雨の日の朝と

雨の音は心地がいい。

ぺちぺち?ぴちゃぴちゃ?
ぽちゃぽちゃ?ふふっ
ぽちゃぽちゃはないか...

彼女はベッドに横になりながら笑った。
僕は彼女を抱き寄せる。

なに?ふふっ
暑いじゃん、やめてー。

少し暴れる彼女を無視して
僕は深く抱きしめる。
この感覚を忘れたくない。
この気持ちを刻み込みたい。
深く染み込んでいくように、
確かに感じるこの温もりと声と君をすべて。

いつのまにか静かになった彼女は、
もぞもぞと寝返りをうって向かい合う。

顔と顔を合わせるのは恥ずかしい。

ふふっ

彼女は本当にふふっと笑う。
僕は仰向けになる。
右腕にかかる重みを深く感じる。

朝は嫌いだ。
雨は好きだ。
君が好きだ。

身体を起こして、伸びをする彼女。
僕の体を跨いで洗面所へ向かう。
僕はまだ起きれない。
ずっと起きれない。

少しさっぱりした顔の君は、
昨日の涙を忘れたように笑う。

ごめんね、頼ってばっかりで。

昨日着ていた服を着て彼女は玄関に向かう。
僕は起きれない。

じゃあね、また。

彼女の声が聞こえた。

遠く遠く聞こえた。

ドアの閉まる音は無機質で冷たい。

そこで終わったように、
この部屋の中で起きたことは
外の世界には関係ない。
ここだけの関係。

また会う時は泣いているのかな。

彼女は変わらない。

僕も変わらない。
変わるのは、
少しずつ磨り減る感情と
少しずつ膨らむ想いだけだ。

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