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学校ICTの日常化を阻む元凶は「授業支援システム」ではないか?③ ”授業支援システムにも転換点がきている”

間に2回記事を挟んでしまい時間が空いてしまいましたが、、、
今回で4回連載の3回目です。
過去2回分はマガジン化しておきましたので、以下でご確認いただけたらと。続けて読むとより分かるようにしていますので、併せて読んでいただけると嬉しいです。

3回目ということは、起承転結としては「転」ですね。
だからというわけではないですが、話を転じて、タイトルに自己反論をするような授業支援システムの役割や必要性について書いてみたいと思います。
そもそも1回目は公開授業・研究会の課題を、2回目は公共調達制度の課題を書いており、授業支援システムはそれらに間接影響してものなので、元からあんまりタイトル通りになっていないのですが、、、

ちなみに今回は実在の人物が出てくるのでフィクションではないです(笑)

3人に1台と1人1台は決定的に違う

まずは今回の記事での議論の前提となる部分です。
以下でこの章のタイトルと同じことを書いています。

情報端末が3人に1台と1人1台の環境の違いについて、上記で書いたことを要約すると以下です。

従来目標としていた3人に1台
・共用なのでみんなのモノ
・「たまに使わせてもらう」で主に「授業で使う」
・「どんな時に使うのか」を先生が決める

GIGAスクールの1人1台
・専用なので自分のモノ
・「必要なときにいつでも使える」で「授業以外でも使える」
・「どんな時に使うのか」を学習者が決める

この違いをしっかり意識し、3人に1台=共用環境でのICT活用を発展させ、1人1台=専用環境における日常的な活用の導線にしていかなければ!!となるはずですが、、、

3人に1台と1人1台の活用法に連続性はない

残念ながら「3人に1台」と「1人1台」の概念には連続性がないと思っています。

第1回でもご紹介したGLOCOM 豊福先生の上記のブログでは、日常化の導線を以下のように紹介しています。

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この図のなかでは「頻度」「利用者」「場面」で大きく5ステップに分かれています。

・Aは頻度が月数回、利用者が教師、場面が授業
・Bは頻度がほぼ毎日、利用者が教師、場面が授業
・Cは頻度がほぼ毎日、利用者が児童生徒だが教師指示のもと、場面が授業
・Dは頻度が毎日、利用者が児童生徒で教師指示に限らず、場面が授業
・Eは頻度が毎日、利用者が児童生徒で、場面が授業に限られない

上記の図のなかで私が感じたことは、B→Cに大きなジャンプがあり(ほとんどの学校はこの溝を越えられていない)、C→Dにはさらに別質の大きなジャンプがあるのでは、です。

B→Cへのジャンプでは授業形態の変更が求められ、また先生の指示通りに児童生徒が利用する状態を担保する必要があるため、かなり技能を要求されます。そのため、現状ではB→Cの溝を超えるジャンプができていない状態が多いです。

C→Dは先生の意識の変化が求められるはずです。ここがいわゆるICTが教具なのか文具なのか、の部分かと思います。ここは技能の溝ではなく意識の溝なのでB→Cとは別質の要求になります。

自分が教員であるならば、A→B→C→D→Eというステップは自信がなく

A → B → E → D → C

というステップを踏みます。
Cは技能に依存するのですぐに対応できる自信がなく、EやDは自分の気持ち次第なので気持ち変えれば良いや、と。

これを読んで「そうそう、そんなの当たり前でしょ!」と思った方や「なんでこんなことも分からない人が多いのか」と思った方、それはアンタが変態なだけです(失礼)。
持論ですが、人の意識を変えことは最も難しいことの1つだと思っています。極論ですが、外部の働きかけで変わるのであれば元々変わる人だった、ぐらいに思っています。

自分の会社でもDX(Digital Transformation)を旗に構造的な改革を進めようとしていますが、正直なところ同じような前提となる意識改革に一番苦労しています。

別に学校だから先生だからではなく、日本全体で意識改革は課題になっています(いつの時代もそうでしょうけど)。

そうなると授業外で如何にICTが使われて児童生徒の日常に溶け込むか、がカギになってきそうだな、と。そして「どんな時に使うのか」の判断が児童生徒に託されたとき、学校ICTにおけるDXが起こるはずです。

それでも‥日常化が広まるカギは授業活用ではないか

もう何回自己否定しているのか分かりませんが、、自分の思考の変遷はいつもこんな感じなので、、ご容赦ください。
それでも‥日常化を広まるカギは授業活用ではないか。

「それでも」は自分に対する問いかけで良く使います。
自分は直感で出てきた案の方が妙案が多く、自己否定を繰り返しつつ「それでも」で抗って案を磨く手法をとっています。
その辺りはマリーダさんに教えてもらいました。

