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読書の方法

はじめに

私は読書が大好きである。
なぜならそれまで思いもしなかった、そしてこれからも考えつかないであろう事柄が、両の手の平に収まるほどのサイズの紙束に閉じ込められているからである。
それは魔法であり、小宇宙である。ページを開いた先には無限の世界が広がっている。

当記事はそんな無類の読書好きである私が、これまでの経験の中で培ってきた読書法、すなわち珠玉のエッセンスを自分の思考の整理も兼ねてまとめたものである。

私は年間に何百冊、何千冊と読破するようなタイプではなく、いかに冊数をこなすかということや速読的なテクニックに関してさして興味がない。
なぜなら「すでに知っている事柄」が多く書かれているからこそ速く読め、冊数をこなせるのであり、それに対して私が本に求めるのは「自分の知らない未開の地が見られるかどうか」だからである。
そのため、「いかにして1冊の本を限られた時間の中でどこまで深く読み込むか」という点に焦点を当て、整理するつもりだ。

また、私が読む本は仕事柄、技術書や専門書が半数を占めるが、他にも純文学や大衆文学、画集、ビジネス書、自己啓発本、科学読み物まで多岐にわたる。
本記事ではどちらかというと「技術書や専門書」に主眼を置いた読書法ということにはなるが、他のジャンルの本であってもある程度、種々のエッセンスは適用できるはずである。

紙の本か電子書籍か

結論から言うと私の全読書の内、99.9%は紙の本である。

一番の理由としてはかなり感覚的な話になるのだが、私は紙の本を「自分の精神との対話やチューニングを行うためのツール」として捉えているためである。
紙の匂いや質感、パラパラとめくる感覚それこそが感覚器官を通して脳を刺激し、自らの身体の状態を客観的に分析できるようにするのである。

また、より即物的な視点で見ると、電池や充電が不要といった点や、なんとなく開いたり積ん読しておくことで偶然の出会いがあったりする、といったメリットもある。
空間を書籍に圧倒されるのも案外悪くない。

しかし皆さんもご存知かと思うが、当然、紙の本にもデメリットはある。
スペースを取る点に関しては特に住空間の狭い日本では問題になるし、引っ越しもより大変になる。
分厚い書籍の場合、持ち運びにも適さない。
検索性も電子書籍に劣る。
サブスクリプションのような販売形態も一般的に電子書籍の方に軍配が上がるだろう。

そのため、結局のところは読者が紙の本と電子書籍のどちらのメリットを求め、逆にどちらのデメリットを許容するか、というところに帰着する。
自分により適合した方法を選択すれば良いし、なんなら併用しても構わない。

どこで購入すべきか

大抵の場合、実店舗かAmazonかという選択肢になるだろう。

実店舗の場合の一番の強みは気軽に中身を見ることができる点であろう。
自分の趣向に合わせてレコメンドされるわけでもないので、セレンディピティが生まれやすいのも特徴的だ。
その店舗独自の品揃えや本の並べ方、配置の仕方、照明等も相まってそれはある種のオブジェやインスタレーションのようにも感じられる。
他にも、大手の書店や地元の小さな書店、古本屋、古書店等それぞれに特有の風情や楽しみが隠れている。

Amazonはとにかく本の種類が多い。
検索機能も強力で、良くも悪くも自分の趣向に合わせてレコメンドされる。
絶版本や専門書も見つけやすい。
出版されてから一定の期間が経った書籍の場合、定価よりもかなり安い金額で手に入ったりすることもある。

購入前

購入前に目次や本文の雰囲気はある程度確認しておいたほうが良い。
本のタイトルとデザインだけで購入するのも悪くはないが、その書籍に書かれている内容が今、自分の求めているものなのかを事前に確認することで、購入後の失敗を最小限に抑えられる。
それと同時に、購入した本は必ず最後まで読みきらなくてはならない、と気負う必要は無い。
その時に自分が求めていない事柄というのはつまらないと感じても無理はないし、そういったものを無理やり読み進めてもただ時間を浪費するだけである。
そしてそれは店舗やAmazonで念入りに確認したとしても100%防ぐことができるようなものでもない。

本を読む場所

本棚に並んだ本をなんとなく眺めたり、それを手にとってパラパラとめくったりしていると、その本と読んでいた場所や時期の記憶がふと脳裏に浮かんでくることがある。
個人的には旅路で読むことが一番記憶に残り、かつ、その旅に対しても隠し味的な要素として作用するように感じている。
しかしそこまでしなくとも普段読んでいる書斎だけでなく通勤・通学電車やカフェ、公園で読んでみる。
もっと手軽なところで言うと、家の中を歩きながら、お風呂で、トイレで読んでみる。
そういったちょっとしたアクセントを付け加えるだけでもそれなりの効果は期待できるはずである。
ちなみに車は酔うのでオススメしない。

