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個別最適な学びの解像度をあげて、ICTやデータの意味を考える【前編】

今回は、学習指導要領や中教審での「令和の日本型学校教育」でもキーワードになっている「個別最適な学びの実現」について、解像度をあげてみたいと思います。
いつも長文になってしまい、とっつき難いところもあるのかもと思って、今回は前・後編の2回で書いてみます。

国も「「令和の日本型学校教育」の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学びの実現~と言っているくらいなので「まだ実現できていない」という前提になっていると思いますが、自分は必ずしもそうではない、一部では既に実現している、と感じており、目指す姿も見えていると思っています。
そしてそれを実現するためには、ICT(デジタル)やデータが必要になってくると考えており、それらを書いてみたいと思います。

「個別最適な学び」の具体は共通認識がない?

議論の前提として、そもそも「個別最適な学び」って、個々人で具体的なイメージはかなりバラバラなのじゃないか、と感じています。

  • AIドリルによる理解度に応じた弱点克服的な学び

  • 個々の興味・関心に応じた経験学習的な学び

  • 児童生徒の状況・状態に応じた指導・支援を通じた学び

  • 個々の認知や性格の特性に応じた学び

  • 同一集団のなかでの自由進度での学び

などなど。どれもこれも個別最適な学びの例だと思うのですが、以前から話す人によって思い描くものが違いそうだなと感じていました。

文部科学省での「個別最適な学び」の定義

では国としてはどのように定義しているのか。
中央教育審議会の答申でも「「令和の日本型学校教育」の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学びの実現~と個別最適な学びの実現がうたわれています。ただ、この文書のなかでは、個別最適な学びは言語定義されていません。

文部科学省の学習指導要領の教師向け解説資料には、個別最適な学びの言語定義があります。

詳細は原文を見ていただきたいですが、要約すると以下と言えそうです。

  1. 個別最適な学びは「指導の個別化」と「学習の個性化」と整理できる

  2. 指導の個別化は、一定の目標を全ての児童生徒が達成することを目指し、各々の児童生徒の特性や進度等に応じた学びを支えること

  3. 学習の個性化は、興味・関心等に応じた異なる目標に向けて学びを深め広げ、振り返りや見通しを持ちながら自ら主体的に学びを選択していくこと

各々がこの総論の一部を切り出した具体事象を「個別最適な学びのイメージ」として持っているので、お互い同じ言葉を使っていても嚙み合わない感じが出ているのだと思っています。

個別最適な学びはこれから実現?
特別支援教育ではずっと前からやっている


その中で、自分自身が「個別最適な学び」として考えている具体は、すでにずっと前から特別支援教育でやっていることなのでは、と捉えています。
イメージしているのは、特別支援教育のなかで行われている「個別の教育支援計画」とそれに基づいて支援や指導が行われていることです。

現場の先生方には釈迦に説法ですが、そうでない方は令和3年6月に個別の教育支援計画の参考様式が改訂になり事務連絡が出ているので、それを見ていただくのが良さそうです。

参考様式はこちらです。noteだとエクセルはそのまま表現できないので、画像化して貼ってみますね。

文部科学省「個別の教育支援計画の参考様式について」より
  • まず最初に本人の願いがあり(自主的、自発的な学習)

  • 得意なこと・好きなこと・苦手なことの項目を踏まえ(興味・関心等に応じた/子供一人一人の特性)

  • 支援の目標を定め(異なる目標/キャリア形成の見通し/学習課題を設定)

  • 目標の達成に向けた支援の内容を合意していく(一人一人の特性や学習進度、学習到達度等に応じ/子供の興味・関心・キャリア形成の方向性等に応じ)

  • そのうえでその結果を評価し、次年度以降にも引き継いでいく

カッコ書き部分は、個別最適な学びの定義がある原文からのキーワード抜き取りです。まさに個別最適な学びの定義の内容を具象化したものだと思っています。

個別最適な学びと特別支援の紐づけは妻のお陰

妻は今も現役教員ですが、一時期、特別支援学級を受け持っていたことがあります。その時の彼女は、個別支援計画を踏まえ、フルカスタマイズの授業計画を練っていました。
授業準備に頭使っている感じでしたが、「大変?」って聞くと「その子に向けて自由に設計できるから、実はかなり楽しい」と言っていたのを覚えています。
しっかりと本人や保護者から思いや状況を聞き取り、目標を合意し、状況に合わせて個々に応じた学びを支援していく。これぞ「個別最適な学び」と言えるのではないでしょうか。

2017年頃から「公正に個別最適化された学び」という言葉が良く出てくるようになったと記憶していますが、「どうなったら個別最適なのか?」という達成基準が見えなくてモヤモヤしていました。その時に妻とのやりとりを思い出し「個別の教育支援計画」に辿り着き、「これだ!」と思ったアハ体験は今でも忘れられません。

特別支援で出来ても、全体に広がらない理由・・・は後編で

つまりは、特別支援教育でやっていることを、そのまま全体に広げれば「個別最適な学び」は実現できるはず。
でも、実態は広がっていないから「個別最適な学びの実現」が中教審の答申になっています。何で特別支援で出来て、全体には広がっていないのか。
理由は大きく2つあると考えていますが、、それは次週の後編にて。
理由と一緒に、その実現方法も考えてみたいと思います。

先週からnoteを再開していますが、しばらくは毎週日曜日に記事をUPする日々を繰り返そうかな、と思っています。平日はNTT Comとデジタル庁のダブルワークでヤバイ感じなので、、
興味を持ってくださったら、是非フォローいただけたらと。

それではまた!

追記
これを書き終えた直後に、前回の最後で「学校教育のシステムアーキテクチャを描いてみます」と書いていたのを今、思い出しました。ヤバイ、忘れていた…。
上記もアーキテクチャの図は描き終えているので、今回の後編の後にUPするようにします。ごめんなさい…。

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