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インド滞在記 #12(2004年~2005年)

2004年12月4日~5日 ウダイプル:私の「当たり前」をぶっ壊してもらえる旅をしよう。

さて、約2週間ぶりの更新です(ズボラですみません)。前回はたしか、ジョードプルからウダイプルにクレイジーバスで移動してきたよ。というお話でしたね(自分で忘れている・・・)。

昨夜(12/3)は洒落乙なルーフトップバーでしみじみとキメたものの、やっぱり夜中は咳がひどく眠りは浅く、今朝は10時ころまでベッドでゴロゴロしていました。起床後はホテルで(優雅に、しかしチープな)朝メシを食らい、ゆっくりと外出の準備をしたあとで、ジャグディシュ寺院とシティ・パレスへ行ってきました。

前者ではヒンドゥー教徒らのお祈りする素朴な日常の姿がみられ、後者ではゆっくりと城内とそこからの眺め(金と権力に物を言わせて造らせたのであろう豪奢な非日常の場)を堪能できました。

以上・・・はい、今回も感動うすめな書きっぷりでお送りしております。はい、例のジャイプル回で書いたヤツ(慣れ)に相変わらずやられています。

「いくら本場の味でも、毎日カレー食べてたら、そりゃ飽きますがな。」という感覚に近いのでしょうか?(ある意味、ゼイタクな悩みです)

さて、(というわけで)昼メシには韓国料理屋に行って、キムチチャーハンを食べました。なんだか久しぶりにしっかり噛み噛みお米を食べた気がして、辛かったけど美味しかった~~~。その後、インターネットカフェへ入り、久々のEメールチェック。かなり溜まっていました。

メールのチェックなんて、日本にいたときには「当たり前」の作業すぎて、もう意識することすらないくらい "日常” に融け込んでいたのに、現在(2004年)のインドでは、まだまだ "非日常(≒特別)” なアクションです。わざわざ、場所を探して、時間単位でお金を払って、日本語フォントを読めるように(自分で設定して)、それでも通信速度が低すぎて送受信エラー等をくらったりして、四苦八苦してようやくできる代物です(少なくとも、旅行者の私には)。

この、私の 日常” → "非日常” の状態遷移というもの、いいかえると、私の「当たり前」をぶっ壊してもらうこと、は、自分だけの力ではなかなか実現できないので、強烈かつ劇的な他力で無慈悲に突然に陥れられるような感覚(に私は思う)なのですが、この体験こそが、個人的には本当の意味で、人生において最も価値のある勉強であり経験のような気がします。そして、それゆえに、この体験をいろいろな方法で誘発してくれる旅というものが、どうにもこうにも素敵すぎて、どうにもこうにも大好きに、感じてしまう理由なのじゃないかなぁ、などと考えるのです。

さて「不便さ」というものも、なかなかおもしろいもので、最初は腹立たしいだけなのですが、それが(自分では、一時的には)どうしようもないものだと理解した後では、その「不便さ」の結果として得られるものに対して、「不便さ」を感じる前よりも(同じアウトプットなのにも関わらず)価値やありがたみを覚え、かつ、そのアクションの背後にある感情や欲望や意思についてまで、考えたり意識したりするキッカケにもなりうるような気がしました。

小難しいことをウダウダと書かれて「うぜー!さっさと旅話に戻りやがれ!」とイライラしたあなた。はい、お話を戻しますのでご安心を。

メールをチェックすると、なんと 11/18 にアーグラで出会った日本人女子ちゃんから連絡が来ていたではないですか(ハッピー!)。そういえば、ウダイプルのレイクパレスに(11/30 ターゲットで)行くっていってたな~。再会はできなかったけど、メールが来ていただけでうれしい気持ち・・・ヤロウの思考は単純です。

メールチェックが終わると、時はすでに午後4時。この後どうしようかな~とブラブラしていたら、あるジュエリーショップのディスプレイが偶然視界に入り、なんとなく興味を惹かれ、中へ入ってみました。まもなく、同じ店にフィンランド人女子がご来店し、店のおばちゃんと彼女と、三人で片言の英会話を楽しみながら、いろんな商品をみていました。商品も、もちろん素敵なものがあってよかったのですが、それ以上にフィンランド人女子の値切り交渉術に感服したのでした。

