光
そのボクサーは拳ではなく光をよけていた
自分を見失わないように
地球と手をテーピングで
ぐるぐる巻にしていた
光に当たると
琴線に触れてしまう気がした
その魅力が走馬灯のように
頭を駆け巡って
燃えて灰になってしまう
ボクサーは味のない景色を見ていた
思い出は夏だった
サイダーの中のビー玉さえも
真っ黒に輝いて
炭酸とともに消えていった
蝶の羽根は黒くさびて
午後のメトロノームが聞こえていた
何もないと分かったとき
ボクサーは光に触れた
その日から港からスキップする少年が
虹色のキャンディを売りに来た
リングが大きく見えた
バラは赤かった
気がつくと前には希望しかなかった
ボクサーの影が遠くに伸びていた
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