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【最速解説】中学校のスマホ持ち込みって認められるの?(文科省有識者会議の内容補足)

うーん、期間が空いてしまいました。
本業がかなり忙しく、書く時間が取れていません...。このままだと忘れられてしまうので(そもそも覚えられてもいない)、話題になっていることでも書こうかなと思ったところ、どうも以下について議論が盛り上がっているようで。

ちょうど今日がその文部科学省での審議会で、しかもYouTubeで公開だったので、見ながらメモを書いてみましたので、それを共有します。

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Twitterとかでは賛否どっちも(否の方が多そうでしたが)でかなりのツイートがあったのですが、肝心の会議を見ている人は80名弱...。
うーん、なんか脊髄反射での賛否が多いってことですね。本当に関心があるなら1次情報に近いところを見た方が良いのになぁ。
※リアルタイム配信だけでだったようで今は非公開になっています。残念。

ちなみにランチにカオマンガイ食べながらメモしていました。今は口がニンニク臭いです(無駄情報)。

審議のまとめの前提

今回の審議は、平成21年に文部科学省から各教育委員会・学校に出された「学校における携帯電話の取扱い等について(通知)」を見直すことからスタートしています。
もう10年以上前の通知ですが、携帯電話の学校への持ち込みはNGですよ、という通知文です。これに対し、現在のスマホ等の普及率などの社会情勢と安全管理の観点から見直しが必要では、という背景です。

まずは、今回のとりまとめの前提となる部分とみてみます。以下に資料があがっています。

まずは審議のまとめの対象範囲と用途です。

・「携帯電話」の定義はガラケー・スマホ・子供向けケータイで、携帯ゲームや音楽プレイヤー、タブレット等は含まず
・通学における安全確保や連絡手段としての「携帯電話」が対象であり、授業・学習でのICT利用、BYOD (Bring Your Own Device)は本とりまとめの対象外
・最終的には各教委・学校の判断であり、今回のはその判断のための考え方を示すもの

私のnoteを読んでいる方だと「授業・学習でのICT活用は対象外なの?」「コロナであれだけ活用しているのに」「GIGAスクール分かってんのか?」とかって感想をお持ちかもですが、この会議では「通学における安全確保の手段」として、GIGAスクールが始まる前の昨年度から議論がされています。

今からとりまとめの範囲を変更、はなかなか酷な話なのでこういうものだとは思います。文部科学省でも「児童生徒課」が主管なので、生徒指導や通学安全の観点なんでしょうね。

通学時の安全確保と生徒指導=リスクからの議論が本会ですが、本来は踏み込んだ学習利用についての議論との両輪で整理が必要なはずです。
その辺りはGIGAの流れの延長で今後議論、となるのではと思います。ただ今後、少なからずこの審議のまとめの影響を受けるとは思っています。

審議のまとめ(素案)の主な内容

審議のまとめの素案が提示されていて、そこを元に議論されています。背景は以下のような感じ。

[背景]
・携帯電話の児童生徒への普及率を見てもインフラになりつつある
・登下校の安全管理の側面から、緊急時連絡先として有効な面もあるので、必要な措置や体制のもとで持ち込み許可もあるのでは

持ち込み許可には「必要な措置や体制」を、ということでその概要が以下。

[必要な措置や体制]
・ルールが必要で、児童生徒や保護者が参加して作る方が良いね
・責任の所在を明確化が必要で、保護者から同意書あると良いかも
・児童生徒へのルールやモラルの指導、保護者にも協力を求める必要がある
・保管方法はいろいろだけど決めておいた方が良いよ

そのうえで、学校種別の見解が述べられています。

[学校種別の見解]
・小学校:持ち込みは引き続き原則禁止(やむを得ない事情除く)
・中学校:持ち込みは原則禁止も一定の条件のもとでは許可を
・高校:教育活動に支障がないように配慮しつつ学校で判断してね
・特別支援学校:高校と同じで配慮しつつ学校で判断してね

通学における安全確保が主目的のため、法令での通学距離(小学校なら4km、中学校なら6kmとか)と、帰宅時間(部活等の有無)などで見解を分けている感じです。あとは学齢ごとの普及率(高校はほぼ100%なので学校判断でしょ、とか)が判断材料のようです。

話題の元になった報道では「中学校へのスマホ持ち込み認める方針」だったはずですが、ちゃんと見てみると違いますね。
記事によって議論がミスリードされていたのが良く分かりました。文科省の方も委員の方々も、なんかお疲れ様です...。
ただ、中学校は原則持ち込み禁止だけど一定の条件のもとで認める、というのが前回との大きな違いです。これが報道に繋がっているようですね。

