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小説「水龍の竪琴」第2話

2、水の都の危機
大広間の扉を抜けてサウラ、ディオナ、ドナンの順に進む。正面の玉座に父王が座っていた。白髪交じりのプラチナブロンドの髪をかき上げ、ため息をついている。サウラが進み出た。
「陛下、参りました。」
「おぉ、よく来たサウラ。ん?ディオナも一緒か。まあいい。ディオナにも聞いてほしい。」
ディオナはちょろっと嬉しそうに舌を出した。サウラが目でたしなめる。
「実はこのところ、水源の泉の水位が下がっているのだ。
知ってのとおり、この国は水龍に守られた都だ。近隣諸国に比べ、水資源が圧倒的に多い。飲み水も、農業用水も豊富で、国民にも豊かな生活が約束されていた。しかし…何があったのか…。早くも水不足で市井では物価が高騰していると報告を受けている。」
王は陰りのある表情をちらりと見せた。
「どうだろう、サウラ。水源の神殿で、水龍の御神託を受け取ってきてはくれないだろうか。」
サウラは一瞬ためらったが、思い直して頭を下げた。
「承知いたしました、陛下。準備のために数日時間をください。」
「うむ、あいわかった。頼むぞ、サウラ。」

大広間を出ると、サウラはディオナとドナンを呼び止めた。
「どうしたの、お姉さま。」
ディオナはサウラの様子がいつもと違うのに気づいていた。
「陛下は何か隠しているご様子よ。お願い。私を街に連れて行って。何が起こっているのかこの目で見たいわ。」
胸騒ぎのする心を抑えてサウラは言った。

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