いきなり異質なものを差し込んでしまった...。真面目な内容が連続していて息が切れているのかも...。

話戻って、、、「授業外での活用」や「どんな時に使うのかを児童生徒が決める」は、やはり先生の意識変化が必要なので容易ではないです。

例えば、文部科学省が提示しているGIGAスクールの補助申請書類のなかで、ICT活用計画を記す書類があります。その記載例は以下のようになっています。

<2020 年度>(目標)
・同年度に整備を行う各学年(小5・6、中1)において、整備後、各クラス1日1~2回以上活用
・1人1台未整備の学年においては、各クラス週1回以上活用
<2021 年度>(目標)
・整備済の各学年(小5・6、中1)において、各クラス1日2~3回以上活用
・同年度に整備を行う各学年(中2・3)において、整備後、各クラス1日1~2回以上活用
・1人1台未整備の学年においては、各クラス週1回以上活用
(以下略)

上記を見ると単位は「人」ではなく「クラス」なのです。
そこから読み解けるのは「使うときを先生が決めている」こと
また、授業外で児童生徒が様々なことに使うなら、それはクラス単位の話ではなくなることも多く(部活や委員会やら)、使ったり使わなかったりなので単位がクラスは不自然(または不完全)です。

大元がこれで「意識を変えろ」は私からすると悪手です。
「学校や行政はこれだからダメだ」という声も良く聞きますが、企業でも全く同じです。意識を変えろと言うが、実運用では正反対の行動を促されるケース。

それでも‥「まずは授業から」は方法論として有効だと思ってもいます。
文部科学省もそういった軟着陸(ソフトランディング)を意識してのではないでしょうか。
理由は、それがキャズム(深い溝)を越えるための方法だからです。

アーリーマジョリティの先生を攻める

マーケティングで有名な理論にキャズム理論、またはイノベーター理論というものがあります。

詳細は上記リンクや「キャズム理論」でググってもらえたらと。簡単に要約すると

・製品やサービスに利用する人は5つのパターンに分かれる
 ①イノベータ:「新しい」が超好き。すぐ受け入れちゃう。
 ②アーリーアダプタ:「新しい」が好き。トレンド敏感。影響力ある。
 ③アーリーマジョリティ:実用重視。じっくり検討。慎重。
 ④レイトマジョリティ:周り次第で採用を決める。懐疑的。
 ⑤ラガード:とにかく「新しい」は苦手。流行に鈍くかなり保守的。
・①~⑤の割合はどの市場でも大体同じ(③と④で70%近くある)
・②と③にはとてつもなく深い溝(キャズム)がある
・キャズムを越えて③に広がれば市場全体に広がる

という感じです。図にすると以下のこんな感じです。(先日の自治体ピッチでも提示している図です)

イノベーター理論

現状の学校でのICT活用は、とてもキャズムを越えている状況とは思えません。②アーリーアダプタに広がってきているような段階でしょうか。

キャズムを越えて市場全体に広げるには、③アーリーマジョリティの先生方がポイントになります。
そして意識変化を求めてもそう簡単ではなく、③の先生方は「まずは授業で」になるはずです。

そういった前提を踏まえると、直近のGIGAスクールの1人1台環境が整備されていくなかでは、3人に1台と1人1台での活用に本質的に連続性はなくとも、まずは舞台にあがってもらうしかないと考えています。
良い習慣を作ることで自分を改善するという心理学原理は、個人的には実感とともに信頼しています。意識を変えるには習慣から。
また、先生方であれば舞台にあがることで、例え演目が違っていても気付くこともあるはず。意識を変わるときへの筋トレにもなると考えています。

アーリーマジョリティが日常活用するステップ

キャズムを越えてアーリーマジョリティの先生がICT活用を広げていく順序を、先ほどのステップの図を少し分解して書くと以下のような方法が効果的だと考えています。

学習のICT活用のステップinada

高度な技能が必要な「C」を上下に分割し、先生方が負荷少なく取り入れやすい活用を「C下」、児童生徒が日常的にICT活用していれば高技能の先生でなくとも可能な活用を「C上」とします。
そのうえでのステップは

A → B → C下 → E → D → C上

ではないかと考えています。
変更点となるC下 → E → D → C上のポイントは以下です。

・C下で活用が進めばICTへの意識が変化
・授業外でもやってみっかでEにチャレンジ
・Eやってたら教育/学習観が変化しDをやってみっか
・児童生徒も先生も慣れてトラブル対処も可能になってC上も可能に

