河童43

それからすぐに、河童への供え物を持ってきた百姓たち。
そして干からびた河童の腕とそれにまつわる昔ばなし。
あっけなく不気味なやつは河童とな。
そして逃げるように立ち去る百姓たち。
「うーむ」
坊主の口から失意の言葉がこぼれ落ちる。静けさの中その言葉を聞いて我にかえる娘。
「申し訳ございません。私がここに来たばかりに」
うなだれる。
それぞれが
「誰をせめてもどうなることでもない」
うつむき悩んでいる。悩んだところでなにも浮かばず。
娘が静かに周りをみまわし。
「ここから出ていけば、私が出ていけば、ことは収まりますでしょうか」
役にはたたない娘の言葉だけだった。

18

小雨が降ったりやんだり。
月が出たり隠れたり。
そんな夜の中にいくつかの気配。
草むらの中に立ち尽くし社を見つめる夜の影。
猿のように座り込み、社から出てきた男たちを見つめる影。
ひとつの影が動きだし、蛙が歩くごとく男たちの後ろを静についてゆく。
別の影は社から漏れる明かりに近づいてゆく。影はひとつではない。
隙間に節穴。
中を覗ける場所に己の黒い目玉を近づけてゆく。
覗く目玉に怪我をした若者の姿。剃りあげた頭に不器用に伸び始めた髪があるたくましい男の横顔。
そして、生気の感じられない娘の後ろ姿が見えている。
影は娘の後ろ姿を見ると興奮し、「カーッ」と喉の奥から音を絞り出す。
影の出す喉からの音を聞いてピクリと動く娘から、影は自噴の無くなった腕へと顔を向ける。
有るはずだが無い腕を見つめ、流れ出る血を止めるために塗りつけた泥の隙間から、脈打つ痛みを眺めている。
思い出す痛みの原因と変えられない今のありように
「ガーッ」と影の底から痛みと悔しさの音を出す。
その行為は影の血を腕から絞りだし、ポタポタ落ちる滴は影の怒りを残った片腕へと伝える。
伝わる怒りは残った左腕を振り上げさせ、身体を使い木の壁へと叩きつけさせる。

「ドンッ」という響きと
「ミシッ」という少し板が避けるような音。
「なんだっ」
社の中が固まる。
背筋を伸ばし固まる皆は、音がしたであろう、響きが起こった方角であろう壁へと身体を向ける。
娘などは自分の背中を叩かれたように、膝で立ち上がり、響き伝わる衝撃の方を見つめていた。

社の中に漂う緊張。
裂けたであろう場所を目だけで探す。

自分とか周りの友人知人とか、楽しめるように使います。何ができるかなぁー!(^^)!