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推敲の街・ミングウェイ《ディスクライブ・メソッド・オンライン》《水曜日のエッセイ by 鳥飼アミカ》

 
水曜日の記事は文章クラブ『放課後ライティング倶楽部』メンバーさんが担当です。だいたい2ヶ月くらいで順番がまわってきます。
 

◆◆◆
 

彼女から受け取った紙に書いてあった文字をつぶやくと、地図にその場所がジワリと浮き上がる。
 
魔法みたいだ。
何もなかった先ほどが幻のように、平然とした顔でそこに書かれている。
 

驚きに声も出ない私を見て、彼女はにっこり笑った。
 
「ねぇ、ここからは少し離れてるんだけど、そこに行ってマリーって子を訪ねてみて。彼女なら、いいアドバイスをくれると思うわ」
 
………
 

マリーがいるのは、どうやら北の国の入り口あたりらしい。
今から出発すれば、夕方にはどうにか着くようだ。
 

行き方を教わり、旅に必要なアイテムを受け取る。
 
何に使うのかわからない辞書だ。
これから旅に出るっていうのに、これ持ってかないとダメなの……。
 

私の微妙な表情を素早く読み取った彼女は、ニヤリとして言った。
 
「それ、きっとすぐ役に立つよ?」
お金はいいよ、と彼女は手を振った。
 

………
 

その言葉は、本当だった。
 
今、私の目の前にはゼリーみたいなプルプルした生き物がうごめいている。
 

かわいい……のかもしれない。
さわるのに勇気がいるカラーリングだけど。
 

あざやかなブルーをプルプルさせるその生き物の上に、ピコン!と何かが表示される。

「ご……じ……スライ……ム??」
 

軽やかな音と共に増え続けるスライムの群れ。
どけようとしても、ぷるんと跳ね返されてしまい、全く退いてくれない。
 
これをどうにかしないと、ミングウェイには行けないのだ。
 
「……困った……」
 
もうすぐ夜になる。
なのに、街にはまだ着かない。
こいつらは、どうしたらいいんだ。
 

どれくらい経ったのか。
座り込んでいた私に、スッと影がさした。
 
見上げると、ショートカットの利発そうな女性が立っている。
 

「あーやっぱりここで困ってたかーー」
 

魔法でも使っているのか、彼女は誤字スライムを消しながら近づいてくる。
 
小さい破裂音と共に消えるスライム。
 

「あなた、誰?」
 
「わたし? マリーだよ!」
 

黒目がちの印象的な瞳をきらめかせ、彼女は笑顔で言ったのだった。
 

参考:
マリー=ポーリン・マリー・ファイファー

(つづく)
 
◆鳥飼アミカさんの前回の話はこちら

[ライター:鳥飼アミカ]

◆あとがき
ヤスです。文章が支配する仮想世界『ディスクライブ・メソッド・オンライン』を舞台にした創作物語、鳥飼アミカさんの第二話でした。「辞書」アイテムは作者ごとに入手方法が違っておもしろい。イベントで入手、もしくはレベルアップ。現実世界でもお金を出して買う人や、人からもらう人もいますもんね。

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