愛しき猫たち

思い返せば、幼い頃から猫を飼っていたと思う。
初めての猫は家を出たり入ったりするような猫で、家族も何も言わないから、それが猫の飼い方なんだと思っていた。
次の猫は私が一人暮らしをしていた時に、兄が飼えなくなったと連れて来た。その猫は私がアパート暮らしで、車の通りも激しい場所だったから一切外に出すことはなかった。
2匹とも病気で死んでしまったけれど、その時の悲しさを忘れられず、もう二度と動物は飼わないと誓った。

おチビとの出会い。

数年後、出会いは訪れる。
友人が「仔猫を預かってほしい」と言ってきた。
庭で保護したが犬を飼っているし、猫アレルギーだからと。
でも、一度預かってしまえばその可愛さで手放せなくなるだろうという魂胆だったに違いない。
その通り、私は小さなキジ白の仔猫を手放せなくなり、飼うことになった。
それが愛猫、おチビとの出会いだった。

その当時は仕事を掛け持ちしていて、家に寝に帰るような生活だった。
その当時のことを思い出すと、今も泣けてくる。
「どうしておチビともっと遊んであげなかったのだろう」
生活するために、働くことに忙しくて、ぜんぜん遊んであげられなかった。
そして、幾度もの引っ越し。
猫は環境が変わることを好まない。それでもおチビを手放すことなど考えられなかった。それがおチビを苦しめていたのかな?なんて考えたりもする。

主人の転勤で知らない土地で暮らす時も、癒しはおチビだった。
私は仕事も辞めていたし、やっとおチビと遊ぶ時間もとれる。そんな時に知った、保護猫というワード。
猫ブログを読んでいた時だった。

初めて知る猫の闇

保護猫、野良猫、多頭飼育崩壊、虐待、遺棄、殺処分、悪質ペットブリーダー、ペットショップ、保護猫カフェ、保護猫ボランティア、TNR、サクラ猫。

さまざまなことを知った。初めて知ったことばかりだった。
可愛いばかりじゃない猫の現実に、とにかく調べまくり、泣き続けた。
家の中で暮らせる猫がどんなに幸せな、限られた猫なのかを知った。
より一層目の前にいるおチビを大切にしなければ……そう思った。

そしてやってくる猫ブーム。
可愛いだけで猫を飼う人。飼えなくなったら捨てる。保健所に連れて行く。そんな身勝手な人間たちが増えた。
そんな中で、猫たちの幸せを願い活動する人たちもいる。
初めて見た保護猫活動をしている方は保護猫カフェを運営し、捨てられた猫や保健所に持ち込まれた殺処分を待つ猫の引き出しをしていた。
保健所の人に「この猫は引き出しても生きられないですよ」そんなふうに言われても、病気や大ケガをした猫さえも引き出し、高額な医療にまでかけて猫を救おうと奮闘していた。
今でこそたくさんのメディアに出て、たくさんのボランティアさんと共に活動を強化している。

猫好きなら知ってほしい、猫の現実。
外で生きる猫の寿命は長くても3年から5年といわれる。
今でこそ猫のご飯も体にいいものが増え、病気も治せる薬も増えてきた。
家猫の寿命も延び、20年くらい生きる猫もいる。
でもそれはごくわずか、家猫としてしっかりとケアを受け、幸せに暮らしている猫だけだ。
猫が好きで外に居る猫が可哀想だから家に入れてしまう。たくさんの猫を保護し未手術のままだと、どんどん猫は繁殖し、増え、多頭飼育崩壊というものが起きる。それを防ぐために、必ず避妊、去勢手術をしようと訴えている。それは野良猫も同じこと。猫の繁殖能力はすごい。それをほっておけば猫は増え続け、地域の野良猫問題に発展する。猫の糞尿問題。捕まえて保健所へ持ち込む人。猫が嫌いだからと虐待する人。
そんな可哀想な猫を増やさないように取り組んでいるのがTNRというもの。

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猫を保護し、手術をし、元いた場所に帰すというもの。
本当は全ての猫を保護し里親探しをしてあげたいというのがボランティアさんの気持ちだろう。でもすべての猫を保護するなんて到底無理で、せめて手術をし、さかりや喧嘩、病気のリスクを減らして一代限りの猫生を過ごしてほしいという思いなのだ。

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殺処分ゼロへの道

東京都知事も公約に掲げるように、殺処分0という目標はどの自治体も取り組んでいる。
でもゼロに出来ないのが現状だ。保健所に持ち込まれる犬、猫を殺さないようにしようという取り組みは、行政と地域ボランティアさんとの連携で、殺処分数も減ってはいる。それでも殺処分というものは無くならない。行政も好きで犬、猫を殺すわけではない。問題はそこに持ち込む無責任な人間が増えているからだと思う。
「引っ越し先が猫不可だから飼えなくなった」
「飼っていた人が病気で入院することになったから、もう飼えない」
「猫って可愛いと思ったけど、馴れないし噛まれたからもういらない」
そんな話もよく聞く。
だからといって猫を捨てるのは違法。
だからこそ保護猫カフェなどで里親探しをしていても、猫を飼う条件がいくつもあるのはそのためだ。
生涯大切に飼ってくれるのか。もう二度と外へ出し危ない目に遭わせたりしないか……などなど。猫を飼うにもしっかりとした心構えが必要なのだ。

