見出し画像

『幻想再帰のアリュージョニスト』を第28話まで読んだよ(第二章完結)

(前回まで)
『幻想再帰のアリュージョニスト』というWeb小説を読み始めた。読み応えとしては「霧に包まれた山」であり、少しずつ手探りでとっかかりを見つけて読み始めるという苦行を強いられることになった。

(これまでのあらすじ)
日本から迷宮都市へ転生したシナモリアキラ(ハンドルネーム)は、言葉が通じず意思疎通のできない迷宮都市で暴力に明け暮れていた。下心で彼に接近した氷血の魔女コルセスカと鮮血の魔女トリシューラの尽力によってシナモリアキラは言語を習得。襲い掛かる悪の武術家やイッカクみたいなやつを退けることに成功する。

この物語は両腕を持たない無価値な青年が《サイバーカラテ》でのし上がっていく物語である。

前回は第11話まで紹介しました。

第12話~
転生してからこれまでの騒動は全て着ぐるみ魔女による手引きで合ったことが唐突に明らかにされ、シナモリアキラは二人の魔女のどちらを選ぶかということを強制される。選ぶということはどちらかを消すということに他ならない。彼は双方を秤にかけるべく3日間の猶予を得る。

一方で第五階層には地上の「松明の騎士団」から幹部級騎士が派遣されてくる。彼の名はキロン。あらゆる武器を使いこなし最強のカラテを持つ帝国軽装歩兵ジェイムズのような人物であった。

着ぐるみの魔女とアキラは【公社】をぶっ壊す過程で聖騎士とぶつかり合うことになる。

第16話~
シナモリアキラは聖騎士キロンとの交渉決裂を伝達し「公社、魔女、騎士団」三つどもえの決戦が開始される。武具を擬人化して想いを投影するキロンにシナモリアキラと二人の魔女は善戦するがワグナス形態を開放しアトリビュート(持物や外見によって上位存在を連想・認識させる教養)を重ねがけした七英雄ワグナス級の攻撃でシナモリアキラの両腕義手を破壊。個人情報や記憶や便利アプリを吸い出し焼き尽くしてしまう。

第20話~
シナモリアキラ死亡。死亡確定時の静止した時間の中、魔女コルセスカの告白でシナモリアキラは氷血の魔女との契約を決意する。死亡確定時のまま時間を進める(よくわからないがコブラの時間停止弾みたいなものだろう)ことで難を逃れた二人は、トリシューラがキロンを階層外へ押し出し(寄り切り? 決まり手は行事に任せます)た後に時間流に復帰。全てのアプリを失ったシナモリアキラは「誰そいつ」と言われてしまう。

第21話~
全てを奪われたシナモリアキラはトリシューラに見限られ追い出される。コルセスカとセッ、接続を果たしたシナモリアキラは度重なる吸血欲求に根負けして彼女の寝台で何度も汚染体液相互循環を繰り返しコルセスカとのつながりを深めていく。しかし、その一方でトリシューラは自我存続の危機を迎えていた。「前後中に隣で愛する人が死ぬ」という最悪の事態が訪れようとしていた。

二人の魔女の記憶を辿り、二人のオリジンは「相互に参照して生まれた再帰関係」であることを知ったシナモリアキラは、とんでもない作戦を打ち立てる。決まりがあるなら全てひっくり返せばよい。そして三人でラブメンテナンス重点。ラブ王侯の末に二人の魔女と仏契ったシナモリアキラは新たな両腕の義足を装着する。勝利のメイククラブだ。(メイクラブはラブクラフトと同様に製作することを愛するという意味で他意はありますん)

第24話~
決戦ジェイムズ院。両腕が揃ったシナモリアキラは、サイバーカラテ道場がインストールされたジェイムズ=キロンを圧倒する。両腕のお披露目会だ。ワッショイ!ワッショイ!本来の殺傷能力を展開させ真名を明らかにしたジェイムズだが効かぬ!効かぬのだ!! その世界の伝説を背負っても、それを知らない人物には効き目がない。「知らないことは力だ!」信仰の力を削ぎ落としジェイムズに集まるはずの支持を街頭ビジョンのアイドルに流し込む。着ぐるみの魔女とシナモリアキラはセッ、セッションの果てに合体。暫定究極の力を手に入れる。主人公としての正統性を失ったジェイムズは倒れた。

第27話~
後始末の後日談となる。全てを失ったアキラは両腕の義手で魔女を抱き寄せて勝利のメイクラブだ!第五階層が新たなステージへ進み、待望のあの人物の名前が舞台の面に出現する。 それはまぎれもなくヤツだ。アズーリア!

一方、現代日本では新たな脅威が動き始めていた。

ここまでの展開のまとめ

物語中の価値観や設定が上下左右に揺さぶられ続ける展開が続く。色々納得した次のエピソードでひっくり返されるのは日常茶飯事だ。「実はあのとき」「実はあいつは」「実は」「実は」それらの後付けこそが有効に働くという作中リアリティの設定がキモになっていることが多い。

サイバーカラテを信じろ。サイバーカラテとは流派であり思想であり手段だ。あらゆる局面に適合し最適な回答を導き出し続けるサイバーカラテに握れぬ概念はない。支部を作れ!

そして、作中で「ありがちな展開」が発生した場合、「流れ」が生まれてしまう。物語を運ぶ力、主人公補正、運命力、様々な呼ばれ方をする「流れ」を握ることが物語の手綱を握ることになるのかもしれない。

「流れ」
・致命傷を負って川に落ちる=生きてる
・やったか!=やってない
・この戦いが終わったら結婚=死ぬ
・奥の手を隠したまま敗北寸前になる=大逆転

お前が第一話へ戻る平成の終わり

アリュージョニストは、好き放題めちゃくちゃやっているようで、慎重にアリバイを作っている作品だ。読み飛ばしてもかまわないのでは?とさえ評した第一話~第三話(第一章※)の内容については物語の背骨となり揺るぐことはない。世界観を把握して物語が小休止したら、第一話に戻ってみることを考えよう。きっと得られる情報があるから。

※第一章は「なろう小説」テンプレートを下敷きにして、あえて逆張りをする展開のため、「その世界の風習を知らない」異世界人には効き目が薄いそうです。私のことですね。

それじゃ、第三章でまた会おうね。

#小説 #推薦図書 #アリュージョニスト #幻想再帰のアリュージョニスト #メタフィクション

この記事が参加している募集

#とは

57,832件

#推薦図書

42,597件

いつもたくさんのチヤホヤをありがとうございます。頂いたサポートは取材に使用したり他の記事のサポートに使用させてもらっています。