貧乏旅行中にインドでお買い物をしたことがある方なら、懐かしさを感じてくださるかと思いますが、まずはおなじみの(売値と買値の)アップダウンゲームが始まります。

売り手は徐々に下げ、買い手は一気に下げた後に徐々に上げる、例のやつです。売り手も買い手も、強引に攻めすぎると破談に終わるので、繊細さとユーモア(これ結構大事)をもって、相手の挙動や変化を注意深く観察しながら、粘り強く交渉する必要があります。

大概の日本人観光客は、簡単に「こんなに安くしてやったぜ!」と自己満足状態にさせられながら、実は相場より(かなり)高い値段で、売り手に内心ほくそ笑みされながら、売っていただくということが多いのが実情ですが、このフィンランド人女性は、実は大阪の年季の入ったおばちゃんなんじゃないかと錯覚するくらいに、ガシガシせめて、かつ最終的に自分の希望額のかなり近くまで譲歩させつつ、見事に購入成功してらっしゃいました。

極めつけは、締めの「明日の晩御飯付きでこの値段ね」という名セリフ。そこまで突っ切れるのって、せこいとかそんなん抜きに、シンプルにかっこいー。

要は、自分も相手も本心に嘘をついたらいけないのです。自分の欲望を、ある特定の数値やパラメーターに、(もちろん主観的にならざるを得ないですが)なるべく正確に置き換えて、自らが本心で満足できる状態に持っていくという作業なんです。かつ、自分だけの独り相撲になるのではなく、対戦相手(勝負後はむしろ友達や仲間)と、どちらも本気で自分と相手に向き合い、全力で意識を向けあい意思を交換しあい、双方の満足状態に到達するための儀式なのです。

そう考えると、いっけん単なるお買物で、ただのドロドロした価格交渉も、崇高で美しい聖なる対話のようにすら、思えてきたのでした(たぶん少し言い過ぎました)。

さて、私はと言いますと、とても彼女の真似はできそうにないと本能で悟ったのと、店のおばちゃんもだいぶ渋い交渉の後だったのとで、この旅最大の出費をもって、いろいろ買ってしまったのでした。なかなかいいものがあったし、おばちゃんも信用できそうだったので、個人的には満足なのですが、あ~久々に物欲に駆られて買い物してしまったーと、一抹の後悔(まだまだ未熟者)も奥底に。戦利品は、ターコイズとメラガイトとシルバー。でもいいものが買えたと思う。今は満足ナリ(と自分を信じ込ませる)。

翌朝(12月5日)、次の目的地であるアーマダバードに向けて出発する予定でしたが、午前も午後もバスがあるという点だけは把握していたので、心の余裕から見事に寝坊しました。というわけで、午後のバスでいいや~と、とりあえずホテルをチェックアウトし、バス停まで歩き、切符を買おうとしましたら「夜10時にしかバスは出ない」と言われてしまいました。しょうがないし自業自得なので、夜10時発のバスチケットを買ったのですが、出発時刻までかな~り時間を持て余してしまいました。

シティ・パレスの辺りまで歩いて戻るガッツはなかったので、バス停から比較的近いバラの庭園というところと、バス停のまわりのその辺で、がんばって時間を潰しました。それにしても長い時間でした。さすがにヒマでした。

公園ではインド人の悪ガキどもが「金くれ、水くれ、菓子くれ」と大集結してくるし、相変わらず砂漠近くのお土地柄か日差しは強いし、咳は出るし、ほかにもいいお土産があるか探してみたけど大したものはなかったし・・・。

こうなるなら、ホテルの兄ちゃんがいうように電話でバス予約して、荷物を宿に預けて、シティ・パレスまわりで過ごした方がよかったかな~。

とか(まったくもって自分のせいなのに)グチグチいいながら、予定通りの夜10時発アーマダバード行きバスに乗り込んだのでした。
(つづく)

さて、旅もいよいよ終盤です。私としては、なんとか、今年中には、インド滞在記#3 から始まった「北インド方面をぶらり一人旅」編を書ききりたい、ただそれだけを今年の残された目標として、がんばります~。


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