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『FROSTPUNK/フロストパンク:ジェネレータ跡に残された手記より』②

我々はロンドンからの旅路の果てにジェネレータが放置されたコロニー跡を発見した。そこには人が居住していた痕跡が残されていたが生存者はいなかった。ジェネレータの操作盤に一冊のノートが残されていた。そこにはコロニー瓦解の次第が記されており、次の住民へ向けた指南書のような作りになっていた。

1冊目の手記

2冊目の手記


先代の失敗を鑑にジェネレーター運用方針を策定する。収集部隊の選択と集中でまず保温を第一目標とする。石炭を最優先して次に木材。金属と食料の確保は後ろに回す。順調に石炭は集まり夜が明ける前に蒸気ジェネレータを稼働させることができた。

木材が集まり次第、避難用テントをジェネレータ周囲のヒートエリアへ展開していく。そして、今回は先代の二の轍を踏まず疫病の発生源となる死体に対する処置を優先させた。【公営墓地】 *1 をジェネレータ隣接の一等地へ建築。住民からも安心があると好評のようだった。

*1 埋葬方法には墓地と遺棄の二種類がある。墓地は文明的な墓石と埋葬、遺棄は要するに腐らないように雪に埋めるという手段だ。この手段は雪に埋めるだけだから手軽で再利用も容易という利点がある。

温度を求めてジェネレータ周辺には様々な施設が立ち並ぶ。住居、診療所、厨房、倉庫、素材が許す限り街を拡張していく。そして、一通りの施設をそろえたときに住民から不満の声が寄せられた。

「キャプテン、僕らの家がないです!一等地に墓地があってテントが張れないっす」

墓地に死体を埋葬しジェネレーターで体温を確保すれば労働者は病気にかかりにくい。公共衛生こそが産業革命を次世代へ導く……そう信じていたが、我々は忘れていた。この時点で死者は1名も出ていないことを。

大慌てでジェネレーターから【道路】*2 を延伸して、街道沿いにテントを建てる。ジェネレータから離れているため居住環境は過酷で人々はホームレスよりマシだが病気になりやすい環境へ置かれてしまった。

*2 道路にはスチーム動力を伝える機能があり氷点下世界の建築物は道路との接続が必須である。あと歩きやすいので住民からも好評。

施設を増やしながら安定稼働をするように【蒸気ハブ】*3 を設置。住居、狩猟小屋を建てて住民サービスを満たしながら、並行して石炭も掘り進める。やっとコロニーが安定してきたと思いきや住民から新たな要請が寄せられる。

*3 蒸気ハブとはジェネレータの蒸気に接続して増幅させる蒸気リピーター。強力だが相応に石炭を消費するので石炭を掘り続けなければならない。

「生き別れの家族を探しに行きたい」

ロンドンは蒸気ジェネレータを大陸各地に建設していた。他にも生存しているコロニーが存在するかもしれない。そのためには【ビーコン】*4 を開発してアドバルーンを上げる必要がある。だが……我々は目の前の石炭が足りないほど貧窮なのだ。この要望は棚上げされた。

*4 蒸気で高高度まで浮き上がるビーコンを設置して周辺住民や捜索隊にコロニーの位置を知らせる装置。作成には多量の鉄を必要とする。

とにかく石炭を掘り続けなければいけない。夜になり石炭掘りの操業が止まるたびにジェネレータが頼りなく震える。自転車操業の限界が近づいていた。

早朝、気温計がバキバキと音を立てて凍り付いた。寒気によりコロニーがマイナス40度まで凍り付いた。露店作業の人々は凍傷に倒れ荒療治により【手足切断患者】*5 が続出する。作業部屋は冷気のため稼働できず【暖房システム】*6 が開発されるまで業務凍結となった。

