「劇場版 コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-」(2018年の映画)
2018年最大のヒット作「劇場版 コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-」がWOWOWで放送されたので見ました。
「劇場版 コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-」は2018年邦画最大のヒット作なので「売れている=面白い」という理屈が成り立ちます。
映画を長く見ていると気が付くのですが、ふだん触れ合うことがないジャンルであっても、面白い作品には共通したアティチュードがあり得るものがあるというのが私の信念のひとつ(例えばジャンル転換をした監督がとんでもない傑作を撮ることも多いですよね!)なので、前情報をなるべく入れずに #カルマ調整 を実行しました。
というか前情報やレビューがまったく入ってこなかったんです。普段映画をみて偉そうにしてる人たちは、パブリックイメージだけでこの作品を適切に評することを避けているのでは?
そんなわけで、誰も見ていない大ヒット作を向かうことになったのだ。
◆あらすじ
「救命ヘリに関わる人々が生命の瀬戸際で足掻く青春と希望の物語!」
◆冒頭5分を見逃しても良い安心設計
物語は、これまでのシリーズのダイジェストから始まる。これが5分くらい。
ちょっといいですか、映画にルールはありませんが文法はあります。上映開始の五分間で何ができるか、考えてみてください。
「セブンサイコパス」では開始5分で人が同時に二人死ぬ鮮烈なオープニングがありました。
「セデック・バレ」では開始2分で首狩りが成立して、その後4時間にわたり物語られることが十分に示唆されています。
「スタンドバイミー」「キングスオブサマー」「スイスアーミーマン」青春映画のオープニングは、なぜあれほど心をつかむのでしょう。
「バーフバリ 伝説誕生」では、シヴァガミが叫んで絶命する壮絶なシーンがあり「王の凱旋」では究極OPシークエンスである開門山車轢暴象調教が描かれています。
ゆったりと時間を使うパターンでも「ウィンド・リバー」の女性が雪原を駆ける凄絶なタイトルカット。「エンドゲーム」の穏やかなホークアイの家庭描写の緩急があります。
「落下の王国」は配信でアクセスできないのでソフトを入手して確認してほしいんですけど「俺はこれからこれをやるぞ!やるぞ!」という鮮烈な風景をぶちかましてきます。
映画には「冒頭5分を見逃したら切腹して死ぬ」それくらいの殺伐とした観客と作品の信頼関係が必要なんです。
製作側が、あえて、最初の5分にバッファ時間を設けた狙いは何でしょうか。劇場に来る客層が上映開始時間を過ぎてからポップコーン片手に席を探してウロウロするタイプを想定して余裕を設けたのでしょうか。それとも紙うさぎロペを避けるために上映開始に合わせてシアターインするお前らを想定しているのでしょうか。
ただでさえ長い予告編タイムを終えた後に待っているのがダイジェスト映像(スローガンと共に画面が切り替わる音がするやつ)を見せられた気持ちを考えてください。私は録画したやつだからスキップできますが(この映画はスキップしてよいのでは?)と思わせた時点で敗北ですよ。
◆お詫びと出典元◆
当記事で使用している「映画にルールはありませんが文法はあります」というフレーズについては、アロハ天狗さんの実写デビルマン記事内の「映画に法律はないけど文法と定石はあるぞ。」を参考としたものです。参考資料としての掲載が漏れておりました。お詫び申し上げます。ぜひデビルマン記事もお楽しみください。
◆このかたせ梨乃がスゴイ!2018
ところが実際に見始めたらすごかった。「劇場版 コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-」には、このような正気を疑うホラーシーンがあります。
【側頭部に包丁が刺さったままの狂女がケタケタ笑いながら暴走車両に乗ってやってくる】
コワイ!!
私はホラー作品を多く見るタイプではありませんが、ここまでの不死性サイコパスを見かけるシーンはそうそうありませんよ。「スペル」ですか???
しかも、このクレイジーかたせ梨乃
レスキューヘリの映画なのに、ヘリを出動させずに自分から来る。
ヤバイ。常軌を逸している。普通はチームの家族が大怪我だ!レスキューヘリを飛ばせ!ってなるじゃん。そうならない。ヤバイ。いきなり暴走車両で駆けつけてくる。作品の全てを全否定する何かをぶつけてくる。ヤバイ。
超R18級ショッキング描写です。(医療ドラマなので手術断面もあるがそれとは別の猟奇性を醸し出している)
これだけだと私が「いつもの実在しない妄言をぶっ放してる」と思われてしまうので、三角測量的に事実であることがわかるように、Wikipediaより引用をさせていただきます。
演 - かたせ梨乃
双葉の母親。重度のアルコール依存症であり、酔ったまま包丁を手にしていた際に転倒して側頭部に包丁が突き刺さった状況で、翔北に若葉の運転する車に乗せられて連れられてくる。
引用元
◆4DXアクション映えする演出!
「劇場版 コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-」は4DX上映されていたそうです。どう考えても作中で一番激しいアクションが《暴走するかたせ梨乃》なので、一番の見せ場がここに集中することになります。(酒の匂いのミストとかも出る)
唐突なカー・アクションと3D(包丁)描写をぶち込むに至った監督のアレはよくわかりませんが、悪しきプロデューサーと過に「ここに4DX映えするやつ入れっちゃってよー」とでも言われたのではないかという、悪しきビジョンが脳裏に浮かびます。
◆その他は完璧です
その他のシーンは完璧でした。シリーズの完結編にふさわしい、登場人物の新たな門出を祝う素晴らしい演出。春風亭昇太は結婚できてよかったね。おめでとう!!
あらゆるシーンに謎のスロー演出が発生して画面にゆとりがあります。近年のタイトさを良しとする作風へのアンチテーゼだと思います。
総評としては「知らない人の卒業アルバム」のような作品であり、登場人物への理解が深いほど楽しむことができます。この点、エンドゲームよりもはるかにドメスティックであり「コード・ブルー」シリーズ10年の重みを感じさせるものです。さながら小中一貫校の卒業式ですから作品の評価が枠外の人へ漏れななかったことも頷けます。
私は、現時点で個人的に98点ですが、万全に100点として楽しむなら、シリーズを全て観て出演者への感情移入を十分にすることをオススメします!
◆未来へ
2018年の覇権映画がこの作品であることについて、我々はもっと真剣に考えなければいけない。
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