対する対策となって二重に言ってしまっています。
ちなみに防災対策という言葉、政府も使ってしまっています。
政府広報オンライン
http://www.gov-online.go.jp/useful/article/201108/6.html
法律は「災害対策基本法」というようにキチンと使われています。
内閣府 防災情報のページ
http://www.bousai.go.jp/taisaku/kihonhou/index.html
誤った使われ方2「節電対策」
使っている人は電力を節約するための方法という意味で使っていると思いますが、節電をされない、もしく節電をしないための方法と捉えられても文句は言えません。
電力を節約したいなら「節電方法」と言うのが良いでしょう。
「難易度」という言葉
本来難しいか簡単かの尺度という意味です。
「難易度が高い」という言い方で難しいことを示しますが、これは本来は「難度が高い」と言います。
難易度だと難しい方に高いのか、易しいほうに高いのか分かりません。
(わかるけど、本来ね、本来)
ここまでくると「普通に分かるだろ!」とツッコミたくなると思いますが、正しい使い方をしないと誤解を招く危険性を排除できません。
しかしこういった選択の積み重ねが誤解のないコミュニケーションを生みます。
【誤解のない文を組み立てる】
文は短ければ短いほど誤解が無いです。
しかし、人にものを伝える際色々と修飾したくなります。
この時にたくさんの修飾語を使うと、文中のどの修飾語が何を修飾しているのか分かりづらくなります。
修飾語をたくさんの使った文は長くなります。
長くなった文章は途中で切って別の文にすると格段に分かりやすくなります。
この時の接続詞に注意して下さい。
「しかし」を使ったら必ず否定しなければ読み手は混乱します。
混乱は誤解を生みます。
「そして」や「また」なども出来れば使わないのが良いです。
箇条書きで通じると読みやすいです。
【誤解のない文章を組み立てる】
ここで論理性の高さが試されます。
また、この部分を鍛えると論理性が高くなります。
ここで起承転結を忘れてください。
起承転結は話にオチをつける形式です。
これは物語の作り方であって人に正しくものを伝えるための作法ではありません。
アウトラインから段々と細かく書いていくのが分かりやすくて良いでしょう。
まず結論を書くのが基本で、そのあと結論の裏付けを行います。
最も大雑把なことが端的に書いてあると、論旨が伝わりやすくなります。
ここで気をつけなければならないのは、途中で矛盾したことを書かないことです。
裏付けを行うために反証することがあると思いますが、反証だと分かるように書かないと読者が混乱します。
あとで論理の飛躍がないことを確認すると良いでしょう。
飛躍がある場合には説明が不足しているか、論理に破綻がある可能性があります。
【最後に】
誤解のない表現方法に気が回るようになると、他の人の発言・文書が気になるようになります。
しかし、くれぐれも人の発言・文章へのケチの付け方は気をつけるようにして下さい。
このノートを見ても「ウゼェ」と思ったように、直接相手をする人はもちろんのこと、周りの人にもウザがられること必至です。
仕事なら成果物の精度向上のために前向きに捉えられることもプライベートなら別だったりします。
【あとがき】
相手に自分の意思を誤解なく伝えることは、発言・文書の基本ですが意外にハードルは高く、出来ていない人が多いです。
人の言うことをチェックする立場の人は内容についての詳細な部分ではなく、まず論理的な成立性があるのかをチェックしています。
論理的な矛盾や飛躍があるとそこから誤解が生じるので、気にかけているわけです。
ミスリードを誘ったりする場合以外は誤解されて喜ぶ人はいません。
自分の言ったことがよく通じ、よく理解されるよう、国語を磨いて下さい。
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