*5 凍傷で壊死した手足を切断した患者は専用の療護院へ収容される。労働力にならない彼らを見殺しにすることは住民の希望を挫くことになりコロニー運営に致命傷を与えかねない。
*6 道路パイプを通じて蒸気を作業室へ送りこむ暖房システムは最重要設備の一つだ。労働時間に人々が凍死する可能性を減らし労働効率を高める。

けがの功名、木材や石炭や鉄を総合的に収集する労働者の【収集拠点】*7 の図面を発見した。資源採集拠点の中間に収集拠点を置き暖房で労働効率を高める。素材の回転率は高まりコロニーは発展するはずだった。石炭資源が【枯渇】*8 するまでは。

*7 収集拠点(タコ部屋)のありがたみは読者諸君もご存じのとおりである。勢いよく収集をして保温された部屋に戻りチンチンに熱せられたヤカンから茶を注ぐ。この繰り返しで効率よく収集を続けることができる。
*8 初期状態で採掘できる資源は多くない。段階的に上位の素材採掘ポイントを採取できるようにエンジニアリングを開発していく必要がある。

石炭資源枯渇。コロニーに激震走る。ジェネレータ、蒸気ハブ、各種暖房、石炭需要はとどまるところを知らない。残り僅かの石炭を食いつなぎながら昼は収集拠点を暖房し夜は寝床で我慢するという赤貧生活を繰り返すことになる。10時間労働を14時間労働へ切り替えるも掘る資源がなくては労働者は無為の待機を強いられるばかりであり不満は募る。
そして【食糧】*9 が足りない。30名からなるハンター隊は住民に対して食料をほとんど提供できず、コロニー内の食事を粗末な【スープ】*10 に切り替えた途端に不満が頻出する。毎日のことだけあって食事の恨みは恐ろしい。ついには自殺者も出た。コロニーは目に見えて崩壊しつつあった。

*9 食料は、生食材と備蓄食糧に分類される。ハンター隊(夜勤)が生肉を確保したら調理場(日勤)で加工するという手順を踏む。このため収集・備蓄に即時性がなくジリ貧に陥った場合、回復が難しい。空腹の副作用は病気の発症と少々の死。
*10 スープは、生食材を薄めて量を増やした食事。効率よく食糧をふるまえるが社会に不満がたまる。また、量をカバーする方法でおがくずを投入するという手段もあるが、おそらく悪くすれば即死、良くても死を迎えるだろう。

《崩壊》

生存20日目。ギリギリで精神を保つコロニーに悲報がもたらさせる。外部コロニー:ウィンターホームからの使者が「我らがホームは全滅した」と伝えて息絶えたのだ。外部世界への探索をしていれば救えたかもしれない。後悔するが後戻りはできない。住民に絶望が蔓延し自殺者が増えかねない状況だ。住民を結束させるためにはスローガンを打ち出さねばならない。

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選ぶべきは【宗教】*11 か【秩序】*12 か。

*11 宗教は祈りを通じで希望を支える。教会がボコスカ建つ。
*12 秩序は規律と刑罰により不満を抑えこむ。監視塔や守衛が巡回する。

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宗教を選び教会を建築しようとすると労働ストが発生した。【ロンドン主義者】*13 の出現だ。彼らはロンドンを出たことが間違いだったと主張して徒党を組みキャプテンを追い出そうと躍起になっている。

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我々にこれを押さえる力はあるか? ない。石炭も食料もなく、再び訪れたマイナス40度の寒波によって自殺者と凍死者が出た。朝、目を覚ますと隣の家族が死んでいる。自分がいつそうなってもおかしくない。人々は絶望した。

*13 ロンドンへの帰還を訴える住民内過激派。ちゃんと労働はしてくれるのでイズムの相違を解消すれば派閥を減少させることができる。一定数以上になると住人をまとめてどこかへ移住してしまう。

こうしてロンドン主義者の横行により住民総意により私は追放されることになった。ここでペンを置く。次のキャプテンよ、コロニーの中に未来はない。希望を外へ放て。

【あなたは追放された】

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3冊目の手記


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