この世はファンタジーでロールプレイングかもしれない《水曜日のエッセイ by 逢志亭龍》
水曜日の記事は文章クラブ『放課後ライティング倶楽部』メンバーさんが担当です。だいたい2ヶ月くらいで順番がまわってきます。
◆◆◆
双眼鏡とざっくり手描きの地図、ノートとえんぴつを手渡された。
「さぁ、この広大で豊かな土地を
自由に歩むが良い」
"ひょっとこ"の仮面をかぶる人物は甲高い声で言いはなってピタリ固まった。あとは何度話しかけても同じセリフを繰り返すだけだった。
なんだこの世界は……
おそるおそるテントの外に出てみると平原が広がり、足元にはかわいい一角ウサギがピョンピョンピタジーーー……こちらを警戒している。遠くの方からケモノの咆哮が聴こえる。
どうやら私はこの世界を生きながらえて、進まないといけないらしい。イヤすぎる。こわい。不安で心配でしかたがない。
誰か助けて……
待てどもヒーローは現れない。
どうしてこんなことになったのだろう?
(数時間前)
ライティングスキルをもっと身につけたいと思った私は『放課後ライティング倶楽部』という社会人グループを見つけて入部した。リーダーは怪しげなひょっとこの仮面をかぶっているが、書く心得を関西特有の笑いを交えて真面目に伝えていた。
書くお題が欲しくて、私はひょっとこリーダーにチャットでお伺いを立てたら、すぐに返信があった。
☟ お題「私の好きな文章は、コレだっ!」
うーん、なんだろう? 自分の好きな文章?
あんまり考えたことがなかったけれど、ひとつだけ分かることがある。
自分が「書きたい風景」を思い描いてなければ、「ことばや文章にすることはできない」
深く考えているとなんだか急に眠たくなってき……た……
(現在)
目が覚めるとこの世界にいた。冒頭のやりとりをしていた。
平原にたたずんで、ざっくり地図を広げて眺めてみる。
北 冬の国、南 夏の国、西 春の国、東 秋の国
と描かれてある。いや、雑すぎるでしょ。
自分はちょうど真ん中あたりにいるはずだけど、どこに向かおうか。
地図を見ていて、ふと思った。
今まで生きてきた中で、こんな自分になりたい、こんな文章を書いてみたいを選んできた自分が今ここに居る。
惹かれるモノを見つけたら、意識的に近くへ向かっていたように思う。
つまり、今この瞬間に書いている文章が「私の好きな文章」ではないか?
たとえば不思議さがあって軽妙で、ふざけた笑いがあれば最高だ。
ほっこり包み込んでじんわり温かく、ハッとする言葉を紡ぎたい。
好きな文章にもっともっと近づくため、双眼鏡とざっくり手描きの地図、ノートとえんぴつを握りしめて、私は西へ進むことにした。
[ライター:逢志亭龍]
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