文章を書くことは走ることに似ている。《水曜日のエッセイ by たつのこ龍次郎》
水曜日の記事は文章クラブ『放課後ライティング倶楽部』メンバーさんが担当です。だいたい2ヶ月くらいで順番がまわってきます。
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さらに言えば言葉そのものも走る。
ときにゆっくり、ときに疾風を巻き起こすように。
わたしからあなたへ、あなたから誰かへ言葉のバトンを渡しましょう。
さて、あの村上春樹氏も『走ることについて語るときに僕の語ること※』という著書を書いている。もちろん、私は読んではいない。←読んでないんかーーーい!
だって、随分若い頃にはじめての村上春樹作品として「ねじまき鳥クロニコル」を読んでみたのだけれど、とにかく目線が前に進まずに早々に挫折したクチだから……
【笑われたランナー】
私は小中学校のとき、陸上部に所属していた。
ガリガリのもやしっ子体型だった私なりに、課せられた練習は真面目にヘロヘロになりながらついていった。だからか分からないが、「走ること」への抵抗はなかった。
中学生のときの忘れられない苦い思い出がある。
所属する陸上部は「なんちゃって陸上部」だった。顧問は40代で陰のある渋い雰囲気を持っていた。なんとなくルパン三世の次元大介のオーラをまとっていたものだから、生徒からは「次元」と呼ばれていた。
ただ、次元のくせにテキトーなタイプで気が向いたら顔を出すし、活動時間には居ないことも多かった。部活は不真面目部員が集まって「単に遊んでた」感じだった。
ある日、次元から陸上の地区大会に「お前ら学校代表として出るぞ」と宣言される。
えっ!?
まぁタネを明かすと幽霊部員ばかりだったので、不真面目でも顔を出す真面目部員(←どっちやねん!)がどの種目に出たいか選び放題なだけだったのだ。
で、私はなぜだか縁もゆかりもない「400メートル走」に種目が決まる。
走り方も何も誰も教えてくれない。
このときは「ただ走れば良い」のだと気楽に考えていた。
そして大会当日。
大きな競技場にはたくさんの学校から選手や競技関係者がわんさと集まっていた。あれよあれよと自分が走る本番の時間となる。
スタートラインについてピストルの合図の直後に猛ダッシュする私。絶好調の先頭だ。
どよめく会場。「アイツは誰だ!?」「何者だ!?」の感じで突出して速かった。
それもそのはず。練習もしてないものだから、ペース配分も何も考えていないだけだった。
みなさんの想像を絶するアホさ加減だったので、最後まで同じペースで走れると本気で思っていたのだ。
必死になって足を掛け回す。
しかし、まだ半分にも至っていないあたりから足の回転がおぼつかなくなっていき、遅れ始める。(デーデン……)
他のランナーは後半に向けてチカラを温存してる状態なのでどんどん抜かされて行くワタシ……(デーデンデーデン……by 映画「ジョーズ」の効果音継続中)
気付けばフラフラな状態でドンケツGOALである。(断末魔)
情けないやら、恥ずかしいやら、当然の結果っちゃー当然の結果なのだけれども、顔から火が出そうで席に戻るまでも自分の足元しか見れなくなる体験だった。
【短距離走向きか長距離走向きか】
私の場合は短距離走に出走したのだけれど、そのための正しい練習をしていなかったのが大きな課題だったのだろう。
ランナーの筋肉の話になるけれど、実は距離によって使う筋肉が違う。
・速筋(ソッキン)→瞬発力やパワーが必要な運動を行うときに活躍(白っぽい筋肉のため白筋と呼ばれる)
・遅筋(チキン)→持続的な運動を行うときに活躍(赤っぽい筋肉のため赤筋と呼ばれる)
引用:【速筋と遅筋の違い】鍛えるメリットや鍛え方は?
ここでライティングにおける「言葉のタイプ」と重ねて考えてみる。
たとえば速筋のように瞬発力が必要なもの……キャッチコピーや短歌は、まさにコレ!
短い言葉の組み合わせにいかに読み手に衝撃を与えるか、ことばの外側を想像させるか。ドン!!と。
じゃあ逆に遅筋のような持久力があるもの……小説やエッセイなどが該当するだろう。
世界観をゆっくりと形成していき、その中で読者の予想を超える表現をして、読者に長く余韻に浸ってもらう。ジーン……と。
【自分が得意なのはどちらか?】
考えてみると、私は速筋の方が強い。
言葉を紡いでいて自分でもドキドキするし、面白いと感じる。短距離型の『言葉の瞬発力』に命をかけてもいい、とさえ思える。
でも、書き続けて、最近になって感じるのは、「それだけでは良いものがつくれない」だ。
遅筋も鍛えないと、読者に対して紡ぎ出した短文のバックボーンや背景説明ができないのだ。書いた文章やことばは、人に伝わってナンボ。「伝えるためには必ず遅筋が必要」になる。
まずはどちらかに突き抜けよう。やりながら別の筋肉を鍛えよう。しかも正しく効率的に鍛えないと、ドンケツGOALになっちゃうよ(笑)
今から書くポーズを試しにやって欲しい。
チカラコブを作るようにペンを持った手をグッと曲げながら甲高い声で叫ぼう。
「パワーーー!」
大丈夫、自分をもっと信じて書いていけるから。
[ライター:たつのこ龍次郎]
◆66日ライティング×ランニング〜シーズン2 《7日目》
参加者全員の記事はこちらに。
《こちらはシーズン1》
ひとりでなかなか頑張れないなら、私たちがいっしょに走るよ。
[画像協力:さちわ]
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