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「ひたすら面白い映画に会いたくて」37本目『カメラを止めるな!』

   『ラヂオの時間』は、著名な舞台監督三谷幸喜による豪華俳優陣をキャストに迎えたシチュエーションコメディ作品の傑作であった。だとすると本作は、まだまだ知名度の低い映画監督上田慎一郎と俳優陣たちが力を合わせて奮闘するシチュエーションコメディ作品の秀作ではないか。

37本目:『カメラを止めるな!』

            『カメラを止めるな!』(2017)

                 脚本・監督:上田慎一郎

「笑いで一体感を生み出す極上のアトラクション」

物語のあらすじ

 早くて安くてそこそこの映画を撮り、自分の作品よりも番組の意向を最優先する監督。
元女優でスイッチが入ってしまうと手がつけられないほど暴走してしまう監督の妻。
口が悪くてかなり強引だが、仕事に対する情熱と質に関しては文句無しの監督の娘。
リハの段階からネチネチと口うるさい主演の人気若手俳優。
嘘で塗り固められた超馴れ馴れしいアイドル。
アル中気味で年季の入ったベテラン俳優。
共演者同士で本番撮影前にいつのまにか不倫関係になっている俳優と女優。
頼りなさすぎる助監督。
かなりの腰痛持ちカメラマン。
軟水しか飲めないお腹弱すぎ録音マン。

 本作は、これらの役者・スタッフ一同が、ワンカットでゾンビ映画を撮るために奮闘する物語だ。こんなにも一味も二味もクセのある面々が、一つの作品を作り上げるために、アクシデントに振り回されながらもなんとかその場を乗り切っていくのである。

本作の魅力

 伏線の回収の仕方が芸術的で、見事だとしか言いようがないほど素晴らしかった。かなり緻密に計算し尽くされた脚本には、アッパレ!と合いの手を入れたくなる。

 何気に私は、最初の「ONE CUT OF THE DEAD」もB級映画としての出来栄えは良かったんじゃないかと思っている。これはこれでなかなか面白いと気に入っているのだ。

   この冒頭のゾンビ映画に散りばめられた伏線の数々。これらを種明かしするようにスッキリと回収していく後半の舞台裏の物語が、やっぱり1番の魅力なんだけどね。

私の1番好きな場面

 個人的に1番自分の笑いのツボにはまった場面は、助監督がゾンビ役のアル中気味の俳優から、予期せぬ、かつ、嫌すぎる「攻撃」を受けるシーンである。この想定外の攻撃を受けた助監督の演技がおかしくっておかしくってたまらない。彼の声が異常に高いだけでなく、パニックだったのか「オネエ」っぽくなっていたのが、面白すぎた。

 映画館で我を忘れて大笑いしたことをよく覚えている。この場面は、誰もが笑わずにはいられなかった屈指の名場面であったと信じたいものだ。笑 いやあ、非常に楽しませってもらったなあ。

最後に

 映画館で、腹を抱えて大笑いしたという記憶は、一生忘れられない思い出になるはずだ。全く知らない人たちと映画館で腹の底から笑い合えたという体験が、本作のもたらしてくれた最高の贈り物であったのではないか。1度笑いのツボを刺激されると、周囲の笑い声も相まって、笑いを堪えることがどんどん難しくなっていく。

 このように、多くの人たちが自分の周りで大笑いしている環境下での鑑賞は、自宅での鑑賞よりも作品を何十倍もの面白さに膨れ上がらせる「力」を持っているに違いない。これほど映画マジックを感じた作品は、初めてである。映画館で観たからこその一体感がここにはあったのだ。まさに、「アトラクション型コメディ映画」の誕生である。

 コメディ映画は、映画館へと足を運び、観客みんなで笑いを共有する。それが1番コメディ映画を楽しむコツなのではないか。そんなことを本作で痛感したものだ。

予告編

↓映画『カメラを止めるな!』の予告編です↓

(出典 : 【YouTube】上田慎一郎「映画「カメラを止めるな!」特報」)

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