見出し画像

父はこぼし、母は笑う5月12日

キャッチボールをしようと思うと、体と心がきゅっと強ばる。手汗がにじんで、固まって、どう動けばいいのかわからなくなるのだ。
高校最後の1年のあるときに、急にはじまったイップスのような症状は結局治ってないように思う。
でも、久しぶりにした兄とのキャッチボール。
家の前で半袖短パンで日差しを浴びながら。夏休みのような、コロナ禍を彷彿とさせるような暇な時間。
あぁ、怖いと思いながらも、相手が兄なので気を遣わなくていいのがよいところ。これが他の相手だと、暴投してしまったら申し訳ないとばかり考えしまって、試行錯誤まで至らない。
投げながら、そうだ指をきちんと怖がらずに押し出せば投げられるんだなと発見。徐々に思い出してきた。怖くないキャッチボールはとても楽しい。

夜、兄が帰省しているのですき焼きになった。母の日だしと、0.5%の微アルを飲む。食べ終わった頃には、全員ダウン。兄は和室、わたしはソファ、母はクッションに赤い顔して横たわっている。唯一耐えていた父が後片付けをしていたけれど、キッチンから叫び声が聞こえた。お鍋に残っていた汁をぶちまけたらしい。母が爆笑しながら床に崩れ落ちる。
そんな夜。

幼稚園来の友だちが就活の話を聞かせてほしいと明日会うことになった。思い出さなきゃとノートを発掘する。〇〇一次面接とか書いてある。ちょっと見たくないような、いたいような。通った企業ほど、ノートの文量が少ない。きっと書くまでもなく話すことが整理されているということなのだろう。落ちた企業ほどがんばって考えている。逆ベクトル。がんばってたんだよね、それでも。
落ちる、という行為は本当に辛かった。どこかを否定されるようで、毎回素直に傷つき泣いていた。でもここで、バリアをはって心を守ることを優先してしまったら、自分とあうところには受からないと思ってしまったから。自分を偽って受かってしまったら取り返しがつかない。怖いし痛いけどノーガードで挑んでいた。もういやだなと思う。もう、やりたくない。

全く不安はないのだけれど、もし彼氏にフラれたらーーと考えることはある。一体どうなってしまうのだろう。かさぶたをいじるように考える。1週間会わないだけで、だいぶキツイのに、もう会えない。声も聞けない。それに……と考え始めたら悲しくなってきたので辞める。悲劇のヒロイン活動は向いてないかもしれない。
ネットにあがっている投稿サイトの甘々小説を読む。でも、彼氏さんも相当甘いな?と気づいてしまった。感情が急降下に急上昇。
まだ酔いが覚めていないのだろうか。

ムーミンを抱きしめながら、企画を考える。何がいいんだろう、誰が喋ったら面白いんだろう。
日曜の夜、月曜日の先取り。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?