猫は本当に可愛い。癒しだ。
でも悪いこともいっぱいする。うちのソファは買ってすぐ爪を研がれボロボロになった。以前は賃貸なのに壁紙をやられた。本当にショックだし、「いい加減にしろー!」と思う。でも、やっぱり可愛いが勝る。

おチビとの別れがより一層思いを強くした。

話しは前に戻るが、私が出産をした数か月後、おチビが突然亡くなった。
朝は元気で飛び回っていたのに、大きな音とともに突然倒れた。
近くの動物病院に急いだが、おチビは戻らなかった。死因は不明。
ショックだった。
猫の現状を知って、より一層おチビを大切にしていこう……そう思っていた矢先のことだった。
私がぜんぜん構ってあげられなかったからかな?
何度もの引っ越しがストレスになってしまったかな?
出産をして環境が変わったことが原因かな?
色々考え、自分を責めた。
そしてまた、こんなに悲しいのならもう猫は飼わない。そう思った。

でも今、私のもとにはおチビと同じキジ白猫のハクがいる。

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今でこそ保護猫カフェも増え、保護猫のボランティアをしている人もたくさんいる。
私の知り合いでも居るが、その人からハクを譲渡してもらった。
おチビが亡くなって、何年経った頃だろう……。
「人馴れも十分で、小さなお子さんが居るうちでも大丈夫。そう思った時、夕雪さんのところがいいと思いました」そう声をかけていただき、お見合いをすることに。
本当に懐っこくて可愛いハクに惚れ、うちに来てもらうことが決まった。


プロフィールにも書いたが、ハクはお母さん猫とコンビニの駐車場で物乞いしているところを保護された。お母さん猫は高齢でボロボロになっていたが、今も頑張ってボランティアさんの家で幸せに暮らしている。
やんちゃで悪いこともいっぱいするハクだが、この賑やかで楽しい毎日はハクがいてくれるからだと思っている。

どうして猫について書こうと思ったのか


いろいろなことを知って、何か自分に出来ることはないだろうか?
いつもそう考えている。
言われたのは、「今飼っている猫を一生大切にしていくこと。それがあなたの出来ることです」
ボランティアさんのように行動できなくても、私にも出来ることはきっと何かある。それはこの話を発信していくことだと思った。
書籍にしていただいた小説、「この胸いっぱいの好きを、永遠に忘れないから。」に、この保護猫について少し書かせてもらった。
編集さんの方からは「説教クサい」と言われてしまったが、どうしても伝えたかったことを書かせてもらった。この小説の読者は若い子が多いが、その若い子にはとくに知ってもらいたいと思ったからだ。

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もちろん中には猫が嫌いという人もいるだろう。だからと言って目をそむけていい問題ではなくなっていると思う。だって、野良猫はどこにでも、たくさん居るのだから。
いろんなところで目にする「野良猫に餌をあたえるな」という看板。それは近隣住民からの苦情で貼られたものだろう。
だけど、今の野良猫は自分で狩をして餌をとることなんて出来ない。ましてや家猫だった猫が外に捨てられたりしたら尚更のこと、餌を食べることが出来なく、死んでゆくだろう。
サクラ猫という耳をカットされた猫は、手術をしてもう繁殖はしない。
残りの命を全うするだけ。
だからって嫌いな猫に餌をあげなきゃいけないの?そういうことではない。
地域によって、猫を見守っているボランティアさんもたくさんいる。
その人たちを見かけた時、「野良猫に餌をやってる!」と罵るのではなく、温かく見守ってほしい。
地域猫として見守ってくれているボランティアさんは、置き餌やその場所を汚したりはしない。そのルールはちゃんと守っているはずだから。
ボランティアさんは一つの命を守ろうと奮闘している。それは上記にもあるように保護猫団体と同じこと。身銭をきって頑張ってくれている。

コロナの影響で……。

コロナの影響で、保護猫カフェも休業や時間営業を余儀なくされている。
それは猫とお見合いしたいという里親さんとも会わせてあげられなかったり、猫に新しい家族を探すことにも影響している。
もちろんカフェを開けなければ、猫たちのものを買うことも出来ない。
保護猫カフェやボランティアさんも、支援物資や寄付のお願いをせざるを得なくなっている。

ボランティアさんに寄付をしたり、支援物資を送ったり、私もほんのちょっとだけしている。でもいつか小説家として成功して、自分が稼いだお金で「これを猫のために使って!」とドン!と寄付したり、物資を贈れる人になりたい。
作品を頑張って書くこと、そして今はこうやって記事を書いて発信するすべしかないけれど……。

だからみなさんにも知ってほしい。
自分に出来ることは何か?
野良猫だって一つの命。
可愛いだけではない、猫の現実を。
その猫を守ろうと頑張っている人が沢山いるということを。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。 夢だった小説家として、沢山の方に作品を読んでいただきたいです。いただいたサポートは活動費と保護犬、猫のボランティアの支援費として使わせていただきます。