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【企画参加】歌からストーリー「NO SIDE STAND」



【NO SIDE STAND】




4月、高校に入学する。ごく普通の公立高校だ。
ごく普通の高校生っていうのは少し違う。
いわゆる財閥の御曹司で、文武両道だのと言って、自分の意志とは別の所で英才教育を受けさせられてきた。そこで出来が悪かったら、ある意味幸せで、別の人生を送れていたのかもしれない。それが皮肉なもので、ある程度、出来てしまう。
それ故に、常に何かに挟まれながらここまで生きてきた。


そんな状況に嫌気がさし、少し反抗した。



「いわゆる一般人の思想っていうのも経験する必要があるだろ?将来、上に立つんだったら大事なことだろ?」



ありきたりな言葉を並べて、親がレールを引く道を外し、普通の高校に通うことになった。
俺の名前はリュウタ。



しかし、自分の意志を表したかと思えば、それで黙っている父親ではない。


「リュウタ。文武両道を促してきたはずだが、今まで、日本一になったことはあるのか?文武両道とは広く浅く手を伸ばし漁ることではない。一般人の思想か? いいだろう、その環境で日本一になるという強い意志だと受け止めよう。」


結局、俺はいろんなものに挟まれている。



入学すると、自分がここにいることに驚く幼なじみと再会した。名前はアキオ。
幼稚園までは一緒に過ごしたが小中学校は別の学校を通った。




「エリート街道のリュウタと同じ学校なんてな! びっくりだ!? 入る学校、間違えたんじゃねーの!?まぁ購買にでもいこうぜ。おっと、コンビニでも買えるような菓子パンじゃ口に合わないか?」アキオ

「嫌味はよせよ。そんなんじゃないぜ。」リュウタ



二人はそんな会話をしながらサンドイッチを購入した。
サンドイッチにはいろいろ具が挟まれている。
中には、3重4重にも挟まれている種類もある。そんな挟む必要があるか?

とリュウタは疑問をうかべながら、二人はサンドイッチを口にした。


「うまっ」



二人は同時に声に出し、その味に魅了された。思わず表示ラベルを確認してしまう二人。
とにもかくにもこうして高校生活がスタートした。



「リュウタ。何で日本一になるか、決めたのか?そうしている間にも、まだ見ぬライバル達に差をつけられていくのだろうな。」


相変わらず、挟まれている。


「リュウタ、親父さんに言われているんだろ? 何か部活でもやんねーのか? こんなのんびりと俺と一緒にいていいのかよ?」アキオ

「・・・・いんだよ、、、、こういう普通の高校生活も経験するって思ってきたんだからよ。」リュウタ

「普通ってどんなんイメージしているんだよ?」アキオ

「・・・・そうだなー。学校帰りに、ファーストフード寄ったりだなー。」リュウタ

「ははは(笑) あれっ リュウタ。あの店って確か?」アキオ

「ああ。確か、あのサンドイッチの?」リュウタ

「いくか!? 普通の高校生らしくな!」アキオ

「そうだな。」リュウタ



二人が入った店はイートンスペースもしっかり確保されているパン屋で、購買でうなったサンドイッチに表示されていた名前の店であった。
二人は早速、サンドイッチを選ぶ。購買よりもさらにバリエーションに富んでいる。




「やっぱり、うめーなー! なぁ リュウタ。」アキオ

「ああ。」リュウタ

あっ? 何だよ。リアクション薄いぞ!」アキオ




「・・・・おい アキオ。
    学校帰りに寄ったお店で
                              一目惚れ、、、、。
        これも普通の高校生だよな、、?」



「はっ?」アキオ


サンドイッチスタンドの奥にその姿が見える。


「かわいいっ」



見とれるだけでその日は終わった。
その日からリュウタはその女性が気になる存在となる。




「リュウタ、あの子気になるのか? でもよ、、財閥の御曹司って言ったら、いいなずけなんてものがいるんじゃねーのか!?」アキオ

「・・・・いねーよ。」リュウタ



リュウタはそう答えたが、実はそんな存在がいるという話を聞いたことがあった。
そしてまた二人は、かわいい店員がいる店に放課後行くというごく普通に高校生が考えそうな行動をとる。


「ナンパ?? それも、普通の高校生らしい経験じゃないのか?(笑)」アキオ。

「そうなの? いや、それは無理だわ。」リュウタ


そんな話をしながら店に向かい、サンドイッチを選び席につく。



「ラグビー、お好きなのですか?」




二人はあわてて振り向いた。なんとその女性が声をかけてきたのだ。



「好きです!」




リュウタが考える前に即答する。

なぜ?ラグビー?


アキオの選んだパンの一つがラグビーボールの形をしたチョココロネだったのだ。



「よかった!PJスタジアムって知っていますか?今、建設中なのですが、そこのスタジアムグルメにうち、入るのですよ。ぜひ、来てくださいね!」

「PJスタジアム!? ラグビー場ですか?」アキオ

「そうです。認知度、高めるってことで確か、高校の大会でも使用するって言ってたかな??」


「なぜ? ラグビー場のスタジアムグルメなのですか?」リュウタ

「好きなのです! ラグビーが! ホントは観たいから応募したんです!」




「それに、、私のサンドイッチで観客にも選手にも、少しは貢献したいんです。 試合前の軽食にうってつけじゃないですか?」




そう笑顔で話し、次のオーダーを取りにいった。


その日の帰り道、




「よし。」リュウタ



「まさか!? さすがの万能なリュウタでも、その体格じゃ無理だろ!? よせよ!?」アキオ



「スクラムハーフって知っているか?」リュウタ



「ラグビーって激しく挟まれるよな? でもスクラムハーフは簡単に言うと
                                            司令塔だ。
挟まれる具になるんじゃなくて、
                  それを活かす料理人になる。

                         俺はもう挟まれない。」




リュウタは決心した。



サンドイッチの具は様々だ。
甘いイチゴ、辛いマスタード、まろやかなタマゴ、歯ごたえあるツナ。
二人に声をかけたのも、スタジアムグルメの宣伝の為、特に意味はない可能性だってある。淡い味になることだってある。



何かに挟まれながら生きていく。

しかし

それはマイナスなことだけではない。

             支えあってとんでもない味
    
                         になることだってあるだろう。

そして

このサンドイッチの恋も、

          
       時には、苦かったり、

                 時にストレートに

                           何かに 挟まれながら

                                                進んでいくのだろう。


「うちの学校、ラグビー部あったよな?」リュウタ

「ああ 公立高校には、珍しくな。」アキオ 



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