見出し画像

「UXデザインの教科書」から人間中心設計が持つ思想を考える

こんにちは。デザインマネジメントファームCOLOGUEの藤井です。みなさんは「UXデザイン」もしくは「人間中心設計」という言葉はご存知ですか?

私は「HCD-net認定人間中心設計スペシャリスト」という人間中心設計の実務経験を証明する資格を持っていまして、最近社内の人から「それってどんな思想を持ってるの?」と聞かれました。たしかに私は改めて言語化したことはなかったかもしれない…ということで、
人間中心設計について知っている方もそうでない方も、これらがどんな思想を持った方針なのか改めて考えてみました。ぜひ興味ある方は続きを読んでみてください。

この記事のターゲット

  • 人間中心設計をはじめて知る人・もっと詳しく知りたい人

  • 人間中心設計を実践しているけれど、立ち止まってこれらが持つ思想について考えたい人


参考文献


2020年1月31日追記
著者の安藤先生のライブ配信で本記事を紹介していただきました☺️



人間中心設計は「普通に使えること」を実現する

つまり、ユーザーが使いにくさを感じることなく、自分のやりたいことのために製品やサービスを使えるようにすること。(小略)こうした取組みの重要なコンセプトが、人間中心設計(Human-Centered Design :HCD)である。

 2016、安藤昌也「UXデザインの教科書」P10、丸善出版より引用

著書ではユーザーが「普通に使える」ことを実現する方針が、人間中心設計であると述べられています。わかったような、でもピンと来ていないという感じでしょうか。それでは、例を出して「普通に使える」とはどういうことか考えてみます。


「普通に使える」とはどういうことか?Suicaを例にしてみると…

交通機関を利用する人にとっては「Suica」は普通に使えるものの一つの例になると思います。Suicaを使うシーンはいろいろと増えてきているので、まずは「交通機関を利用して移動する」という体験に一旦絞って考えてみましょう。

まず「普通に使える」条件

この「普通に使える」に、必要な条件をまず書き出してみます。

①自分のやりたいことが達成される
②使いにくさを感じない

ふむふむ、これが「普通に使える」ということですね。

①Suicaを通して私たちがやりたいことは?

「電車に乗って現在地から目的地へ辿り着くこと」ですね。

②Suicaが使いにくさを感じないのはなぜ?

「事前にカードにお金をチャージしておけば、改札の入口と出口で、カードをピッとするだけだから」でしょうか。

Suicaがもし手元になかったら、電車に乗るたびに現在地と目的地を確認して、必要な値段がいくらか確認して、メトロやローカル線へ乗り換えする場合は乗り換え先でいくらかかるかを代替計算して、いざ改札を通り抜けたら、電車に乗ってる間に小さな切符を無くして慌てて探すなどして、どうにか目的地の改札に切符を入れたら、切符の運賃が間違っていて、精算機を探したら長蛇の列…自分の番になってようやく精算してや〜っと目的地に到着できます。
いや、めんどくさかったですね。

つまり「普通に使える」ということは、特にトラブルなく疑問なく目的を達成できること。この状態を実現する方法が「人間中心設計」です。


人間中心設計は「普通に使える」をどのように実現するのか?

人間中心設計のプロセス

とても簡単に言い表すと、人間中心設計は「調べる」「決める」「つくる」「試す」というプロセスを繰り返すことによって「普通に使えること」を実現していきます。
一回で「完成」を目指すのではなく、徐々に「最適解」に近づけていくようなイメージですね。

なぜプロセスを「繰り返す」必要があるのか?またSuicaを例に考えてみると…

さて、さきほどSuicaが普通に使える理由は「事前にカードにお金をチャージしておけば、改札の入口と出口でカードをピッとするだけで、電車に乗って現在地から目的地まで辿り着けるから」ですね。
しかし、今現在カードをピッとしている人は減りましたよね。例えば私はカードの代わりにスマートフォンやスマートウォッチをピッとしています。なぜ、私はカードを使わなくなったのでしょうか。

Suicaは切符と比べて、なんて「普通に使える」んだと思っていましたが、どうやらもっと「普通」があったようです。

カードが「普通に使いにくい」理由は、
1つ目は、カードでもやっぱりカバンの中で無くしてしまうから。
2つ目は、チャージをしておかないと、改札で止められてしまうから。
(スマートフォンは設定をすれば、一定の残高になると自動でチャージしてくれます)

ここで大切なのはこの「使いにくさ」は「切符」を使っていたときには気づけなかったということ。そしてカードが生まれた当時は今ほど「マネーの電子化」は身近ではなかったのです。
つまり「普通に使える」状態は変化し、ユーザーが試さないと分からないのです。だから、人間中心設計は「調べる」「決める」「つくる」「試す」というプロセスを繰り返すのだと私は思いました。

「普通に使える」のがどんな状態か、わからないまま探る

以上のことから、人間中心設計は「わからないまま探る」という精神を持つように感じられます。それは子どもたちが近所の裏山を「探検」するかのようです。彼らは裏山に何かを探しにいくわけではありません。でも、彼ら的におもしろい枝や虫はきっと見つけます。その枝や虫を使って新しい遊びをはじめるでしょう。
人間中心設計は、何を見つけるかは決めてないけど「普通に使える」ヒントとなる何かを見つける探検のようなプロセスなのかもしれません。

まとめ、人間中心設計が持つ思想とは

「ユーザーが普通に使える製品やサービスは常に変化し、答えのないものだから、デザイナーはユーザーと一緒にヒントと解決策を探険していこう!」という考えを持っていると思いました。

皆様の「人間中心設計」への理解や発見につながりましたら幸いです。ここまでお読みくださりありがとうございました!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?