グランドラインに行かない 私の冒険とブランドロゴの話
お前さ・・・
オールブルーって知ってるか?
言わずとしれた人気マンガ「ワンピース」
主人公であるルフィに、コックであるサンジが目を輝かせながら語るその奇跡の海「オールブルー」
そこには、全ての海に生息する魚達が住んでいて、海のコックにとっては楽園のような場所だという。
その場所を目指して、コックであるサンジはルフィたちとともに海賊王への航海に加わっていく。
そんな、ワンピースファンなら基礎知識であろうそんな話をしたのには訳がある。
大阪の市内から少し北に外れた箕面(みのお)という場所で、2周年を迎えるうちのお店がクラウドファンディングでオリジナルの文具作りに挑むことになった。
メーカーさんの協力を得て、作ったのはノートカバー。
A5サイズやB6サイズのノートに取り付けて、好きな書き味のノートをハードカバーにできてしまう、ちょっとしたアイデアを形にした商品だ。
商品のブランド名は、お店の名前を考えていた時の候補の中からぴったり来るものがあったので、結構早く決まった。
名前は「IDEAL(アイディール)」
実在した世界で最初に商業的に成功したコンテナ船である「IDEAL X」から名前をとった。
Wikipediaより引用
コンテナという「規格」を船でも車でも鉄道でも運べるようにしたことで、世の中の物流は大きく発展した。
A5サイズやB6サイズといった「紙の規格」をうまく取り入れて、ノートを携帯する時にしっかり守ってくれる「ノートカバーだけ」を作るこのプロジェクトには、うってつけな名前だった。
名前が決まったら、気心の知れたデザイナーさんと打ち合わせ。
初回に方向性を定めるために見せてもらったデザイン案の1つには「荒波」を体現するようなデザインが含まれていた。
そこで、ふと違和感を感じた。
大手メーカーが揃い、新進気鋭のクリエイター達も出揃う文具業界。
その中にあって新しい商品を作ることは、たしかに大変なことのように思える。
でも、私はそもそも荒波を行きたいのだろうか?
そう、唐突に疑問をもったのだ。
そんな時に思い出した1つの記事があった。
それが左ききの道具店をという、店名だけでもすでに興味深いお店の代表をされている加藤さんの「クリアオーシャン」についての話だった。
ワンピースで言うところの、海賊たちがしのぎを削る「グランドライン」や「新世界」のような血みどろのレッドオーシャンでもなく。
まだ誰もたどり着いていない奇跡のような市場が残ったブルーオーシャンでもない。
誰かが釣り糸を垂らしたけれど、効率のよい成果が上がるわけでもなく、魚も人も見当たらない「クリアオーシャン」
実際、左ききの道具の市場というものも、大手の会社が手を付けたことはあってもすでに引き上げられているぐらいの小さな小さな市場だったらしい。
でも、そこで1000人規模の大会社の経済がまわらずとも、数人が食っていくだけの余地はあるし、その市場を求めるお客さんもいる。
6坪のニッチな文具ばかりを取り揃えたお店を1人でやってる私も、「それっていいなあ」と思いながら読んでいたのを思い出したのだ。
そんな気持ちをデザイナーさんに話して、生まれた「IDEAL」のロゴは、こんな形になった。
水面も揺れない静かな凪の海。
クリアオーシャンを、コンテナ船が進んで海が割れていく。
派手な市場の奪い合いや、大金を使った買収撃も、最新技術も登場しないし、巨額の研究資金の投入もない。
それでも、自分たちが生きるためのモノづくりや商いはできるし、そういった制限の中でこそクリエイティブは咲くと思う。
今回そんな想いを込めたロゴは、プロダクトの背面に刻印する形をとりました。
それは、このロゴがついているからカッコいいぜというモノを作りたいわけではなくて、あくまで使う人の暮らしや用途を主人公にして、寄り添う役割をもたせたかったからでもあります。
この記事を書いている2020/10/3現在。
この静かな海に挑む私のチャレンジに、公開から2日間で145名もの皆さまのご支援をいただくことができました。
この物語には、悪魔の実の能力者も、胸のすくようなバトルも、金銀財宝も出てはきません。
小さな小さな個人が営む文具店が、自分の感覚を頼りに船を出したクリアオーシャンでの身の丈に合わない挑戦があるだけです。
ただ、規模感はありませんが、深さだけはしっかりとあるつもりです。
もしあなたが、ノートや書類を持ち運ぶ時にちょっとでも不満を感じることがアレば、ぜひこの冒険を覗いてみて、そしてご支援頂ければ幸いです。
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