目次

新たに読書を始める際、初めに目次を熟読すべきである。
目次はあらすじやロードマップのようなもので、その本の流れを大局的に捉えるための要素が詰め込まれている。
初めに一読して頭に入れ、読んでいて道に迷ったら何度でも目次に立ち戻ると良いだろう。

本文

まずは深く読み込むということについて考えてみる。
私が思うに、それはまず著者の伝えたいことを理解するということである。
そのためには著者の立場に立ち、どういった試行錯誤の末、その文章が構築されたのかということを擬似的にトレースしてみるのが良い方法である。
また、どこの話とどこの話が繋がるのかを意識して流れとして捉えることや、具体と抽象を行き来することで理解を深めることも手法として挙げられる。
とはいえ、あまりにも分かりにくい箇所は著者自身もあまり上手く説明できていないと割り切ることも大切だろう。

その次に、伝えたいメッセージに対して自分がどういう意見や疑問、感想、見解を持つかということである。
このプロセスにより、著者と読者の間で、本というインタフェースを介した対話が発生する。

そして最後に、それらの中から重要なエッセンスは記憶としてとどめておくということである。
これは、実世界でその知識を活用していく際や、他分野の知識と繋ぎ合わせたりする際に必要となる。

とは言っても、全ての部分を深く読み込むのは心が折れるだろう。
なので、さして気にならない部分はさらっと読み進めてしまって良い。
そういった部分はすでに自分が理解している部分であることが多いからだ。
その上で、気になった部分や難解な部分は自分の納得がいくまで考える。
場合によってはインターネットの情報や他の書籍等も当たってみる。
ただし、あまりにも奥の深い部分だという洞察が得られた場合は一度諦めてみるというのも手である。
ひとまずは読み終えることを目標にしよう。
そのためには諦めるボーダーラインをどこかに引いておく必要がある。

意味が理解できない言葉や読み方が分からない言葉についても都度調べる。
つい煩わしくなって、どこか書き留めておいたものを後から調べようとなってしまいがちだが、その場合、どのようなコンテキストでその言葉が出てきたのか分からずに困ってしまうことがある。

なんとなく肌感として、読み始めて最初の1章くらいは文章と自分の思考の歯車がなかなか噛み合わない感覚がある。
とりあえず分からなくても1章だけ読み進めてみて、そのあと理解できるまで何往復かした後、2章以降に進んでいくというのも良いかもしれない。

速度

別に速読のテクニックを取り入れて、ありえないスピードで読もうとする必要はない。
しかし、できる限り速く読もうとする心持ちでいたほうが良い。
というのも、ゆっくりと気ままに読んでいると集中力が低下し、気が付くと同じ行を何回も行き来している、ということがよくあるからだ。

まとめる

理解度が高い場合は心のなかでも良いが、文書化するという行為は自分の思考をある程度厳密に表現できるため、曖昧な部分を浮き彫りにできるという効果が期待できる。
読んだ内容の要約を章ごと等の単位でにどこかにまとめる。
その際に自分の思考過程も一緒に書く。
疑問点を書き出す、疑問に対する解答も調べたのであれば書き記す。
覚えたと思えばそのメモは捨ててしまっても構わない。
メモは紙でもパソコンでも良いが、私の場合は図で考えたり、脳内がまだ混沌としている場合は紙、それ以外の場合ではSlackを使用している。
時系列で記録され、ジャンルごとにチャンネルで分けたりスレッドを使ったりできるからだ。

話す

ふとしたときに、友人や家族、同僚等に話してみる。
実際に試してみる。
スライドや記事としてまとめて対外的に発表してみる。
そうすることで記憶はより定着するし、新たな気付きを得られるかもしれない。
何より、誰かに伝えることによって、他の誰かの人生に少なからず影響を与えられる。

次に何を読むか

興味のある分野をまとめて何冊か読むことはより効率的だろうし、逆に全く異なるジャンルの本を読むことによっても偶然何かが結びつくこともある。
参考文献を参考にするのも良い手である。
大切なのは、「次に自分がどうなっていたいか」である。

最後に

半分、自分への戒めとして書いているが、本はただ読んで記憶として定着させるだけではいけない。
そこで得た知識を元に、実生活でどう実践するかである。
そして、まずは隣人から少しずつ、社会に良いと思うインパクトを波及させていくことである。

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