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小説|ともに生きる③

敏夫と珠美は病院を出た。

医者からは過労による貧血だろうから、よく休んでくださいと言われた。
珠美は「今日はありがとうございました。」と家の前で敏夫の車から降りた。

この所無理してたのかもしれないなと振り返りながら、家に戻るとキッチンテーブルの上にある先輩が買出してくれた袋が目に入った。

「そういえば、中身出して整理しなきゃ。」
病院に行った安心感からか、珠美は少し気分が良くなっていた。

袋の中にはインスタントのお粥やラーメンやポカリスエットがたんまり入ってた。

あー、先輩に気をつかわしちゃったな。今度、ランチとかおごった方がいいよな〜
そういえば、先輩って家でも家庭的な良い夫って話きくし、会社でもこんな私に気遣ってくれて、ほんと優しい人だなぁ。。。
私も将来は先輩みたいな優しい男性と結婚できたらいいな♡♡フフフ

と、珠美はブツブツ独り言を言いながら片付けた。

珠美には歳の離れた姉がいた。
姉は既に結婚していて近所に住んでいた。姉は子供がいない事もあり、話し相手がほしくなるとたまに珠美の家で一緒にお茶したり、時々夕飯を食べたりしていた。

珠美は袋の中身を整理したあと、ふと姉と話したくなり電話した。
「プルルル  プルルル・・」
繋がらなかった。
「お姉ちゃん、仕事かー」とLINEのメールで伝言だけした。

「今日、体調悪くて仕事休んだー」
「少し回復したから、なんとなく話したくて電話したの」
「仕事中にゴメンね🙏」

2時間後、姉から電話がきた。
「珠美、大丈夫なの?!今日は仕事が早く終わりそうだし、帰り寄るからゆっくり休んでて。色々買ってくからさ」
「あ、うん。お姉ちゃんありがとう。でも買出しは大丈夫かも。必要なものは大体そろってるし、お姉ちゃん荷物になるだろうから大丈夫だよ。」
「ほんとに?!とにかく、心配だから顔だけでもみにいくね。珠美の大丈夫は一番信用できない言葉なんだから💦」
「ありがとう、お姉ちゃん。」

珠美は大学卒業後に実家を出て、両親にはほとんど会ってない。その分、近くにいる姉といる時が唯一心が安らげて、珠美は甘えっぱなしだった。一方の姉も結婚して15年くらい経つが、子供を授からなかったのもあり、年の離れた妹が可愛くて仕方なかった。

「珠美〜?!大丈夫〜??」
と姉はインターホンを鳴らさず、合鍵で珠美の家に入ってきた。

「・・お、お姉ちゃん」
ベットから起き上がりながら、珠美は返事をした。

「そのまま、寝てて大丈夫だから。珠美もお茶飲むでしょ?温かいお茶入れるから、そのまま寝てて。」
「うん、ありがとう」

その後お茶を飲みながら、珠美は姉に今日の出来事を話した。

「ねー、でもその先輩って結婚してるんでしょ?!珠美、変なことされたりしてない?大丈夫??!」

「え?!変なことって何??別に普通に仕事でお世話になってる先輩だよ。」

「いや、でもね、あなたは少なくとも女性だし、先輩は男性でしょ?
よくセクハラ紛いな被害とかあってる子、私の友達にもいたからー」

「あー、その辺は大丈夫だよ。先輩は良き夫としても社内で有名だし、それに多分私の事も女ってより妹的に思ってる気がするよ」

「ふーん、珠美がそう言うなら、いいけど。。。。珠美、仕事もいいけど、そろそろ誰かいい人みつけたら?」

「もーうるさいなぁ、親じゃないんだし、私は私でやりたい事あるし、ほっといてよ。
・・・でも、結婚するなら先輩みたいな人がいいなぁって思ったりはしてるけどね。」

「あー!珠美!不倫はダメよ!絶対に!
相手は妻帯者ってのを忘れないようにしないと!」

「ナーンて!冗談だよぉ、お姉ちゃん本気にしないで笑」

珠美は姉からそんな事言われると思わなくて、内心驚いていた。

「話してたら元気そうだし、夕飯の準備しないといけないから、今日はそろそろ帰るね。」

「ありがとうお姉ちゃん。来てくれてほんと嬉しかった♡」

「ゆっくり休むのよ!今度倒れたら、その先輩じゃなくて、私を呼びなさいね!」

珠美は姉がなぜそんなに先輩と私とのことを言うのか全く理解できなかった。

姉が帰って、スマホを見るとLINEがきていた。
あ、先輩からメールだ、、、

「体の具合はどお?」

珠美は、どーせ仕事のことで私がいた方が都合がいいんだろうなと思い
「大丈夫です!土日休んだら治ると思うので、月曜日は出社します😊🦋」と返信した。

あくまでも先輩とは仕事上の関係。頭ではわかっているけど、姉との会話以降、珠美の心の底は少しモヤモヤしていた。

……続く

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