[まとめ]
学校や教育委員会、児童生徒、保護者それぞれが自分ごととして、その在り方を捉え、意識を高めていくことが重要。そうすることで、自分たちのルールとして守っていこうとする素地が醸成されていくのでは。

ごもっとも。ただ、これをどうやって実行するかは、言うが易し行うが難しなんですよね。

10年で1度に改訂で良いのか?良いはずない。

議論のなかでは「文科省の通知文は強い影響があるので、原則禁止と書くと禁止ありきになって本当に必要な子供が持ち込めなくなるのでは」という議論や、未就学でのインターネット接続率があがってきている(保護者がデジタルネイティブに近い世代になってきている)話や、事務局の文科省の室長自らが自身のお子さんの持ち込み申請を学校にした実体験など、結構面白かったです。

話が逸れますが有識者会議としては委員同士や事務局との信頼関係が見え隠れして、なんかちょっとホッコリした気にもなりました。
※個人的には座長?の竹内先生のしゃべり口が聞きやすく面白くて、ファンになってしまいました。今度、この手の話のときには突アポで話を聞きに行こうかしら。

その竹内先生が議論のなか以下のような趣旨のことを仰っていました。

このコロナ禍により、社会におけるICT活用は10年進んだのではないか。
以前は10年ひと昔だったが、この手のことは10年ではない。このまとめも数年持つか、極端には半年で一部変更が必要になる可能性すらある。
社会側でこういった課題をどう受け止め、随時更新していくのかが課題だ。

私も、教育の情報化政策において、様々なガイドラインや技術仕様、方針などの策定に端っこで関わったりしていますが、上記がどれにおいても課題になってきています。
この辺りは国事業ではいつも課題で、もう少し民間側でフォーラム的な運用をしないとなかなか厳しいのではと感じています(そしてそれが難しい...。)。

なんだかんだ学校への要求が増えそう

今回の報道に対する反発も、批判の大半は「また学校の仕事を増やすのか」というのが大半のように見えます。
今回のまとめでは、学校への負担とならないよう相当配慮して策定しているのが見え隠れしていて、相当苦慮されたのだろうと思います。
ただ、実態としてはやはり仕事は増えるのだろうと...。

批判の多くは「携帯電話は保護者が買い与えているのだから、保護者がきちんと教育をするべきだ」というのは正論で全くその通りです。
一方で、正論が通じない親に限って問題を引き起こす、というABC予想ぐらい間違いないけど定理にはなっていない事象もあって、全ての子供たちに行き届くように、とすると学校という機能を使わざるを得ないというのも実態なのだと思います。いやはやホント、難しい。

方法論としては、携帯電話を子供に買い与える際のルールなどをより携帯事業者に課す、とかもありますが、子供名義じゃない場合もあるのですよね。
または、もういっそ学校の仕事が増えることを諦めて、その分、ヒト・モノ・カネを投下するとか。
ただ、ヒト・モノ・カネを投下しても、学校は効率的にそれらを使えるような体制になっていない気がしているので、そこから変えないといけないのかも、と思っています。
公共機関が肥大化するのは個人的に好きな政策ではないので、この携帯電話持ち込みだけではなく、それこそ部活指導などの問題も含め、半公共的な仕組みで社会における学校に求められる機能を実行できるようにしていかないと、全般的に持たない感じがしますね...。
うーん、ツラツラ書いていて悩みが大きくなり過ぎてしまった。でもちょっと考えておいた方が良さそうなテーマな気がするので、頭の片隅に置いておくようにします。

おわりに

久しぶりに書きましたが、少し学習におけるICTとは離れた内容になってしまいました。
ただ、以前も以下で書きましたが、今のGIGAスクールで入れた情報端末の更新時には、間違いなくBYODの波が来るはずです。

今回の審議会ではBYODのことは対象外でしたが、必ずこの審議の先にはそれが出てくるはずです。
今日の審議のなかでも、携帯電話を持つもの・持たざるものの分断についても議論があり、BYODを考えるなら就学援助項目への追加や、先日の通信費で書いたような生活保護の対象範囲とする話なども必要となってきます。
国として議論にも一定の時間がかかるはずです。その意味では、すぐにでもそれらが始まる可能性もあります。

この辺は注視しつつ、我々のようなサービスを提供する事業者も、スマホでの活用を前提に置いたサービス設計は絶必になることは理解しておく必要がありそうです。

次はもう少し学校のICT寄りにしようかと思います。ICT支援員の話とかが良いかな、と。

ではまたー。



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