こんな簡単ではないと思いますが、、、
アーリーマジョリティを攻略する基本戦略としてはこういう順序が良いと考えています。

授業活用における授業支援システムの役割

そして「C下」の段階において授業支援システムが使えるのでは、と思っています。授業支援システムも転換点がきているように感じているためです。
それは本連載1回目に書いたように、精魂込めて準備した公開授業ではなく、もっと簡素ないつでもやれるような活用です。

例えばこんなのとかどうですかね。

図工の授業での作品作り。
毎時の最後に制作状況を写真で撮ってコメント書いていくだけ。作品制作と同時に制作記録まで作ってしまう。皆の制作状況も分かるし、毎時での振り返り(リフレクション)にもなる。
ちなみにこんなの保護者からすると超見たい
使うタイミングを先生指示で一斉にドン、ともならなそうでシステム的にも先生負荷の面でも低くそうです。
これを簡単にできてしまうのが、未来の文房具たらんロイロノートのすごいところですね。

もっと普通の授業っぽいのであればこんなのとか。

知識定着に向けたドリル学習の授業ですが、一定の段階までいったら振り返りをするステップを1つ挟んでいます
そのステップのお陰で自分への振り返りだけでなく、皆の振り返りが共有されるので(先生の監視のための画面共有ではなく、児童同士が情報を共有するために画面共有)、メタ認知が深まりそうです。
しかもこの実践も児童の進度次第で使うタイミングが登場するので、先生指示で一斉にドンとはなりません。
黒板に進捗状況が表示されるのは、企業でもやっているカンバン方式と同じなので、とても素敵なアイデア。最後のステップは先生役をやることになるので、友達の振り返りを見られているので先生役もやりやすい
とても練りに練った授業設計ですが、仕掛けが分かれば実践は難しくなさそう。そして個別学習のはずがいつのまにやら協働的な学習になっています。
情報のリアルタイム共有に強いスクールタクトの良さ如実に出ている実践です。

勿論、授業外の取り組みにもライトを当てていって、先のステップが見えてくることも重要です。C下とEの間ぐらいの取り組みとしてはこんなのも。

活用が日常化していくと、新型コロナによる休校に対し遠隔ホームルームなんてことも可能になってきます。
この事例の場合は、そもそも休校になってやり始めたわけではなく、登校時もやっていたはずです。
対面できる状況でも授業支援システムを使ってホームルームをやっていた、ということはそれだけ情報の共有や蓄積に価値があるということだと思います。

先生の意識変化のカギは「児童生徒の変化」

こういったICT活用の行動の積み重ねが、意識を変えるキッカケになると考えています。
そして、母や妻、今まで見てきた数多の先生方のほとんどに共通するのが「児童生徒の(良い意味での)変化」によって意識が変わることです。

もうこれはそういう種族だと思えるぐらいそんな輩ばっかです(失礼)。逆に言えば、児童生徒の成長が見られればある程度の変化は許容できる種族に見えます。
いやはやチョロいっす(超失礼)。
※でもそれが一番難しいのでチョロいは嘘です

なので、授業実践の共有だけでなく、児童生徒の成果や変化が分かるような共有が増えると意識変化に近づくのでは、と考えています。

授業支援システムと関係ないですが、この記事とか個人的には超好きです。

子供の成果がこうやって見えてきて、それらが実践とセットで共有されると、先生方の意識が変わってくるのでは、と。
(お会いしたことないのに勝手に書きますが、鈴木先生と児童たちの関係性がフラットで、かつ先生が見識と経験のある大人として認めれられているのが超ステキです。)

授業支援システムであれば、そういった成果も自動で保存されてポートフォリオになっていきます。
また、その活動データを分析していけば、児童生徒の変化を可視化することも可能になってきます。
その辺りは次回に書いていきたいと思います。

授業での活用がポイントになると考えると、日常利用への導線はむしろ授業支援システムがカギになるのではないか。
それが実現可能な授業支援システムが増えてきており、GIGAスクールがその転換点になると感じています。

おわりに

ローカルブレイクアウトの記事と同じぐらい書きたかったことだったので、かなり長くなってしまいました...。
今後の仕事は今回書いたことを実現していくことに、結構な時間を割いていくことになりそうなので、力を入れて書いてしまいました。

次回は最終回の4回目として『ロイロノート vs スクールタクトの二強時代へ』として、今後の授業支援システムに求められるものやその展望を書いてみたいと思います。

なんか真面目な記事がずっと続いているので、次回こそは自分らしく少しバカっぽくやりたいと思います。

ではまた。

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