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作家性がなくても、お店のnoteはそれでいいのだと気づいた話

「転勤しても、会議の議事録はメールで送ってほしい」

会社員として働いていた頃、福岡から仙台というダーツの旅もビックリな長距離転勤を命じられた時に、先輩からそんな言葉をもらった。
当時、月に一度の会議が開かれると、一部の社員が1日かけて様々な部署から大切な情報をきいて、自分の組織に伝えなければならなかった。
いまであればZOOM等でも十分なのだろうけど、そんな手段もメジャーじゃない頃だったので、そこでのメモはとても重要だった。

ある人は手書きで。
ある人は録音で。
ある人はノートパソコンを持ち込んで。
様々な形で情報をメモしていたのだけど……そのどれもが自分的にはしっくり来なかった。

手書きをするには字が汚い(自分のせい)。
録音をすると、聞く人も1日かけないと内容を読み取れない。
ノートパソコンを持ち込むと、他のこともできてしまうせいか、周りから集中してないように見られている気がして落ち着かない。

そんな私がある日であったのが「ポメラ」だった。

あなたはポメラを知っているだろうか?
「テプラ」と言葉の響きが似ていることに気づいたあなたは鋭い。
同じキングジムさんが出している電子機器で、「ータブルイター」を縮めてポメラと名付けられている。
そのネーミングの通り、基本的にこの機械にできるのは「メモ」を取ることだけ。
つまりは、テキストをキーボードで打ち込むことしかできない機械なのだ。
要するに「ワープロ」……という単語を出せば、私達の年代の人にもわかりやすいかと思う。

この「文章を打つことしかできない」というデメリットにも思える機能性が、私にとってはちょうどよかった。
「ノートパソコンなんか持ち込んで、他の仕事をしてるんじゃないの?」という目線に対しては、「これ、メモしかできないんですよ!」と答えることができるし、実際メモを取ることしかできないので、画像とか文字の大きさとかに悩むことなく、必要そうな情報だけひたすらメモすることができる。
メモだけに特化しているからこそ、動きが遅いということもなく、動作が固まらない安心感があるし、必要な情報を後で見たときにもわかりやすいように言語化するという練習にもなった。
更にはテキストデータだけなら、メールで共有するのもデータもかさばらないし簡単。

気がつけば、私の「議事録」的な私的メモは、たくさんの先輩や同僚からも重宝がられる武器へと進化していた。
ただ、会社を辞めて独立した今、議事録を共有する相手もいない。
ポメラも知り合いに譲り、議事録テクニックは二度と日の目を浴びないのかな……と思っていた。

しかし本当に唐突に、気付きの時はやってきた。
宇宙兄弟やドラゴン桜等のヒット漫画の編集者としても有名な佐渡島さんの出演されていたYouTubeを聞いていると、「文章でバズれるのは岸田奈美さんぐらいなので、企業は社内報とか投稿したほうがいい」というような話が聞こえてきたのだ。

ありがたいことに、うちのお店のnoteも気づけば8500人を超える皆さんにフォローをいただいている。
個人の文具店としては珍しいくらいにたくさんの人に文章を読んでいただいていることは、ありがたいと思いながらも長年疑問だった。
岸田奈美さんみたいな面白い文章が書けているとも思わないし、作家性というものの無い。
そのことを長い間「弱点」だと認識してきた。

個人的にも文章を淡々と書いている感覚があって、なんでみんなこんなに呼んでくれるんだろうと不思議に思ってきた。

けど、佐渡島さんの話す「企業が社内報を載せ続けることによって、後からたどった時に、どのような取り組みをしてきているかを長期に渡って積み重ねていくことに意味がある」というようなお話を聞いてようやく分かったのだ。
うちのnoteはうちのお店の「社内報」であり「議事録」だったということに。

たとえばこの「コロナの影響下にある人が使える補助金をわかりやすくまとめた内容」についてのnoteは、社内で同じようなつまづきを抱える社員に情報共有をするような気持ちで書いたnoteだった。
もちろん、読んだ人は社内で働く人ではないし、うちのお店としてもそのノウハウをシェアする義務があったわけでもない。
でも、日本全体を一つの組織のように捉えて、個人事業主を営む人たちを同僚のように考えたら、きっと役に立つよな……という「完全な余計なお世話」で書いたものだったけれど、とても大きな反響を頂いた。

文章を投稿できるプラットフォームであるnoteと、ネットストアを気軽に開けるプラットフォームであるBASEを、うちのお店がどうやって使っているのかを書いたこのnoteだって、わざわざまとめてシェアする必要性なんてなかった。
でも、自分と同じように……というか、数年前に悩んでいた自分自身に、後輩に教えるようにしてノウハウを共有したこのnoteにもまた、大きな反響があった。

もちろん商品についての投稿もしているし、その方が多い。
その時に意識しているのは、会社でやっていた朝礼のような意識だったりする。
商品に興味がある社員だけでなく、新人さんやアルバイトさんにとっては、商品のなにが特徴的なのかをイチから説明する必要がある。
興味をひくような身近な事例をユーモアを交えつつ話し(つかみ)、専門用語を避けて、わかりやすい言葉を使って、誇張表現なく事実だけを限られた時間で説明していく必要があるのだけど、その淡々とした説明は自分自身が感じていた「弱点」であり、「大切なポイント」でもあったのだと改めて気づいた。

そう考えると、あとは面白いイベントや商品を仕入れたり作って、淡々とその情報を共有するだけでもnoteは十分活用できるのだと思えてくる。
もちろん社内報にも色々あって、写真にこだわったり、ユーモアも交えてみたりと努力することも必要だ。
けれど、なにも文章一本で勝負する必要はないのである。
面白い企みをして、めんどくさがらずに言葉や写真を尽くして、わかりやすく周囲に共有することを続ける。
その積み重ねこそがストックになって、お店や会社の財産になっていくのだと思う。

もうなんの役にも立たないのではないかと思っていた、議事録を書く能力だけど、実はすでに自分を助けてくれていた。
この気付きが、同じように面白い文章が書けない!と悩んでいる誰かのお役に立てばとても嬉しい。

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