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体を脱ぐのか6月5日

駐輪場の出口。ぴってした後に自分のかばんにのんびりと仕舞う前の人に少し苛立つ。
苛立って、自分が苛立ったことに驚いた。
パソコン作業は心の余裕をなくす。

自転車に乗っている間も、後ろをついてくる自転車に違和を覚えて落ち着かない。きれいな夕陽で懸命に心を宥めるも、宥めきらない帰り道。
微かな違和感は心をざわめかせる。
何かちがう、どこか違う。
このまま間違えたら取り返しのつかないことになりそうで怖い。嫌だ、怖い。具体的な出来事がないままに、恐怖心だけが膨らんでいた。

彩瀬まるさんの『眠れない夜は体を脱いで』。
タイムリーな選書。
顔とか性別とか年齢とか。色んな微かな違和を覚える人たちが出会う「手をみせてください」というスレッドが繋がる、連作短編集。
読み終わって、自分の手を眺めてみる。
ボタンみたいに並んだ黒子。小さい頃に切ってしまった小指の傷。ぷにぷにした手のひらと指。
自分の手は、とても自分だという手ざわりがある。
逆に自分の表情は、よくわからない。
「どういう顔してるんですか」って笑われるときがたまにある。自分ではどの感情が表情に出てしまっているのか分からなくて焦る。わたしはいつもどんな顔で生きているのだろう。
楽しいとき嬉しいとき美味しいとき、素直に喜びの感情がでていればいいなと思う。
マイナスの感情も、ときにはしかり。

インカメラを向けてみる。
よくわかない表情をした自分がいた。

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