自分の心の芯を思い出させてくれた本
わたしに馴染みの景色だからかもしれない。過去に身近な人の目を通して、体感した世界だからかもしれない。読むほどに、胸がぎゅっとなる。切ないはずなのに、不思議とどこか心地よくて。
こんな大切なことを忘れててごめん。おかげで自分の芯に触れれたよ。日常の中でおざなりにしてた、わたしの生きてこうって決めた理由。思い出せてよかった。読み終えたとき、胸の内に灯りがともりました。
本日紹介したい本はこちら。「きのうのオレンジ」
わたしは、すぐさま外へこぼしてしまいがち。感じたと同時に表出してしまう、いわゆるダダ漏れ人間。対して主人公は弱音を吐かない人です。己の中にそっと仕舞いおくことが出来る人。この本を読み、どんな思考や感じ方をもって、内に留めおけるのかを初めて理解しました。
決して無理やりでも、多大な労力を払ってでもないんですね。丁寧な心理描写ゆえなんだろうな。手に取るように、そもそもそんな思考を持ち合わせない私もストンと納得がいって。主人公は呼吸をするように、自然とやさしき人。自分にも、そして周りにはもっと、もっと優しき人。春のような暖かさを感じました。
本のあらすじとなりますが、ある日突然、がんを宣告されるところから物語は始まります。病院で働くわたしにとってはある種、日常でもあって。病院とはそういう場所。医療者であるがゆえ、見慣れた光景ともなってる。
でも自分が、自分の家族が患者となったとき、日常と構えてられるのか。いえ、真っ逆さまの非日常へなります。いかほども理解し、見聞きもしてたはずなのに、「わたしの身に起こるはずもない」と思いたくなるものでした。
死に向き合うとは、決してルンルンハッピーでも、むちゃ楽しいでもない。真反対にある、重苦しい、しんどいことの集合体。今も思います。でも忘れちゃいけない、きらめきがある。一生懸命に輝かそうとしてる、尊いものがある。そばにいてその温かさを受け取った人間は、次へリレーをするように、心の中に宿して生きてこう。わたしは思っています。
秋の夜長に読む一冊にいかがでしょうか。おすすめです。
では また