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京都旅(2)

夕食は目的の店の最寄り駅の向島周辺をネットで調べて、天ぷら屋に決めた。
鱧や鴨、湯豆腐、京野菜なども出すようで京都らしさを味わえそうだ。
電車に乗るが、向島駅に向かう路線とは違ったようで、別の駅で降りた。
そこの駅からでも天ぷら屋までは15分で行ける。
それに天ぷら屋は18時開店だったので、駅から歩けば丁度良い時間に到着する予定だ。

その街は京都といっても普通の住宅街だった。
ただ集合住宅のデカさ、棟数の多さには驚いた。
それから、東京の23区内のように、学校や幼稚園のグラウンドや敷地面積が小さかったのが印象に残る。

天ぷら屋の前に到着すると、店の暖簾がしまわれていた。
戸口には張り紙があり“本日、臨時休業”と書かれていた。
また10分ほど歩き、普通の居酒屋に入った。

地元にもあるような居酒屋で、地元にもあるようなものを食べた。
最初のビールを飲み干し、四国でつくられた日本酒を飲み始めると、いつものように取り留めのない話しに花が咲いた。
何の話からの流れか(呑んでいる時など大概そういうものだが)モアイ像は地中に胴体部分が埋まっているだとか、月の裏側には未確認飛行物体の基地があるだとか、ある宗教では勧誘の際に念力が使えるようになると言って誘うだとか、そんな類いのどうでも良い話で盛り上がった。

20時になり、目的の店へ向かった。
また歩いて15分の場所だ。

〈目的の店〉というのは、我々3人の内のひとりの娘がこんど結婚する事になっていて、親同士の顔合わせなど畏まった事はしないという事で、その代わりに相手の母親の経営するスナックにおじゃましようという算段だった。

娘さんを通して伺う事は伝えてあった。
その娘さんの父親である同僚は、少し緊張した面持ちで店の扉を開いた。
綺麗な女性が京都特有のアクセントで迎えてくれた。
事前に知らされていた年齢より若く見えた。
U字型のカウンターの奥には常連であろう年輩の男性客が一人座っていた。
同僚が土産物をママに渡し挨拶が終わるのを待って、私も支店長から持たされた土産を渡す。
支店長から土産を預かる際に中身を訊くとお茶だと言うので、京都に喧嘩を売りに行くみたいじゃないですかと言ったが、ママは同僚が渡した土産も私が渡した物も中身は確認せずに奥にしまいに行った。

同僚がママと娘、息子の事を話している間、私は常連客の男性に声を掛けて話をした。
後から来た別の常連カップルも加わり、京都で何を食べるべきか訊ねると、京懐石がいいんじゃない、ということになった。
納得したフリをしたが、京懐石って括りが曖昧で、ひとつひとつの料理で何か特別な物はあるのか知りたかった。

常連客達が歌をうたい始めると、ママが私達にも歌うようにすすめた。
私ともう一人の同僚が遠慮すると、ママとこれから親類になるはずの同僚が歌い始めた。
何故か別れの歌を歌い始めたが、何も言わずにおいた。

22時に店を出た。
帰り際、ママが私達3人に手渡してくれた土産袋には“東京 新宿“と書かれてあった。
天然で自由で面白い人だと思った。

宿は連泊で三条にとってあったので、また電車に乗った。
10分歩きホテルに着いた。
3人とも歩き疲れたので、チェックインしてそのまま部屋で休むことにした。
一人一部屋で借りてあり、各々の部屋に向かった。
何故だかみんな階が違っていた。

私はユニットバスのシャワーを浴び、手帳に今日の日記をつけた。
後から見返すと、手帳のその日の欄には

今のところ京都らしさをあまり味わえてない。
京の人は話しかけても最初、対応がつれない。

と書いてあった。

スマホ内蔵の万歩計を確認すると、32,587歩だった。



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